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戦国異伝供書

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第四十一話 人と城その十一

「おそらく小笠原家に勝てばな」
「あの家はですな」
「当家に降る」
「木曽もですか」
「そうなればじゃ」
「信濃の南はですな」
「全て当家のものとなる」
 武田家のものとなるというのだ。
「だからじゃ」
「この度の戦は」
「勝つことは目指すが」
 それでもというのだ。
「六分か七分でもな」
「多くのものが得られますな」
「そうじゃ、そしてわしの読みじゃが」
 晴信はさらに話した。
「小笠原家はここで敗れてもな」
「それでもですな」
「当家に降らずな」
「まだ戦いまするか」
「村上家と共にじゃ」
 信濃の北の大部分を治めるこの家と、というのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「まだ戦うであろうな」
「では信濃を完全に手に入れるまで」
「それまでじゃ」
 まさにというのだ。
「戦を続けるであろう」
「そうでありますか」
「そして信濃を完全に手に入れるとな」
「その後は」
「越後と境を接することになるが」
「その際はやはり」
 山本も言ってきた、彼も足が悪いなりに馬に乗っている、とはいっても晴信や信繁程その乗りこなしはよくはない。
「海津にです」
「城を築いてじゃな」
「備えとすべきです」
「長尾家へのな」
「そして我等からはです」
「越後を攻めるべきでないな」
「長尾家は強く越後も広うございます」
 それ故にというのだ。
「ですから」
「越後は攻めずな」
「やはり」
 晴信の願い、上洛し天下人となる為にはというのだ。
「美濃を」
「あの国じゃな」
「あの国を手に入れるべきなので」
 それ故にというのだ。
「越後はです」
「攻めてはならぬ」
「はい、海津に城を置いて」
「そして備えとしてな」
「決してです」
 まさにというのだ。 
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