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背後にいるもの

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第六章

 二人がいる世界は社長室に戻った、そして目の前にいる社長はというと。
 社長の席で完全に抜け殻になっていた、魂をなくしているのは明らかだった。 
 社長がそうなってからは話は一気に進んだ、社長の家等に捜査の手が入り前社長が殺され悪魔の生贄にされていたこともわかった。
 そして社長が多くの怪しい者達、悪質な運動家や労働組合や市民団体だけでなく黒魔術の組織とも結託し悪魔に魂を売り恐ろしいことをしていようとしていたこともわかった。
 会社は新たにまともな人物が社長になり社名は戻され魂を失い身体が動いているだけの存在となった社長は裁判にかけられ残った身体を火炙りにされて終わった。
 経営は悪魔の手を借りずとも新社長の安定した手腕で順調な経営が出来た、こうしてシアトルの騒動は終わった。
 ヘミングウェーはことが終わりおぞましい計画を潰したことを祝いボームをシアトルのあるレストランに連れて行った。
 そこで生牡蠣に牡蠣のオリーブ炒め、ムール貝のスープに鱈のムニエル、マッシュポテトにサラダを頼み酒は白ワインにした。
 そうしたものを飲んで食って祝っていると。
 ヘミングウェーの手にあるものが宿った、それは何かというと。
「聖釘です」
「キリスト教の聖遺物じゃない」
「はい、イエスの処刑の時の釘ですね」
「手足を打ち付けた」
「その釘がです」
「貴方の新しい神具ね」
「心の中で言ってきています」
 ヘミングウェー自身にというのだ。
「この釘は投げても減らず武器になり」
「威力も高いわね」
「それに私を主の加護で護ってくれる」
「そうした力もあるのね」
「聖遺物だけに」
「凄いものね」
「そして私自身も」
 ヘミングウェーは生牡蠣にレモン汁をかけつつ話した。
「神託を乗り越え」
「そうしてなのね」
「はい、全体的にです」
 心の中で言ってくる声も言い彼自身も実感していた。
「一回り強くなりました」
「成長したのね」
「そうなりました」
 今度は白ワインを飲みつつ話した。
「有り難いことに」
「それはいいことね」
「では」
「ええ、牡蠣もサラダもムニエルを食べて」
「ワインもよね」
「全て飲んで」
 そしてと言うのだった。
「次の場所に向かいましょう」
「そうね、ではね」
「世界を救う為にまた前に向かいますが」
「今はね」
「こうして楽しみましょう」
 牡蠣を食べながらの言葉だった、シアトルの牡蠣は実に美味く。 
 ヘミングウェーは満足していた、だがその目は既に次の場所に向かっていた。この世界を救う為に。


背後にいるもの   完


                  2019・5・21 
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