ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第133話:Tenebrae
火力発電所を攻略したルイン達は次のエリアに向かう。
2人が次に向かったのはかつてシグマに与した元特A級ハンター、ブーメル・クワンガーが占拠したタワーを登っていた。
「確か、ここでゼロがビートブードのお兄さんのクワンガーと戦ったんだよね」
「へえ、元々は街のシンボルになるはずだったこの塔が今では宇宙へと上がるための軌道エレベーターに改造されることになるらしいけど。そんなことがあったのか」
「へ?宇宙?この塔が宇宙に上がるための軌道エレベーターにされるの?」
疑問符を沢山浮かべながら尋ねるルインにルナは苦笑しながら頷いた。
「やっぱり地球は度重なる戦いで荒廃が進んでいるから人類の月への移住計画が進められているらしいぜ?まあ、どれだけの人間が移住するかは知らねえが…この塔は丁度月までのエレベーターを造るのに都合の良い場所なんだと」
「…ふうん」
複雑そうに呟くルイン。
やはり長い時を過ごしてきた母星を捨てていくことに少し複雑な心境なのだろう。
そんな2人も歴戦の戦士で敵の気配を感じれば、さっと顔つきが変わり、奥から飛び出して襲ってくるメカニロイドやランナーボムを次々と破壊していく。
「それにしても、同じ奴ばかり使う連中だよね。今までの戦いじゃ、別のレプリロイドとかメカニロイドが出てきたものだけどね。そろそろ他の敵を使ってきてもいいのに」
ルインが珍しいぼやく。
彼女の言うことも尤もで、今回の戦いで配備されている敵の殆どはランナーボムばかりでいい加減に見飽きたらしい。
「らしくないじゃねえか、ルイン。昔のお前ならそんな愚痴とか言わなかったけどよ。何か昔より好戦的になってねえか?」
「………気のせいだよ。さあ、ルナ。さっさと片付けてしまおう」
ルナの言葉に思わず表情を歪めてしまうルイン。
彼女も自身の変化に気付いているのだろう、以前より少々好戦的になっていることに。
やはりシグマウィルスで何度も再生を繰り返した結果、基本的な人格は変わらないが、少々の影響を与えたようである。
「ダブルプラズマサイクロン!!」
「トランスオン!デボニオン、ボルトルネード!!」
次々に襲いかかるバットンボーンが鬱陶しくなってきたのか、ダブルプラズマサイクロンで薙ぎ払う。
ルナもまたデボニオンに変身してボルトルネードで同様のことをしていた。
そうこうしているうちに、1つの扉の前に辿り着いた。
「ロックされてる…。しかも、相当頑丈そう…よし、メガトンクラッシュで壊してやる!!」
近付いてもぴくりともしない扉を、ルインが軽く叩くとFXアーマーに換装して殴り壊そうとする。
「待て待て!いきなり過ぎるだろうが!俺が解除するから少し待てよ…」
辺りを見回したルナは、壁面のパネルに目を留めるとそらに近付き慎重に操作する。
「どう?解除出来そう?」
ルインはこういう作業を出来ないわけではないが、あまり得意ではない。
それに対してルナはハッキングも得意なので、順調に解除作業は進む。
「…ああ、これなら、何とかいけそうだ。少し待っててくれや」
カタカタとパネルを叩いていき、数分後にピーッという機械音が、扉とパネルの双方から鳴った。
「うわあ、早かったね」
「セキュリティが甘かったから…助かったよ」
セキュリティが甘いということは、来るなら来いということだろう。
この塔のボスの余程の自信が窺える。
「…でも、ここで立ち止まるわけにはいかないよな。行こうぜ、ルイン」
「うん、勿論だよ」
エレベーターに乗り込み、タイヤ型のメカニロイドが複数降ってくる。
「フリージングドラゴン!!」
LXアーマーに換装し、氷龍を召喚するとメカニロイド達をたちまち凍らせてしまう。
「トランスオン!!イグニス!!」
スキャンして出来るようになったイグニスに変身するとナックルバスターを構えて殴りかかる。
凍ったメカニロイドを粉砕すると次はエイプロイドとルインズマン。
「ルイン!!」
「分かってるよ!!」
意識を集中してオーバードライブを発動するルイン。
ハルバードに氷属性が付与され、ハルバードでエイプロイド達を斬りつけると、それだけでエイプロイド達の巨体は凍りついてしまう。
「喰らえ!ダブルチャージショット!!」
そしてXアーマーに換装して、ダブルチャージショットを放って凍結したエイプロイド達を粉砕する。
そしてルインズマンがルインを背後から攻撃しようとするが、ルナが間に割って入る。
「やらせねえよ!メガトンクラッシュボムを喰らいな!!」
ルインズマンをナックルバスターによる打撃と爆弾による攻撃で粉砕する。
やはり、イグニスのパワーは凄まじい。
こうも簡単に頑強なアーマーを持つルインズマンを破壊出来るのだから、オリジナルのイグニスよりも能力はナックルバスターのチャージショットは炎から爆弾に変化しており、ダッシュメガトンクラッシュとブラストボムが放てないなどやはり劣化しているが強力な形態であることに変わりはない。
発射される爆弾には当然、爆発機能があるのだから、そこには必然的に炎に準じた性能を有する。
それに、準ずるとはいっても威力自体は炎より爆発の方が上だが、雑魚を瞬く間に蹴散らしていき、ルインとルナは頂上に辿り着いた。
かつてゼロかクワンガーと戦い、破壊した場所に1人のレプリロイドが佇んでいた。
PXアーマーに酷似しているが、ヘッドパーツの形状が大きく異なる姿。
「(このレプリロイド…テネブラエ…だっけ?中々出来るようだね)」
ルインは静かに佇むテネブラエの背中から発せられるプレッシャーに相手の実力の程を感じた。
ルインとルナはそれぞれの武器を構えながらテネブラエを睨み付ける
「来たか…」
こちらに振り向いたテネブラエは凄まじい闘気を放ちながら仮面越しにルインとルナを見据える。
「俺はあのお方からオリジナルの破壊を命じられている。」
「あのお方?」
テネブラエの言葉にルインは訝しそうに顔を顰めた。
「あのお方の栄光を汚す者を1匹たりとも生かしてはおけん。ここで始末する!!」
言い切るのと同時にクナイを投擲して、シャドウダッシュによる高速移動でルナの背後に回る。
「なっ!?」
実体化させたクナイを構え、ルナの首を掻き切ろうとしたが、ルインのセイバーで阻まれる。
「やらせないよ!!はあっ!!」
強引にテネブラエを弾き飛ばし、ルナを庇うように立つ。
「ルナ、大丈夫?」
「あ、ああ…全然動きが見えなかった…。」
「シャドウダッシュの速度とか性能が私とは段違いのようだね。ルナ、あいつの相手は私がするから君はバウンディングをコピーしてジッとしていて。君を庇いながらあいつと戦うのは正直キツい」
足手まといみたいなことをルインに言われたルナはムスッとしながらも頷いた。
ルインはそれに苦笑するとクナイを構えて斬り込んできたテネブラエを迎え撃つ。
「おっと!!」
ルインはHXアーマーに換装してエアダッシュでテネブラエの一撃を飛んでかわすと、着地と同時にダブルセイバーで斬りつける。
しかしテネブラエも簡単にはやられず、飛びのくことでセイバーから逃れたテネブラエに、エアダッシュで距離を詰めると続いて2度、3度とルインの攻撃が襲う。
「チッ…」
舌打ちしながらテネブラエはクナイをもう1本実体化させ、それらを受け流しながら、反撃の機会を伺う。
ルインの打ち込みをかわしたテネブラエは、大きく後ろに跳んで距離を取ると意識を集中。
テネブラエのチャージ攻撃が発動した。
「曼陀羅手裏剣!!」
テネブラエの周囲にエネルギー体の攻防一体の手裏剣が複数出現した。
手裏剣の軌道が徐々に大きくなり、凄まじい勢いでルインに迫っていく。
「こんな技まで使えるなんて!!」
手裏剣をかわしながらエアダッシュでテネブラエに肉薄するが、テネブラエはシャドウダッシュでルインから距離を取る。
そして天井に鉤爪のハンキングウェッジで身体を固定し、複数のクナイを投擲した。
「プラズマサイクロン!!」
電磁竜巻でクナイを弾き飛ばし、セイバーを大きく横薙ぎする。
「プラズマビット!!」
電撃弾がテネブラエに迫るが、テネブラエはシャドウダッシュで回避した…ように見えたが、電撃弾が突如方向を変えてテネブラエに迫る。
「ぐっ!?ホーミング弾だと!?」
直撃を受けたテネブラエがのけ反るが、すぐに持ち直し、片腕でクナイを投擲しながらクナイを構えて斬り掛かり、ルインがセイバーを交差させてテネブラエのクナイを受け止める。
素直な太刀筋ながら、鋭く重いテネブラエの一撃にルインはこれまでに感じたことのない痺れが腕に伝わるのを感じた。
両者の刃が噛み合うとそのまま押し合いの形になり、両者とも一歩も引かず、互いに睨みあう。
だが、ルインの方が力が若干上だったらしく、ルインのセイバーがじりじりとテネブラエのクナイを押していく。
気合と共にルインのセイバーがテネブラエのクナイを弾いて斬り裂こうとするが、テネブラエはすかさず飛び退き、ルインの攻撃から逃れると、とんぼ返りに後ろへ大きく飛ぶ。
「ハッ!!」
気合と共にテネブラエの姿が3体に分離し、ゼロにクナイを投擲してくる。
ルインは一瞬戸惑うが、数々の戦いの中で染み付いた勘と戦闘経験、そしてPXアーマーに換装してレーダースコープの精度を限界まで上げることで本体がどれかを見切った。
「そこだ!!十字手裏剣!!!」
左の分身を手裏剣による投擲で仕留めようとするルインに対してテネブラエは曼陀羅手裏剣を繰り出し、ルインの手裏剣を弾くと逆にテネブラエの手裏剣が飛んできてルインにダメージを与えた。
「うっ…!!」
咄嗟にルインは利き腕ではない方の腕で防御したが、左腕がかなりのダメージを負った。
「我らのオリジナルよ。随分と勿体無いことをしたものだな」
「勿体無い?どういうこと?」
テネブラエの発言の意味が分からず、ルインは疑問符を浮かべて首を傾げた。
「もし貴様が最初の反乱からあの方に従ってさえいれば、我々四天王の主になれたかもしれんと言うことだ。あの方は貴様を憎むのと同時に貴様の実力を高く評価していたのだからな」
その言葉にルインは今回の事件の黒幕は確実にシグマだと確信した。
「嫌だね、イレギュラーに担がれる気はないし、あんな奴の手下なんて願い下げだよ!!私はイレギュラーハンターだからね!!あいつは私が必ず倒す!!」
「そうはさせん。貴様は我が主には近付けさせんぞ」
「君の言う主は間違いなくシグマでしょう?何であんな奴にそこまで忠誠を誓うの?」
何故人間であったはずの彼がシグマに忠誠を誓うのか分からずにテネブラエに尋ねる。
「俺はかつて人間だった頃は暗殺の請負人だったが、仲間に裏切られ死にかけたところを主に拾われ、生を受けた。一度失ったこの命、主のために使う。」
それを聞いたルインは反射的に口を開いていた。
「それが例え利用されていたとしても?あいつが人間をただで救うはずがない。それでも従うの?」
「愚問だ。今の俺の命はあの方のためにある」
テネブラエがシャドウダッシュで動き回りながら絶え間無く攻撃を繰り出す。
「(何とか彼の隙を見つけないと…)」
考えているうちにテネブラエがルインに目掛けてクナイを繰り出してくる。
ルインはシャドウダッシュで避けるが、すぐさまテネブラエは体を反転させてクナイを手にして駆けてくる。
ルインの目前に迫ったテネブラエが、クナイで斬りつけてきた時、ルインはクナイでテネブラエのクナイを受け止めると見せかけて、素早く跳躍して背後を取った。
「!?」
そしてテネブラエのクナイから逃れたルインは、振り向こうと体勢を変えようとするテネブラエに隙が生じたのを見るとその隙を逃がすルインではない。
この一撃で決める。
「とどめのダブルチャージショット!!」
ルインはしゃがみこみ、テネブラエが振り向きざまに投擲したそのクナイをかわすとXアーマーに換装してテネブラエに至近距離からのダブルチャージショットを放った。
テネブラエはそれをかわすことも出来ずにダブルチャージショットをまともに喰らってしまう。
「ぐっ…馬鹿な…!!?」
膝を着くテネブラエ、ダブルチャージショットを至近距離から喰らったと言うのにまだ動けるくらいの余裕はあるようだ。
ルインはバスターをテネブラエに向けながらそれを静かに見つめる。
「(ダメージ危険域、これ以上の戦闘続行は不可能か…)撤退する…っ」
これ以上の戦闘続行は出来ないと判断し、シャドウダッシュでこの場を去るテネブラエ。
「ふう…」
ルインが溜め息を吐くのと同時に、ルナもバウンディングへの変身を解除してテネブラエのDNAスキャンも完了したので2人はハンターベースに帰還する。
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