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戦国異伝供書

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第四十話 上田領有その十

「だからじゃ」
「戦になれば」
「その時はじゃ」
 どうなるかともだ、晴信は話した。
「大変なことになるわ」
「大きな戦になりますか」
「おそらくお互い万を超える兵を集めたうえでのな」
「万、ですか」
 それ位の兵はとだ、幸村はその数に驚いて言った。
「それはまた」
「多いか」
「その様な戦は」
「今はじゃな」
「はい、甲斐はようやく一万を超えたところです」 
 それだけの兵を揃えているというのだ。
「それでもです」
「一万の兵は動かぬな」
「そうですが」
「いや、しかしじゃ」
「長尾家と戦う時は」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「三万はな」
「揃えてですか」
「戦うこととなる」
「甲斐で五十万」
 幸村はまずはこの国の石高から話した。
「そして信濃の全てを手に入れれば」
「七十万石じゃな」
「合わせて百二十万石で」
「三万の兵を出せよう」
「はい、そして」
 幸村はさらに言った。
「越後は大きな国なので」
「百二十万石あるな」
「ならですか」
「お互いにじゃ」
 まさにというのだ。
「万、それも二万は普通に出してじゃ」
「戦になりますか」
「大きなな」
 そうした戦になるというのだ。
「まことにな」
「そうですか」
「それでじゃ」
「長尾家との戦になれば」
「そうした戦になってじゃ」
 晴信はさらに話した。
「余計な時を取られかねぬ」
「それが殿の懸念ですな」
「わしは越後を攻めるつもりはない」
 このことはだ、晴信は幸村に確かな声で言い切った。
「全くな」
「それよりもですな」
「美濃じゃ」
 信濃の隣にあるこの国をというのだ。
「あの国を手に入れてな」
「近江からですな」
「都じゃ」
 こう進めていきたいというのだ。
「それでじゃ、越後はじゃ」
「備えを置いてですな」
 幸村はその目を鋭くさせて晴信に応えた。
「そうして」
「そうじゃ、そこからじゃ」
「美濃ですな」
「そう考えておる、だが」
「長尾殿がどう動かれるか」
「それ次第じゃ、何でもあの者はな」
 景虎のことも話すのだった。 
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