人理を守れ、エミヤさん!
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業火の中に
冬を越え、春を迎え、夏を過ごし、秋を通り、そして二度目の冬となった。
多くを語る舌は不要。重ねた勲を語る驕りも無用。
迫り来る敵の骸を数える事に意味はない。女の劣化英霊はある時を境にぴたりと現れなくなった。
状況が刻一刻と深刻化していくのを感じながらも、『人類愛』は雌伏の時の中で力を蓄え、そしてついに行動の季へ移ろうとしていた。
「佳い面をするようになった」
整列する二百名の精兵を見渡し、男は仄かに感慨深く呟いた。
もし人間の年齢の如何に拘わらず、全盛期、最盛期と呼べるものがあるとするのなら、此の場にある全ての男達の全盛こそが今此の時であるのだと誰しもが感じていた。それは彼ら『人類愛』の領袖、ジャック・フィランソロピーと呼ばれる男もまた同様である。
眼帯を撫でた。その下には琥珀色の肉眼がある。それは彼本来の瞳と同色だが、その本質は起源を異とする魔眼だった。愛用の眼帯には魔眼殺しの術式が編まれてある。今は懐に入れてある赤いバンダナを意識して、首に提げているダイヤモンドを一度握った。
「……よく堪えた」
ポツリと呟く男の声は、彼らの耳朶を打つ。
城内、城門の手前に在る兵士達に、以前の未熟さの残る青さは何処にもない。精悍な男の顔をしていた。
男は背後に控える軍服姿のスカサハを一瞥もせず。静かに言った。
「俺はお前達を誇りに思う。お前達も誇るといい。辛く過酷な訓練を、よくぞ一人の脱落者も出さずに堪えきった。もはやお前達を未熟な兵士だと言うものはいない。この大陸に在って、お前達以上の兵士は何処にも存在しないと断言しよう」
兵士達は喜ばない。単純な事実として受け止め、静寂の中に誇りを懐くのみ。
矜持を懐く。それは賛辞に喜ぶのではなく、シンプルに認めるだけだ。その誇りを負い、自らを律するのが優れた兵士なのだ。
「『人類愛』は北米大陸最優の兵士を擁した。しかし思い出せ、俺達の目的はなんだ。単に生き残る事か? 相容れない天災が如き敵を打ち倒す事か? 是だ。それらは何も間違っていない。しかしもう一つだけ、俺達には使命がある。堅牢な砦を築き、何者にも抜けない防衛戦を張り巡らせ、《《極僅かな》》人々を保護した。生活するに困らない物資を蓄え、生きる糧を安定して手に入れ、外の厳しい寒暖から守られる家を得た。だがそれで終わりか? もう満足か? これには断じて否と、お前達なら答えると俺は信じている」
その信頼は何も間違いではないと、兵士達から立ち昇る気炎が告げている。
黙して語らぬ、しかしその瞳に宿る生命の炎は、今も爛々と輝いて使命感に燃えていた。
男は頷く、心は同じだと灼熱の火を口腔に秘める。
「そうだ。今この時も悪逆無比の人類の敵は……無辜の人々を……この大陸に生きる遍く者達を虐殺している。指を咥えて、座してそれを眺めるだけ……そんな醜悪で怠惰な姿勢を、俺達は執ってはならない。
何故か、などという問い掛けは無用だろう。今も何処かで外敵に怯え、息を潜めて逃れているだろう人々は、一年前のお前達と同じだ。戦う力を持てず、満足に食えるものもなく、明日への展望を何も持てず、ただ座していれば死があるのみ。
その地獄を赦してはならない。『人類愛』の名を負う俺達が、そこに救いの手を差し伸べねばならない。――俺達がやらねば誰がやるッ! いつか誰かが救ってやるだろう、などと楽観する阿呆はいまい。ならば行動する時だ。俺達はまだ弱い、人間は一人では何も出来ない。故に敵を討ち滅ぼす為に力を集めよう。力なき人間を保護し、平和を求める声に応えよう。怖じ気づき、自身の平穏のみを求める腰抜けが此処に居るかッ!?」
否の大喝が一斉に轟く。大気が振動し、間近の城門が、城壁が揺れるかのような士気が竜となっていた。
軍靴を鳴らし、否を叫ぶ兵士達――それに笑みを浮かべ、男は彼らに負けぬ大音声を張り上げた。
「そうだ、否だッ! 勇敢なお前達の中に、そのような腑抜けはいないッ! ならばやるしかない、やれるのは俺達だけだ。誰よりも強く、誰よりも勇敢で、そして何者にも屈さぬ真の兵士であるお前達が、そして俺がやらねばならない」
睥睨する単眼が兵士を一閃する。
それを受けて、彼らは静謐な気を込めて男の視線に応じた。男は頷く。
「相手を敬い、礼を示す行為をこそ『敬礼』という。俺はお前達に敬意を表する。これが本物の敬礼だ」
胸を張り、満身に気迫を込め、右目に真の尊敬の念を宿して右手を翳す。上官である者が先に敬礼をする事は通常は有り得ない。しかし男が示した敬礼に、兵士達は電撃に打たれたように痺れた。
一糸乱れぬ答礼がある。男と兵士達が敬礼を解くのは同時だった。
「スカサハ」
「うむ」
男が一歩下がり、軍服の女が深紅のマントを翻して代わりに前に出た。畏れと恐れの同居する戦慄が、精鋭の兵士達の顔に過った。緊張に体が強張る。
女王の風格を持つ女は苦笑と共に感慨に浸った。懐かしい。数多くの弟子を戦士として鍛え、育てた……。その弟子達も似たような顔をする。しかしまあ、この男達は弟子ではない。教え子ではあるが、弟子を『戦士』にするのと、教え子を『兵士』にするのは勝手が違ったのだ。
死なせてはならない、心を折ってはならない、後遺症となる傷を負わせてはならないと、マスターから厳命されていた。それは過剰なまでに厳しく、相応しくないものを篩に掛けて来たスカサハには難しかった。『戦う者』に相応しくなくとも鍛えねばならない、導かねばならない、このなんと難しき事か。
やり過ぎてしまった事がある。つい心を折って兵士をやめさせようとした事もある。どれも長年の癖だ。その度にフォローして回ったのも、勝手が違って苦慮したものである。端的に言って、才能のない者を教え導くのにスカサハは向いていなかった。
能力が、ではない。スカサハの性格が。しかしそれでもなんとかしたのは死の実感を手に入れ――宿願を果たした先で、まさかの『未知の体験』の訪れに楽しさを見いだしたからだ。
達成感はある。これまでのノウハウを捨て、零から教え導く中でスカサハもまた不変の英霊である身で師として成長していく事が出来たのだ。これはひどく得難いものである。故にスカサハは万感の思いと共に言うことが出来た。
「お前達には我がマスターの望む全てを叩き込んだ。一人で生き抜けるサバイバル技術と知識、拠点への単独潜入技術、白兵戦の格闘技術、射撃術。ああ、軍行動に於ける戦術も身に付けさせたな。私もマスターに倣い断言してやろう。――お前達は強い。力がではない。技が、でもない。その生きてやろうという心が、時に応じて必要とあらば任務に命を捧げる覚悟がだ。故に祝福してやろう。お前達は――英雄であると」
魔境の智慧と定義される、サーヴァントとしてのスカサハが持つ技能だ。それは彼女が英雄と認めた者にのみ、サーヴァントの技能を与える事が出来る力。
スカサハは『人類愛』の兵士達を。紅い布を身に付け、ダイヤモンドを持つ兵士達全てが英雄であると認めた。故に与える、Bランクの『諜報』の技能を。気配を遮断するのではなく、気配そのものを敵対者だと感じさせない技巧の類いだ。元々の訓練内容に含まれていたものを、サーヴァントの技能の領域に昇華したのである。
「扱い方は直感的に分かるだろう。お前達が他の兵士達の先駆けとなる。この場にいる二百の兵士達こそが仲間内で最も優秀である事の証だ。上手く使えよ?」
スカサハの一時の気の迷いだ。そう簡単に英雄と認めるほど、スカサハの認定する感覚は甘くない。
才有る戦士の師ではなく、才の無い兵士の師としてはじめて鍛えた彼らにだからこそ降って湧いた、所謂初回限定の出血大サービスだ。
兵士達は悟る。自身に掛けられた期待の重さに。下がったスカサハを見て、彼女のマスターは意外そうに苦笑しながら再び前に出る。
「……さて。予期していなかったサプライズだが、それはいい。いい訓辞だった。そうだろう?」
男の問い掛けに、兵士達は頷いた。スカサハの気位の高さは元より、他者に厳しいのと同じぐらい己にも厳しいのだと、彼らも骨身に沁みるほど思い知っていた。
そのスカサハの祝福に、兵士達は感極まっている。涙ぐみそうなほどに。そんな彼らに優しく微笑み、しかし次の瞬間には苛烈な首領の顔となる。
「お前達に任務を与える」
兵士達はその下知に、目を拭って。更に一層男らしさのついた表情で背筋を伸ばした。
「期限は一年。長期に亘る任務だ。二人一組でこなす事になる。任務内容は大きく分けて三つ。
一つ、難民の保護。見つけ次第、このマザーベースへ導け。道中に何事もないと判断できた場合のみ、お前達が誘導する必要はない。その団体にマザーベースの場所を伝えて移動させるといい。ああ、ここで定義する『難民』とは、寄る辺のない軍集団も同様だ。
二つ、サーヴァント・タイプの味方の捜索。しかし見た目には分かりにくいものだ、敵サーヴァントである可能性もある。接触するかしないか、敵か味方かの判別はお前達に任せよう。注意点を言うとすればサーヴァントは必ずしも味方になるとは限らない事だ。私欲を優先する類いも中にはいる。故に捜索を任務に含めはするが、絶対に接触しろとは言わない。ただし、お前達の背嚢に人相書きを入れてあるが、赤毛の王を名乗る――シータの持つ刃と同じものを持つサーヴァントだけは積極的に探し、接触しろ。その際にシータの無事も報せてやれ。名はラーマだ。
三つ、現地勢力及び敵勢力の拠点の捜索。後者については大雑把でいい。推測のみでもいい。なんらかの判断材料を掴めたのならそれだけでよしとしろ。不要な危険を侵すな。前者に関しては言うまでもないな? 拠点を把握したのなら速やかに帰還しろ。
最後に付け加えよう。任務期間は一年と定めたが、もし必要に迫られたのなら期間を独断で延長してもいい。ただしその場合、相棒は必ず帰還させ任務延長の旨をマザーベースに報告しろ。これがないまま一年間帰還しなかった場合、俺は該当者が死亡したものと判断する。何か質問は?」
兵士の一人が手を上げた。顎先で促すと、声を張り上げてハキハキとした語調で質問してきた。
「BOSS! 我々は寂しがり屋であります。二人一組と言わず、分隊規模で行動しても宜しいでしょうか」
「許可する。しかし最小単位は先にも言った通りだ。大人数で移動するのはいいが、仲良しこよしが過ぎて作戦効率が落ちるようだとお前達のママから雷が落ちるぞ」
「はっ! 了解しました! 私も教官殿から物理的な雷を受けるのは勘弁願いたいので、可能な限り支障のないように弁えます!」
ドッと笑いが起こった。男も笑っている。スカサハはムッとしていたが、それもすぐに苦笑に変わった。
やれやれと肩を竦めるスカサハをよそに、別の兵士が発言の許可を求める。そちらを男が促すと、この隊の中で最も優秀な兵士……マクドネルがユーモアを滲ませて質問した。
「BOSS、僭越ながら作戦名などは? あるのとないのとでは、任務に従事する我々のモチベーションに影響があるんじゃないかと愚考する次第」
「作戦名?」
「もしや、ないんですか?」
「有るに決まっているだろう」
平然と男はハッタリを言った。勿論考えていない。
救いを求めるようにスカサハに視線を向けるが、含み笑いをされるだけで答えがなかった。やむをえず、男はスカサハの存在をヒントにする。
スカサハは北欧の女神に名を列する。北欧といえば有名な存在があった。
「『ワルキューレの角笛作戦』だ。ワルキューレとはお前達の事だぞ。行き場のない者達をこの楽園に導く大役だ。実に相応しい。惜しむらくは、お前達は実際の戦乙女のように見目麗しい乙女ではない事だな」
「むさ苦しいワルキューレもいたもんですな……。こいつはいい、オレらみたいなモンに導かれたんじゃあ死んでも死にきれませんわ。楽園に辿り着いてシータ嬢やオキタ嬢、ネロちゃんを一目見てやろうという気にもなるでしょうな」
「――ふむ。マクドネル、私の名が挙がっていないのは何故だ?」
「ッッッ!! そ、そいつぁモチロン! 教官殿は楽園の美女ではなく死の国の女王ですから……所謂ジャンル違い、いっしょくたにするのは双方に失礼ってもんでしょぉ!」
「なるほど。帰ったらお主は兵士から戦士に転向させてやろう。軽口だけは見込みがある」
顔面を蒼白にするマクドネルに、周囲の笑い声が大きくなった。男もまた一緒になって笑っているが、心底同情している。難儀な奴に自分から目を付けられにいくとは、まったく他人とは思えない奴だ。
男は作戦の開始を告げた。マザーベースの南門が開門される。山と積んだ背嚢の元に向かい、男は一列に並んで通りすぎていく兵士達に一人ずつ背嚢とライフルを渡し、一言ずつ声をかけた。
風邪を引くなよ、妙な女に引っ掛かるなよ、そんなつまらない言葉に兵士達は薄く笑みを浮かべながら城門から発っていく。自身らに課せられた任務の重さは先刻承知、しかし有り余る使命感が彼らにはあった。自分達がこの大陸の人々を、一人でも多くBOSSの下へ連れていく。そうする事が救済に繋がるのだと固く信じていた。
――人間は、一人では何もできない。
故に人海戦術で、この広すぎるほど広い大陸に網を投げる。必ず引っ掛かるだろう。彼らが城門から発って行くのを見送って、男はぼんやりと呟いた。
それは、数分前までの覇気漲る烈士とは思えない、穏やかな素顔だった。
「……忙しくなるな」
「もう充分に忙しいが?」
スカサハの反駁に、男は肩を竦める。
「もっと忙しくなるという事だ。まだまだ仕事は尽きない、覚悟しておけよ」
「……」
槍の極みに至った神域の達人は、その宣告に眩暈を起こしたようだった。
そろそろ儂、死ぬぞ……そう呟くのに、あのスカサハを殺した男として俺も英霊になれるかもなと男は嘯いた。冗談ではなく本気で仕事が増えると確信している様子に、スカサハも乾いた笑い声を溢すしかない。
「お主、『どえす』じゃろう……」
「アンタには負ける。知ってるか? アンタ、教え子連中にビッグ・ママって呼ばれてるんだぞ」
「なに? ……誰がお母さんか」
「連中が訓練中に心折れそうになって、寂しくて辛くてやりきれない時には、必ず寄り添って慰めてやっていたそうじゃないか。不器用な優しさに触れられて、真剣に尊敬されているようで実に羨ましい」
スカサハはそれに、満更でもないような……そうでもないような……形容しがたい表情になる。しかし若干の気恥ずかしさはあるのか、ほんのり血色の良くなった顔で咳払いをして、マスターの背中を平手で叩く。
咳き込む男にスカサハも言い返した。
「お主はお主で、連中にVICBOSS(勝利のボス)などと呼ばれておるではないか。大総統なのかVICBOSSなのかはっきりせい」
「……あのな。それは言うなよ。耳にする度に背中が痒くなって仕方がない」
この一年で討ち滅ぼした戦士、劣化英霊はどれほどの数に上ったのか、もはや数える事すら億劫である。
戦闘指揮を何度もこなし、実戦さながらの訓練を潜り抜けて。いつの間にやら渾名が増えていた。
『人類愛』には今のところ、階級はない。しかしそのBOSSに肩書きがないのは今一座りが悪いという事で大総統などと呼ばれるようになったのだ。が、まあそれは時々口にされるだけで、余り浸透していないのだが。
「いっその事、王にでもなればよいものを」
「寝言は寝て言えよ、スカサハ。俺は王なんて器じゃない。それに――ここはアメリカだぞ。王を自称するど戯けがいたら、一発ブン殴ってやらなきゃならん」
阿呆らしい冗談に真顔で応じつつ、男とスカサハは大通りについた。すると、
「ジャックー!」
二人してマザーベースの本営に向かうその途上で、『ジャック』の命名者である少女、ミレイが元気に駆けてきていた。
見ればその後ろからシータが追いかけてきている。何をしてるんだと首を捻っていると、傍まで来たミレイがひしりと男の腰に抱きついた。
「守って!」
「ん?」
「守ってー!」
「ああ……何してるんだ?」
「鬼ごっこ! っていう遊び! オキタが教えてくれたの!」
そうか、と微笑んでミレイの頭を撫でる。道理で、シータが中々追い付こうとしなかった訳だ。
鬼役をサーヴァントがしたら、まだ十歳ほどのミレイでは一瞬で捕まってしまう。相手に合わせて遊んであげていたシータの優しさだ。
男はミレイの首根っこを掴み、そのままシータに投げ渡した。うにゃぁ!? と猫みたいに悲鳴を上げたミレイがシータの腕に収まる。といっても、ほとんど同世代に見えるので、仲良しな女の子同士にしか見えない。ミレイが「薄情者ー!」と抗議してくるのを聞き流しつつ、男はシータに言った。
「まだラーマの存在は感じるか?」
「あ……マスター、もしかして……」
察したように眼を見開くシータに、男は伝える。
「たった今、部下を出した。きっと見つかる、もうすぐ会えるはずだ」
それは根拠のない言葉だったが、シータは目を大きく見開いて。無意識にミレイを抱き締めると静かに目を伏せた。
「……ありがとう、ございます」
「礼は愛しの旦那と再会出来たらにしてくれ。何なら皆の前で挙式するか? 数千年越しの愛の結実とでも銘打って」
「っ! も、もぉ! マスター! からかわないでください!」
その場面を想像したのか、顔を真っ赤にして怒鳴るシータに男は陽気に手を叩いて笑い声を発する。
愉快だな、などと。希望はあるのだと――絶望に暮れる激動の二年目の到来を前にして、尚も強く笑っていた。
――いつも、旅立つのは自分だった。
それがこうして、送り出す側になる。すると、男は漸く理解する事が出来た。
「送り出すってのは……辛いものなんだな……」
自分は大丈夫などと、慰めにもならない言葉だけを残して。
今、やっと男は実感したのだ。待たせている人達の心境を。
「帰ったら……いや、」
帰っても、もう離れないとは言えない。やる事は沢山ある。やりたい事も山ほどある。だから今度は――
「次の旅は、皆を連れ出してやろうか」
きっと着いてきてくれると、根拠もなく男は思い。どうしてか――無性に望郷の念に駆られていた。
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