ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第51話 節乃食堂の厨房、本物のセンチュリースープとは!?
side;朱乃
節乃食堂でわたくし達はセンチュリースープを頂いたのですがとても美味しい物でしたわ。でも小猫ちゃんだけは何かが足りないと言ってそれを聞いた節乃さんはわたくし達を自身が使う厨房に招待してくださいましたの。
美食人間国宝と呼ばれる節乃さんが使っている食堂……どんな場所なのか楽しみですわ。
「よっこらせ」
節乃さんは厨房の一角にあった地下室への扉を開けるとその中に入っていきましたので、わたくし達もそれを追っていきますわ。
「節乃お婆ちゃんの厨房は地下にあったのか、初めて知ったな」
「あれ?イッセー君は節乃さんの弟子だから知っているんじゃないの?」
「あくまで基礎を教わっただけだ。お婆ちゃんの厨房に入れるのは自身とスタッフだけさ」
「へー、スタッフの方がいるんだ」
イッセー君の話を聞いたイリナさんは節乃さんにスタッフがいることを知って目を丸くしていました。一体どんな方なのかしら?
「イッセー君はその方とお知り合いなんですの?」
「いや俺は会ったことがないな、俺が本格的に美食屋で活動しだした頃に女性を雇ったとは聞いてはいるけど。でも昔から節乃お婆ちゃんってスタッフを一人も採用してなかったんだ、そんなお婆ちゃんがスタッフとして採用したんだからきっと凄い才能を持った人物に違いないと思うぞ」
「うっふっふ。今日はあいにく店を留守にしておるがいすれ紹介しよう」
どうやらイッセー君も会ったことがないみたいね、会ってみたかったけどどうやら今日は不在のようです。
因みに女性だと聞いたからイッセー君がその人に会っていない事にちょっと安心したのは内緒ですわ♡
「食堂のキッチンはあくまでも調理の最終的な仕上げの場じゃ。あたしゃの食堂はむしろほとんどが『仕込み』のスペースなんじゃよ。食堂の隣にお城があったじゃろう?ここはその地下につながっているんじゃ」
「あの立派なお城が厨房でしたのね」
節乃さんの食堂の隣にあったお城は節乃さんの厨房だったのね、あんな大きなお城を厨房として使っているなんて一体どんな食材を仕込んでいるのかしら?
「これは……圧巻ですわね」
地下に広がっていたのは大空間でしたわ。以前訪れたことのある第1ビオトープにあった研究所のような場所に様々な食材が置かれていました、これは凄いですわね。
「すごぉい!これが節乃さんの厨房なんですね!色んな食材が至る所にあります!」
「これ全部下ごしらえの最中ってことなの?こんな大量の食材を同時に下ごしらえするなんて……」
ルフェイさんが目をキラキラさせて辺りを見渡し、リアスはこれだけの食材を一度に下ごしらえできる節乃さんの凄さを改めて実感していました。
「料理をしたことのある者は知っているじゃろうが、料理の出来は仕込みで決まると言っていい。この厨房は地下で客には見えんが店を支える最も重要な場所なんじゃよ」
わたくしも料理をしますが仕込みの大切さはよく理解していますわ、ひと手間を咥えるだけで味が格段に変わりますからね。イッセー君には美味しい料理を食べていただきたいですから♡
「はわっ!?」
その時でした、わたくし達の側にあったガラスの檻に眼球が左右に3つずつある猛獣が体当たりをしました。アーシアちゃんは驚いて通路から落ちそうになりましたがイッセー君が助けます。
「大丈夫か、アーシア」
「あうぅ、ありがとうございますイッセーさん」
「猛獣もいるのね、これは何をしているの?」
「『ロンリーグリズリー』……コイツの肉は固くて普通は食用にならない、だが強い闘争心を煽り続けることでやわらかくて美味しい肉になるんだ。ロンリーグリズリーが最も強い闘争心を露わにするのは同種の雄を見たとき、だからこうやって二匹の雄を一緒に檻に入れているんだ」
リアスの質問にイッセー君は丁寧に答えてくれました。美味しい肉にするために雄同士を近づけているのね。
「それでどうやって肉が柔らかくなるのを判断するんだい?」
「見た目では分からないぞ」
「ええっ?じゃあ節乃さんはどうやってそれを見極めているの?」
「長年培ってきた料理人の感だな。コイツらは一か月以上もの間戦い続けるしその間に肉が良質になるのはほんの数分……その瞬間にノッキングして保存するんだ」
「気が遠くなるうえに仕込みまで難しいんだね……」
「ロンリーグリズリーは特殊調理食材だからな、捕獲レベルも37だし調理できる料理人の方が少ないくらいだ」
祐斗君はロンリーグリズリーの調理の説明を聞いてげんなりとした表情を浮かべました。一か月以上も待ちながらほんの一瞬のチャンスを見極める……言葉で言うのは簡単ですがそれを実行できるようになるまでどれだけ長い年月を修行しなくてはならないのかしら?
「イッセー、こっちに大量のイワシがいるぞ」
ゼノヴィアさんが見つけたのは大きな水槽の中にいる大量のイワシでした。凄い数ね、何匹いるのかしら?
「『ラヴイワシ』か、丁度100匹のオスに囲まれたときにのみ絶品の卵を蓄えるメスがいるというがゼノヴィアはどれがメスか分かるか?」
「いや、全然分からないぞ……」
「俺も分からん。間違えてオスを取ってしまうとメスの卵は鮮度が落ちてしまうから一発で見分けなければならないしそもそもさばくのも難しい、コイツも特殊調理食材の一つだ」
ロンリーグリズリーにラヴイワシ……非常に調理の難しい食材ばかりですのね。
「あそこにある『桃イモ』は皮をむいた後4℃の塩水に1年つけておかないとヌメリが取れないし隣にある『ゴリニラ』は切り口に粘着性があるため何百回も切らないとバラバラにならない……ここにあるほとんどの食材が仕込みに手のかかるものばかりだ」
「なるほど、こんなにも手間がかかる食材が多いから予約制なんだね。これは10年も待つことになるよ」
「それは違うじょ、祐斗君」
祐斗君が節乃さんがお店を占めているのは食材の仕込みに時間がかかるからと言いました。わたくしもそう思いましたが節乃さんは祐斗君の顔の横で違うと否定するとロープにぶら下がって向こう側の通路に降り立ちました。
ちょっとビックリしてしまいましたわ……
「ほれこっちじゃ、早よ来い」
わたくし達は節乃さんを追って、ロープをターザンのように雄たけびを上げながら向こう側にわたりましたわ。えっ?わたくし達は飛べるだろうって?こういうのは場の空気にノッてこそですわ。
「節乃さん、さっき言った違うとはどういう事ですか?
小猫ちゃんはさっきの節乃さんの言葉が気になったらしく彼女に質問をしていました。
「あたしゃが店を開けるのは『気分』によってじゃよ。と言ってもあたしゃの気分ではなく『食材』の気分じゃ」
「食材の……気分?」
「小猫や、料理人が食材を選んで調理するものだと思ってはおらんか?」
「えっ?普通はそうなんじゃないんですか」
「うっふっふ、それはおこがましい考えじゃ。そう考えているうちは誰もが半人前じゃな」
食材の気分とはどういうことなのでしょうか?まさか食材がこの日に作ってほしいと料理人にお願いする……?いえいくら非常識なこの世界でも流石にそれはあり得ませんわ。
「その通りじゃよ朱乃、あたしゃは食材にその日の気分を訪ねて店を開けているんじゃ」
えっ……?まさか心の中を読まれましたの?
「小猫、もしおぬしが料理人になる気があるのなら覚えておくといい。食材が料理人や客を選ぶのじゃよ」
「食材が料理人を……?」
「おぬしならきっといつか理解できるじゃろう……着いたぞ」
節乃さんに連れられて来たのは巨大な鍋のあるお部屋でした。それにしても何て大きな鍋なのでしょうか、上に上がって下を見ればわたくし達が小さく見えるくらい大きくて高いですわ。
「こ、これはもしかしてセンチュリースープを仕込んでいる鍋か!?」
「デカすぎるだろう!?一体どれだけの食材がこの中にあるというのだ!?」
イッセー君とゼノヴィアさんは目が出そうなくらい驚いていますがわたくし達も同意見ですわ。わたくし達が大きな鍋を見上げていると節乃さんは大きく跳躍して鍋の上に降り立ちました。
「えっ……えぇ~……節乃さんどんな足をしているのよ?ビルみたいな鍋に一瞬で飛んで上がっちゃったわよ……」
「今更でしょリアス、わたくし達も行きましょう」
わたくし達飛べる者はそのまま上に向かい、イッセー君やゼノヴィアさんは長い梯子を上って鍋の上に上がりました。鍋の中には沢山の食材が煮込まれていて圧巻の光景でした。
「うわぁ……もう既に透明になってる」
「驚いたな、こす前でもうここまで透き通っているのか……」
「半年間灰汁を取り続けたからのう」
完成前のセンチュリースープの時点で中の具材がハッキリと見えるくらいに透き通っています。ここまでさせるのに半年も灰汁を取り続けるなんて大変な作業ですわ。
「あっ、イッセー先輩。あそこに『絹鳥のがら』と『ミネラルココナッツ』がありますよ」
「その隣には『モーターオニオン』もあるじゃないか!凄いラインナップだな!」
「ふっふっふ、鍋の中身を見て興奮するのは分かるが残念ながらこのスープは『未完成』なんじゃよ」
えっ……?このセンチュリースープが未完成?衝撃の事実にわたくし達は驚きで声も……
「あれは『エレキウナギ』だね。煮込むと電気が出てくるから他の食材と一緒に煮込んだりすると他の食材の風味を殺してしまう難しい食材……でもセンチュリースープはまったく風味が落ちていない。一体どんな調理をしたんだろう?」
「あわわ、『もずくドラゴン』も低温で煮込まなければグズグズに溶けて味も不味くなっちゃいます。でもあのもずくドラゴンは形を保ったまま煮込まれていますぅ。こんなにもいっぱいの食材と一緒に煮込めるなんて驚きました」
「……」
あ、あら?他の皆は鍋の中身を見て興奮しているからか反応がないですわ。ちょっと集中線が出ていて如何にもキメる場面でしたのに……節乃さんも微妙な表情を浮かべていますわ。
「あ―――っ!師匠!あれ『ジャーマンカジキ』ですよ!?何か月間も灰汁や臭みが止まらないと言われている煮込むのに難しい食材!」
「でもまったく臭みはねえ!凄いぜお婆ちゃん!」
「ふっふっふ、凄いじゃろう?じゃがこのセンチュリースープは未完成なんじゃよ……」
「イッセー!あれ『ダイナマイト人参』よ!ちょっとの刺激で爆発する特殊調理食材!煮込むのなんて到底無理だって前教わったけど煮込まれているじゃない!」
「信じられない、まさかそんなことができるなんて……凄すぎるぜ、節乃お婆ちゃん!!」
「そーじゃろスゲーじゃろ!!じゃがこのセンチュリースープはまだ!!完成ではないんじゃぁああぁぁあ!!」
『……えっ?』
「遅いわっ!!」
節乃さんが全力で叫んだことによって、イッセー君達はセンチュリースープが未完成だという事を知りました。
「このスープが未完成……?こんなにも美味いのにか?」
「うむ、元々センチュリースープは自然界に存在するモノなんじゃよ。昔ジロちゃんが取ってきてくれてな、その一口が忘れられないほど美味しくてその味を再現したいと思って作ったのがこのセンチュリースープなんじゃよ」
想い人の贈り物を再現するためにこんなにも苦労をしてきたのですね、まさしく愛ですわ。
「じゃがこのセンチュリースープはあたしゃの中では完全に再現できておらんのじゃよ」
「こんなに美味しいのに再現できていないんですか?」
「じゃあ自然界に存在するセンチュリースープってこれよりも美味しいって事ですか?」
このセンチュリースープが未完成ならば、オリジナルはもっと美味しいんじゃないかとイリナちゃんとりあすが節乃さんに質問します。ですが節乃さんはちょっと考え込むような表情を浮かべました。
「どうじゃろうな、味を説明するのは難しいが……小猫や」
「は、はい」
「おぬしはこのスープを飲んで何かが足りていないと言ったな?そうなんじゃよ、丁度そんな感じじゃ。『本物』はこれに後一つ何かを足したような味……じゃがその一つがどうしても分からないんじゃよ」
「節乃さんでも分からないんですか……じゃあ私では到底理解できることではありませんね」
「本当にそう思うか?」
「えっ……?」
節乃さんは小猫ちゃんの顔をジッと見つめながら真剣な表情を浮かべました。
「小猫、何故あたしゃがここにおぬしを連れてきたか分かるか?各国の大統領や著名人、今まであたしゃの料理を食べて絶賛はしても意見を出した者は一人もおらんかった。あたしゃはおぬしの『味覚』と『感性』、そして恐れずに自分の考えたことを実行できる『好奇心』に惚れたんじゃ。おぬしならセンチュリースープを完成させることができるかもしれんと思ったからスープの材料を見せたんじゃよ」
「私がセンチュリースープを……?」
「飲んでみたくないか?本物のセンチュリースープを……」
本物のセンチュリースープ……それを聞いたわたくし達は全員が目の色を変えました。
「ああ、俺は飲んでみたい!皆もそうだよな!」
「勿論よイッセー!」
イッセー君の問いに全員が首を縦に振りました。こんな話を聞いて行かないわけがありませんわ。
「おぬしらは『時期』がいい!センチュリースープは100年に一度しかその姿を現さん、故に『センチュリー』スープ!!そしてその100年目が今年!!まさに今!!運命としか言いようがない『タイミング』!!今グルメタウンにはその情報を知っておる男がスープを入手する為に美食屋を集めておると聞く。おぬしなら直ぐに雇ってもらえるじゃろう、イッセー!まずはそこに向かうんじゃ、そしてセンチュリースープを入手して本物のセンチュリースープをその手で完成させるんじゃ!!」
「ああ、絶対に成し遂げてやるさ!行こうぜ皆!新たな冒険になぁ!!」
『オォォ―――――――ッ!!』
こうしてわたくし達の新たな冒険が始まろうと……
「ところでその男がいるのってどこなんだ?」
『だぁぁぁああっ!?』
……イマイチ締まらないですわね。でもわたくし達らしい始まり方かもしれませんわ。
後書き
イッセーだ。節乃お婆ちゃんの話を聞いた俺達はその男が来ると場所に向かった。でも意外だな、俺が美食屋になった頃お世話になったマスターが経営する店がその場所だなんて。
次回第52話『出会いの酒場ヘビーロッジ!今度の舞台は氷の大陸アイスヘル!』で会おうぜ!
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