ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第50話 節乃食堂で実食、これが幻のセンチュリースープ!
side:ゼノヴィア
ようやく私の視点で話せるな……おっと、今の発言は忘れてくれ。私達はイッセーの知り合いである節乃という女性に出会った。
美食人間国宝とはよく分からないがイッセーの知り合いであるならば凄い人なのだろう。見た目はひ弱そうな印象だが隙が全く見当たらない。やはりこの世界は面白いな。
「えっと……イッセー?美食人間国宝って一体どんな称号なの?」
「俺たちの世界で言えばエジソンなどの偉人に匹敵する人物がもらえる称号だと思ってください。所謂ノーベル賞みたいな?」
「それって相当凄いじゃない!?私達が出会う人って桁外れに凄い人ばかりなのね……」
ノーベル賞か、教会で教育を受けたとはいえ悪魔関連の事や武術や剣術ばかり学んでいたからイマイチ凄さが分からないな。
いや流石にノーベル賞が凄い賞だって事は分かるが……うむむ。これからは座学もしっかり学んでいかないといけないな。
「イッセー、この子達がおぬしの言っていた子達かぃ?」
「ああそうだよ、節乃お婆ちゃん」
「初めまして、節乃様。私はイッセーの友人のリアス・グレモリーと言います」
リアスさんがまず最初に挨拶をしてその後に私達が順番に挨拶をしていった。
「ふふっ、イッセーにお友達が出来るとは……何だか感慨深いものを感じるのぅ」
「親父もマンサム所長もそうだけどどうして俺にダチが出来ただけでそんなに驚くんだ?俺、そんなにボッチに見えるのか?」
「私も師匠に友達が出来たと聞いたときは驚きましたけどね」
「そういやそうだったな……」
「あうう、頭をグリグリしないでください……」
ルフェイにからかわれたイッセーは彼女の頭を両手でグリグリとしていた。しかしイッセーには友人が少ないのか?私も出会ってまだ数日しか立っていないが彼がいい人だと直ぐに分かったぞ。まあ色々事情があるのかもしれないな。
「それであの節乃様、イッセー先輩とはどのようなご関係なのですか?」
「コラコラおぬし、そんな様付けなんてしなくてもよい」
「えっ、でもそんな……」
「セツのんでええぞ」
(急にフレンドリーになってしまいました!?)
小猫が節乃殿を様付けして呼ぶと彼女は様をつけなくてもいいと言った。思っていたより面白い方だな。
「無理ですよ!正直意味はあんまり分かっていませんが、美食人間国宝と呼ばれる方をそんな同級生みたいに……」
「誰が同級生じゃクラァ!なれなれしい!」
(えー、そこは怒るんですかー!?)
「ははっ、節乃お婆ちゃんの恒例のやり取りだよ。どうやら皆を気に入ってくれたみたいだな」
ふむ、イッセーがそういうのならば問題はなさそうだな。
「こらイッセー、なんじゃその髪型は?正装するのなら髪形もキチンとせんか」
「ご、ごめんよお婆ちゃん。そこまで気が回らなかったぜ」
「どれ、あたしゃがセットしてやろう」
そう言って節乃殿はイッセー……それと何故か祐斗の髪形をイジり始める。
「よし、これで色男になったのう」
「なんでリーゼントなんだよ!?」
「かっこいい……」
イッセーと祐斗はまるでハンバーグのような髪形になった。ふむ、あれが正装の髪形なのか。勉強になるな。でも何故イッセーは嫌そうな表情を浮かべているのだ?祐斗は喜んでいるしかっこいいと思うのだがな。
「いやおかしいだろう!なんで正装の髪形がリーゼントなんだよ!?」
「身だしなみは足元からじゃとよく言うじゃろうが」
「いや思いっきり真逆のところイジられてるんだけど!?ていうかリーゼントが正装時の髪形なのか!?」
「あたしゃの好みじゃよ。うっふっふ、惚れそ♡」
「好みでこんな髪形にすんなよ!?」
何だ好みなのか。でもあの髪形のイッセーと祐斗も素敵だと私は思うのだがな。
「なー、勘弁してくれよ。リアスさんなんか俺達を見て笑い堪えているんだぜ?」
「うっ……ぷぷっ……」
「イッセーさんも祐斗さんも素敵です!」
「うふふ、とってもかっこいいですわ」
「うんうん!昔ながらの男の髪形よね!」
「師匠は巻き込まれ体質なんですねー」
「イッセー先輩、不良漫画の主人公みたいでイカしています」
リアス殿は笑いを堪えているが何か面白い事でもあったのだろうか?アーシアや朱乃殿、イリナに小猫は絶賛してルフェイはちょっと呆れが含まれたジト目で笑っているな。
「なら今回の予約は無しじゃな、衣食足りたとて礼儀を知らん奴に飯を作る気はない」
「すみませんでした節乃様。これでよろしいでしょうか?」
「うっふっふ。なかなかイケメンになったじゃないのさ、イッセー。そっちの男の子もキュートじゃぞ」
「節乃お婆ちゃんこそハンパない美貌でキメ細かさMAX肌ですよ、なあ祐斗」
「はい、とてもお綺麗な方だなって思います」
「うふふ、そうじゃろう?」
良く分からなかったがようやく場所を移動するそうだ。私達はデパートを後にした。
―――――――――
――――――
―――
「なるほど、イッセー先輩と節乃さんは先輩が幼いころにもう会っていたんですね」
「親父が節乃お婆ちゃんと知り合いだったんでな、その時に紹介してもらったんだ」
節乃殿の経営する食堂に向かう最中に、私達はイッセーと彼女の関係を聞いた。どうやらイッセーがこの世界に来て1年くらいたってから一龍殿の紹介によって出会ったらしく、イッセーからすれば本当の祖母のような関係らしい。
私は血の繋がった家族はいないからイッセーがどれだけ節乃殿を慕っているのかが分かるんだ。私もイリナやシスター・グリゼルダがいるからな。
「節乃お婆ちゃんには料理の仕方も教わったんだ。といっても基本的な事だけをな」
「イッセーは筋がいいから料理人としてもやっていけたと思うぞ」
「ははっ、それでも俺は美食屋になるって決めたからな。お婆ちゃんには悪いとは思っているけど……」
「ええんじゃよイッセー。自分の人生は自分で決める。おぬしがその道を選んだのなら構わず突っ走っていけ」
「ああ、勿論だ」
本当に仲がいいのだな、イッセーの浮かべる笑みはとても柔らかなものになっている。
「そういえば先輩は節乃さんの食堂に行くために予約をしていたって聞きましたがどういう事なんですか?」
「節乃お婆ちゃんの店は予約制でな、各国の大統領や有名な資産家がこぞって予約待ちしているから10年は待たないといけないくらいさ。俺も4年待ったからな」
「4年!?思い立ったら吉日の貴方にしてはよく我慢できたわね……」
「我儘言ってお婆ちゃんを困らせるわけにはいかないしそういうルールだからな」
小猫の質問にイッセーは予約制である理由を話した。しかし10年か……そんなにも待ってでも食べたいと思う彼女の料理……一体どのようなものなのだろうな。
「そういやお婆ちゃんは昔コンビを組んでいたんだっけな。もしかしてその相手は親父なのか?」
「いや、あたしゃがコンビを組んどったのはノッキングマスター次郎じゃよ」
「ええっ!?あの次郎さんとですか!?」
「なんじゃおぬしら、ジロちゃんを知っているのか?」
「はい、私達は次郎さんに命を救ってもらったことがあるんです」
「ほう、それは面白い縁じゃのう」
イッセーは節乃殿にコンビを組んでいたのは一龍殿かと尋ねる、それに対して彼女は違うと言い次郎という名の人物を話の話題に出すとアーシアが驚いた表情を浮かべた。
どうやらアーシア達は前に次郎という人物に会ったことがあるそうだ。ノッキングマスター次郎……私はあったことはないがあの一龍殿の兄弟弟子の一人だと前に聞いた。一龍殿の弟弟子ならば絶対に強者のはずだ、間違いない。
「ジロちゃんとは随分と長い間コンビを組んどったぞぉ。ジロちゃんが捕獲してあたしゃが調理する、二人でグルメ界に行ったりもした……うふふ、恋もしたねぇ……♡」
「もしかして次郎さんとはそういう仲なんですか?」
「うふふ、ひ・み・つ・じゃ♡」
「キャー!気になるわー!」
私以外の女性陣はコイバナ?なるものを話して盛り上がっていた。恋か、私には縁のない話だな。
「ふふ、全部昔の話じゃよ……さてと、着いたぞ」
節乃殿に案内されて着いたのは町の中心から離れた場所にあったお城の前だった。
「これが節乃さんの食堂ですか?凄い大きさですぅ!」
「流石は美食人間国宝と呼ばれる節乃さんの経営するお店……立派なお城ですわね」
私達は目の前のお城に絶賛するが、イッセーと節乃殿は隣にあった少しボロい建物の前に立った。
「皆、何をしているんだ?」
「あ、いや何でもないわ……あはは」
ど、どうやら店を間違えてしまったようだな。これは恥ずかしいぞ……
「よいしょっと」
節乃殿は『しーん』と書かれた木の板を裏返して『わーっ』という文字が書かれた方を表にして扉にぶら下げた。
「ねえイッセー、あれってどういう意味なの?」
「『しーん』が只今仕込み中……『わーっ』は只今荒稼ぎ中って意味だな」
「ええっ!?そんなイヤらしい意味が込められているの!?」
イッセーの説明にリアス殿がツッコミを入れていた。中々面白い言葉選びだな、私は好きだぞ。
「実際にお婆ちゃんの収入は一人であのグルメタワー全体の収入に負けないくらい稼ぎますからね」
「や、やっぱり凄いんだね、節乃さんは……でもどうしてこんな町の中心部から離れた場所に食堂を作っているんだろう?繁華街とかならもっとスゴイんじゃないのかい?」
「節乃お婆ちゃんは有名人なのはもう知ったよな?皆も町中で『セツのん人形』を見なかったか?あれが置いてある店全てがお婆ちゃんがオーナーだからな。きっと恥ずかしいんだろうな」
「そういえばどこかで見たような印象があったのよね。あの人形の元ネタになったのが節乃さんだったのね」
祐斗がなぜこんな場所にお店を構えているのかイッセーに質問すると、彼は自分をモチーフにした人形だらけで恥ずかしいからだと話した。それを聞いてイリナはどこかで節乃さんを見たような気がしていたようだが話を聞いて納得した表情を浮かべた。
まあ確かに自分を模した人形がそこら中にあったらちょっと近寄りがたいな。
「ホラ、行くぞおぬし達」
節乃殿に入れと言われた私達は期待を胸に店内に入る。だが中は暗くよく見えない状態だった。
「あれ?節乃さん、中真っ暗ですよ?私が光の魔法で明るくしましょうか?」
「ルフェイ、それは止めて……」
「あっ、そうでした」
ルフェイが光の魔法で店内を明るくしようとするが、それをリアス殿が必至の形相で止めた。まあ悪魔にとって光は天敵だからな。
「ああゴメンよ。半年も店を閉めていたから電球が切れていてね、あたしゃがデパートで待ち合わせをしていたのは電球を買いに行きたかったからなのさ」
ああ、だからデパートにいたのか。しかし半年も店を閉めているとは……普通ではありえないがそうしても問題ないのは彼女だからこそなのだろう。
「あっ、明るくなりましたね」
店内に明かりがつき、私は改めて店内の中を見てみる。そこは何というか昔イリナに見せてもらった下町の人情物のドラマに出てきた昔ながらの食堂というものか?それがあった。
「なんて言うか、意外ね。もっとスゴイ場所を想像していたわ」
「ええ、どこにでもある食堂ですわ」
「リアスさん、朱乃さん。料理人にとって一番大事なのは料理ですよ、見た目の豪華さなんて二の次です。どこにでもある道具で最高のフルコースを客に提供する。それが料理人『節乃』なんですよ」
イッセーの言葉を聞いて私は、優れた道具ばかりを使いこなしても駄目なのだなと思った。道具に頼るのではなく自身の腕だけで勝負する……節乃殿は料理人という名の戦士なのだな。
「どーじょお掛けを!!お客様!!」
机をバンと叩いた節乃殿の目は強い闘志で溢れていた。
「今回は珍しくあたしゃの『フルコース』の予約ではなく『スペシャルメニュー』の予約じゃったな、イッセー!」
「ああ!皆、座るぞ!今から俺達は大地震が来ようと隕石が落ちてこようと絶対に食事を止めることはない!」
イッセーもかなり興奮しているらしく息を荒くしている。私達も緊張と期待で体が震えていた。
「伝説のスープをご馳走しよう……」
きっと素晴らしい時間になる……私達はそう思いながら席に着いた。
―――――――――
――――――
―――
節乃殿が調理を開始してから数分が過ぎた。私は料理はしないが今目の前にある光景が相当凄いものだとは感じるよ。何が凄いのかと言うと……
「なんて早さで調理しているんでしょうか……一人で10人分の作業を当たり前のようにこなしていますが雑さは一切なくとても丁寧な調理をされています」
小猫の言う通り節乃殿の調理は恐ろしく速い。祐斗やイリナを超える速さで作業をしているがそれらはとても丁寧で見ているだけでため息が出るほど美しい。
「皆、水でも飲んで待っていようぜ」
イッセーがお冷を入れてくれた、ちょうど喉も乾いていたことだし頂こうか……!?ッな、なんだこの水は!?ミネラルウォーターなど足元にも及ばない美味さだぞ!?
「その水はアクアマウンテンで沸いた水『エアアクア』だ。喉越しの良さはこの世界でも5本の指に入るくらいの高級な水さ」
「そ、そんな高級品をお冷感覚で出せるなんて凄いわね」
うむ、お冷でこのレベルなら出てくる料理は一体どんな物なのか想像もつかないな。
「全部は分からないですが貼ってあるメニューも高級食材ばかりですね。とっても凄いです」
「流石は美食人間国宝と呼ばれる節乃さんが経営するお店だね。見た目で判断しようとした僕はまだまだだ」
アーシアと祐斗も節乃殿の店を褒めていた。私達はこっちに来たばかりだから全然話についていけないな……
「お婆ちゃんのフルコースはあのノッキングマスターのフルコースを調理したものだからな。オードブル『百葉のクローバーのパリパリ胡麻揚げ』、スープ『コンソメマグマ煮込み』、魚料理『王陸鮫の炙り寿司』、肉料理『アシュラサウルスのロースト』、主菜『ET米おむすび』、サラダ『グラナレタスのシーザーサラダ』、デザート『オアシスメロンのシャーベット』、ドリンク『ドッハムの湧き酒』……すべてグルメ界でしか取れない超高級品さ」
「ノッキングマスター次郎さんのフルコース……まさに世界最高クラスのフルコースですね」
グルメ界……イッセーが言っていたこの世界でも屈指の地獄……そんな場所に行って猛獣や食材を狩ってくるとはやはり次郎という人物は強いのだな。願わくば一度手合わせをしてみたいものだ。
「うっふっふ。あたしゃのフルコースは食材の調達が難しいからのぅ、普段は出せないんじゃ。次郎ちゃんに捕獲の依頼を出さないといかんのじゃよ」
「節乃お婆ちゃんだけでも食材の調達は出来るだろう?」
「あたしゃも年だからねぇ。それよりもイッセー、スープの完成に少し時間がかかりそうじゃからその間『にんにく鳥』の親子丼でもどうじゃ?」
「にんにく鳥の親子丼!?ああ、ぜひ食べさせてくれ!」
節乃殿は何かのケースから鳥を一羽取り出した……洒落ではないぞ?そして包丁を一閃振るうと鳥の羽毛が顔以外すべて綺麗に取り除かれると同時に一口サイズに細切れになった。それがグリルの上に落ちてジュウジュウと気持ちの良い音を出してこんがりと焼いていく。
「まったく見えなかった……この僕が」
祐斗も感じ取ったか……あの動きは私達では到底できない、熟練の戦士でも難しい太刀筋だった。それを当たり前のように行うとは……
「あっ、あれは『極楽米』です!」
節乃殿は米を丼にこんもりと盛る、なんとも言えない美味しそうな匂いだ……そして近くにあった瓶から海苔に手足が生えたような生き物を取り出した。
「あれは『のり虫』ね。前にイッセーの家で朝食を頂いたときに食べたことがあるわ」
「それもあれは最高級品の『味付けのり虫』だ」
リアス殿はあれを食べたことがあるらしく嬉しそうに笑みを浮かべていた。それに対してイッセーが最高級品だと説明すると目の輝きを一層と強めていく。
節乃殿はのり虫を細かくして極楽米の上にかける。そしてこんがりと焼いたにんにく鳥をフライパンに移すと玉ねぎと何かのタレを入れて炒めていく。そして卵を割ると黄身が10個も出てきてそれがフライパンに落ちていった。
「まあ!あれは『十黄卵』ですわ!」
朱乃殿にしては珍しく少し涎を出していた。無理もない、私も涎が出てしまうんだ。イッセーと小猫は凄い量の涎を出しているが大丈夫なのか?
卵がトロトロになったころ合いにそれをさっき盛ったご飯の上にかける。ああ、あれはもう既に美味しいと感じてしまうよ。
「ほりゃ出来たぞ。にんにく鳥の親子丼じゃ」
な、なんという香ばしい匂い……先程あれだけ食べたというのに食欲が沸いて腹が減ってきたぞ。
「い、頂きます……」
私は手を合わせてにんにく鳥の親子丼を一口食べてみる。こ、これは……にんにく鳥のガーリック味がガツンと来ながらも十黄卵の甘さと調和して深い味わいになっている。それが極楽米と絡み合って更に至高の味わいへと私を誘う……一言で言えば美味い……それしか言えないのだ……
「こんな素晴らしい料理を堪能できるなんて……今日ここに来れたことを感謝しないとね、イッセー……」
「お婆ちゃん、おかわり!」
「私にもください!」
「……って貴方たちはもっと味わうってことを意識しなさい!」
ふふっ、賑やかだな。この素晴らしい料理も仲間達と共に食べるだけでより一層美味しく感じてしまう。教会にいた頃は考えもしなかったことだな。
「うふふ、気に入ってくれたかぃ小猫?」
「はい、『胡麻栗』の風味がよくマッチしてとっても美味しいです!」
「えっ?小猫、胡麻栗なんて節乃さん入れてなかったわよ?」
「うふふ、驚いたじょい。このダシはあたしゃがオリジナルでブレンドした物なんじゃがそれに細かく砕いた胡麻栗の実を微量じゃが入れているんじゃよ」
小猫はそれに気が付いたという事か?凄い味覚の持ち主なのだな。
「よく気が付いたのぅ。おぬしはもしかすると料理人なのか?」
「いえ、私なんてそんな……ただの大食い娘ですよ」
「ふぅむ、その感性実に面白いのぅ。小猫や、他にこの親子丼に合いそうな食材を言ってみなさい」
「えっ……?」
「遠慮はいらんよ、あたしゃが聞いてみたいんさ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……『七味ハーブ』なんて合うんじゃないかと思いました」
「へぇ!面白い発想だな、小猫ちゃん。言われてみれば合うような気がしてきたぜ」
節乃殿は小猫に質問をすると小猫はオズオズとしながらもそれに答える。すると節乃殿は興味深そうに小猫を見つめていた。
「なかなかの味覚と観察力、それに好奇心に想像力……エロさを兼ね備えているのう」
「そ、そんな……ってエロさですか!?」
エロ……まあ確かにイッセーに対して大胆なアプローチを仕掛けているからあながち間違っていないのか……?
「先輩!私エロくなんてありませんよね!?」
「いやぁ、なんというか……否定しきれないんだよなぁ」
「イッセー先輩!?」
「最近の小猫ちゃんを見ていますと否定しずらいですわね……」
「朱乃先輩!?」
「ごめん小猫ちゃん、僕は何も言えないよ……」
「祐斗先輩!?」
ここにいる全員が私と同じ感想を持ったようだ。まあ仕方ないな、普段あれだけイッセーにエッチなアプローチをしていれば付き合いの短い私でもそう思ってしまう。
(ふふ、塔城小猫か。なかなか楽しみな子じゃのう)
その後親子丼を完食した私達だが、それと同時にスープが完成したようだ。
「さぁ!出来たじょい!!あたしゃの特別メニュー『センチュリースープ』じゃ!」
節乃殿が鍋の蓋を取ると、凄まじく美味しそうな匂いが辺りに立ち込められた。
「うおぉああ!こ…これが伝説のスー……プ?」
「空っぽ……?」
鍋の中は何もないようにしか見えない。でも匂いはするぞ、どういうことだ?
「うっふっふ、ちゃんとスープは鍋の中に入っとるよ。透明度が高すぎて見えぬか?」
「い、いや!確かに存在するぞ!?この様々な食材が一瞬にして感じ取れるほどの深いダシの匂い……数百?いや数千の食材が頭の中に浮かび上がった……どれだけの食材がこのスープ一つに使われているんだ!?」
こっちの世界の食材は全然知らないが、この匂いは今までかいだどんな食材よりも深く濃厚で複雑で繊細に感じた……ゴチャゴチャで伝わりにくいと思うがとにかくそんな感想しか言えないんだ。
「あれ?なんだか外が騒がしいね?」
「どうやら一般の方達がお店の前に集まっているみたいですね」
祐斗が外が騒がしいと言うとルフェイが外の状況を話した。
「ふっふっ外が騒がしいのぅ。まあ伝説のスープの香りがしちゃあムリもないか」
節乃殿はお玉でスープを皿に入れるが透明すぎてまったく見えない。
「今世紀を代表するいくつかの食材半年間煮込んである。すべての灰汁を取り除きダシの旨味だけを残したもの……それがこの澄み切った『センチュリースープ』じゃ」
節乃殿は私達の前にセンチュリースープを置いていく。
「どうじょ召し上がれ」
私はその言葉と共に手を合わせて頂きますをする。そしてスプーンで透明なスープを救い上げてみるがやはり見えない。さっき飲んだエアアクアの何倍も透き通っているな。
「あむ……っ!?」
な、なんだこのスープは……様々な食材の旨味が何千にも渡って舌の上で感じ取れてしまうぞ!?水のように透き通っていながらまるで肉料理や魚料理を食べている感覚だ!
「……言葉も出ないわ」
「ええ、本当に美味しいものを食べてしまうと感動のあまり何も言えなくなってしまいますわ」
全員が夢心地の表情を浮かべていた。これを飲めば誰でもそうなってしまうだろう。
「どうじゃイッセー、センチュリースープの味は?」
「具材の旨味がギッシリと詰まっているのに一切のえぐみは感じない繊細でいながらも濃厚な味……俺が今まで飲んできたスープが全部缶ジュースの思えちまうくらいに美味かったぜ。なあ小猫ちゃん!」
「……」
「小猫ちゃん?」
イッセーすらも絶賛するセンチュリースープ、だが小猫だけは何かを考えこむような表情でスープの入った皿を見つめていた。
「小猫ちゃん、どうかしたのか?」
「……ふえっ?あっ、イッセー先輩……すみません。あまりの美味しさに味に浸っちゃいました」
「そうか、じゃあスープを飲んだ感想は?」
「最高です。もうすっごく美味しかったです!節乃さん、こんな素晴らしいスープを頂いてありがとうございます!」
「うっふっふ、良かったのう」
小猫は目を輝かせながら節乃殿にお礼を言ったが、その後にオズオズとしながら節乃殿に何かを質問する。
「あの節乃さん、生意気な風に感じたら申し訳ございませんがもしかしてこのセンチュリースープって『絹鳥のがら』を使っていませんか?」
「……ッ!?」
それを聞いた節乃殿は初めて動揺したような表情を浮かべていた。
(なんと、センチュリースープのダシを取る食材の一つを一口飲んだだけで当てるとは……!)
えへへと笑みを浮かべる小猫。しかし良く分かったな、私は美味いとしか思わなかったよ。
「凄いな小猫ちゃん、他に何の食材が入っているか分かるのか?」
「そうですね……『ミネラルココナッツ』の味もしたような気がしました。どうですか?」
「……正解じゃ」
なっ!?また当てただと!?
「凄いじゃない小猫!私達は全然わからないわ」
「はい。でもこんなことを言うのは失礼かもしれませんが何かが足りていない気もしたんです」
「ちょっと小猫ちゃん?こんな素晴らしいスープにケチをつけるの?」
「い、いえそんなつもりは……ごめんなさい節乃さん、私失礼なことを……」
リアス殿は感心した様子で小猫を褒めるが、彼女はセンチュリースープに足りないものがあると発言した。イリナが小猫を咎めて彼女は慌てて節乃殿に謝罪をすると節乃殿は厨房の奥に向かい地下への階段がある扉を開けた。
「小猫、おぬしに見せたいものがある。あたしゃが仕込みをしている厨房に案内しよう。ついてきなさい!」
「えっ……?」
だがこの時私達は知る由もなかった、節乃殿との出会いが新たな冒険の幕開けになるとはな。
後書き
リアスよ。センチュリースープとっても美味しかったわ、でも小猫には何かが足りないと感じ取ったようね。私は正直全然分からなかったけど節乃さんはそんな小猫に思う事があったのか自身の使う厨房に案内すると言ったわ。一体どんな所なのかしら。
次回第51話『節乃食堂の厨房、本物のセンチュリースープとは!?』で会いましょうね。
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