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人徳?いいえモフ徳です。

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四十二匹目

3月末。

「こゃ~ん……」

「シラヌイ君。もうすぐ学園だが、どうするのかね?」

「くゅ~ん……」

「なぁに心配は要らない。ここはツェツィーリアにはバレていない場所だからな」

シラヌイは現在国王アルフレッドの膝の上でもふられていた。

「シラヌイ君」

「きゅぅ?」

「学園ではクーコを守ってはくれまいか?」

「くゅーん」

「そうかそうか。君にとってクーコを守るのは当たり前のことなのか」

「うきゅぅ」

「そうか。では頼んだぞ」

シラヌイが国王とまったりしていると…。

「見つけましたぞ父上ぇッッ‼」

「あ、アーネスト!?」

高貴なオーラを纏った青年がアルフレッドとシラヌイの居る場所…城の屋根の上に現れた。

「なぜここがわかった!?」

「私のワイバーンが教えてくれましたよ」

「むぅ…」

アルフレッドは仕方なくシラヌイをアーネストに渡した。

「それじゃぁシラヌイ君をよろしく」

「え?」

「ではの」

「ちょ!? 父上!?」

アーネストはどうしたら良いかわからず、とりあえず屋根に腰をおろした。

「くぅ……くぅ……」

(この子がシラヌイ君か…)

アーネストにとっては、娘の友人であり友人の息子だ。

おそるおそる、シラヌイを撫でる。

「くゅ~ん……」

撫でられて、シラヌイが嬉しそうな声を出す。

(クーコが気に入るわけだ…)

「くゅ……うきゅぅ?」

目を覚ましたシラヌイがアーネストを見上げ、首を傾げる。

「やぁはじめましてシラヌイ君。何時もクーコがお世話になっているね」

シラヌイがアーネストの腕から出て礼をする。

「とんだご無れ……ゅ?」

謝罪するシラヌイをアーネストが膝の上に乗せる。

「今は私と君しかいない。堅苦しいのは無しにしよう」

「いえ、ですが……こゃ~ん……」

言いかけるが、顎を撫でられてシラヌイは沈黙した。

(かわいい……)

「シラヌイ君。クーコの事を聞かせてくれないか?」











side in

「御心のままに」

アーネスト様もお父さんなんだなぁ…。

「それで、どうだ、クーコは」

「どう、とは?」

「………………………」

(えぇ…?)

「クーコは、可愛いか?」

「少々お転婆ですが、可愛いですよ」

「そうなのか?」

「はい。ストレスが多いのか、時々城壁の外で魔法をぶっぱなしてますよ」

「なに? リベレーソの外に出てるのか?」

「必ずお婆様が付き添ってますので」

「タマモ様が一緒なら……まぁ……」

お婆様強ぇ…。

「ん? 魔法? クーコはあまり魔法が得意ではなかったと思うが」

「教師が悪かったのでしょうね、お婆様に教わるようになってからは上達しました。流石はエルフの血と言いましょうか、クーコ様は魔導師団とならばやりあっても勝てましょう」

この世界の魔法は過程をより詳しく知っていれば発動しやすくなる。

しかし科学がそこまで発展していないこの世界では、何れだけの人数がそれをできるだろうか。

クーちゃんには俺がある程度の科学を教えた。

ハーフエルフの魔力量で、かつ明確な知識によってもたらされる低燃費と高威力。

もはやチートだ。

宮廷魔導師の弟子の集まりに過ぎない魔導師団なぞ敵ではないだろう。

「君はどうなんだ?」

「どう、とは?」

「君は宮廷魔導師麾下の者と戦い、勝てるのか?」

「どのような手を使っても宜しいのであれば」

「ほう?」

勝てと言われたら、まぁ…頑張れば勝てるんじゃね? って感じだ。

空気を抜くなり巨大な氷柱を落とすなり色々思いつきはする。

この世界には瞬間移動魔法は無いらしいのでそう簡単に避けられる事はないだろう。

その上の人、つまり魔導師団を従える宮廷魔導師、その中でも戦闘系の魔導師には敵わないだろう。

まず母さんには勝てないだろう。

確実だ。

ボーデンは……わからない。

武勲を立てたらしいが、誰も教えてくれないのだ。

「随分と自信家なんだな、君は」

「自己評価は正確なつもりです」

(前にブライが言っていたな…。謙遜も虚言も言わないと)

「そうか。では学園では存分に力を振るうといい」

「ゅ? 僕が全力出したら大惨事ですよ? あとクーコ様にも学園では自重するようアーネスト様からもいってください」

「おぼえていたらな」

「いやいや、クーコ様が本気出したら学園が竜巻で吹き飛びますよ? いいんですか?」

数秒の沈黙の後、アーネスト様が顔を青くして呟いた。

「………筆頭殿のリンチだな」

お母様何したんだよ……。

「それはそれとしてだな…。学園ではクーを護って欲しい」

アーネスト様のセリフにクスリと笑ってしまった。

「ふふふ…親子なんですね…。国王様も同じ事を言っていましたよ」

「そうか」

それからは会話は無く、二人でまったり過ごしていた。

side out








「見つけましたわ父上!」

「クー?」

アーネストが声のした方を見ると、クーコが空中に立っていた。

「クーコ!? どうやって飛んで…!?」

「シラヌイに教わった風の翼という魔法です」

トッ…とクーコが屋根に降り立った。

「父上? こんな所で仕事をサボって何をしておられるのですか?」

「あ、や、これはだな、御父上が…」

「父上がここでシラヌイとサボっていると教えてくれたのはそのお爺様ですよ?」

アーネストがため息をつく。

「父上、それでなぜ父上はシラヌイを抱いているのですか?」

スッと辺りの雰囲気が冷たくなる。

「わかったわかった…。仕事に戻ろう…。シラヌイ君を頼んだ」

父親と同じようにして、アーネストも屋根の上から去っていった。

「シラヌイ、父親と何を話していたの?」

「学園ではクーちゃんを護ってはくれまいか、って国王様とアーネスト様に言われた」

クーコがシラヌイの首筋を撫で回す。

「くゅ~ん……」

「シラヌイ、貴方私を護れる?」

「こゃぁん……もちろん……くゅ~……」

「そう。なら貴方は私の騎士よ。拒否権はないわ」

「うゅー?」

「ふふ…貴方はそれでいいわ…。私の可愛いナイトさん」

遂に耐えきれなくなり、シラヌイが獣化した。

「幸せなナイトね、主に撫でてもらえるなんて」

からかうような口調で、笑顔を浮かべながらクーコが言った。
 
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