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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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覚醒?暴走?

エルザside

怒声が響き渡るクリスティーナ。そんな中私の目に飛び込んできたのは体が黒くなっているシリルの姿。

「シリル!!一体どうしたんだ!?」

ティオスにやられたことにより何か異変が起きているのかと彼を揺する。私の声に驚いたのか、言い争っていた面々もシリルの元へと集まってきた。

「どうしたんだい?エルザさん」
「おい・・・シリルの体が・・・」

どんどん黒い模様に侵食されていく彼の体を見て全員に焦りの表情が見える。

「シリル!!起きろ!!どうしたと言うんだ!?」

私たちの問いかけに一切の反応を見せない彼に思わず苛立ちが立ち込めてくる。
このままではシリルが何かに取り込まれる・・・そう思っていた・・・

「ん・・・」

だが、彼はふっと目を覚ましたのである。

「シリル!!気が付いたか!!」

思わず彼が目覚めたことに興奮した私は少年を抱き抱える。

「シリル!!よかった!!」
「心配かけやがって」

その場にいた全員が彼の復活に歓喜する。そんな中、シリルは私を押し退け立ち上がった。

「シリル?どうした?」
「おい!!いきなり動くと体に響くぞ」

私たちの声が聞こえていないのか、フラフラと歩き続ける少年。彼はどこを目指しているのかそのまま歩き続けると、クリスティーナの入り口の前で立ち止まる。

「なんで気付かなかったんだろう。俺たちにはまだとっておきがあったじゃないか」

そう言った彼は扉を蹴り飛ばす。再び艦内に吹き荒れる風に身を縮める私たち。

「シリルちゃん!!なんてことを!!」
「クリスティーナが!!」

ヒビキとイヴのその声に反応を見せることもなく彼は次なる行動に打って出る。それを見た私たちは思わず目を丸くした。

「ふっ!!」

全身の魔力を高めた瞬間、彼の背中からあるものが這えてきた。それは天使のような真っ白な翼・・・

「いや・・・これは・・・」

しかし、すぐに異変に気が付いた。確かに真っ白な翼が這えている。だがそれは右側だけ・・・左側の翼は、真っ黒な・・・悪魔のような色になっている。

「あそこか・・・」

何が起きているのかわからずに呆然としていると、二色の翼を広げた彼は開かれた扉から外へと飛び出してしまう。

「シリル!?」

壁にしがみつきながら扉の前へと移動する。私たちがようやく視界に捉えた彼は、どこかへ向けて飛んでいってしまった・・・
















第三者side

「・・・」

シリルが目覚め、どこかへと飛び立ってしまった頃、ティオスは急速な成長を遂げた天海の実力に戦いていた。

「どうだ?本気を出す気になったか?」

あくまで全力を出さないスタイルのティオスに天海はそう問いかける。それに対し、彼はクスッと笑ってみせた。

「もう少しだけ力を解放してみることにしよう。もっとも、それで君相手には十分かもしれないが」

劣勢にも関わらずあくまでも自分の方が強いと言いたげな彼に天海は口を閉ざす。わずかながらではあるが、魔力が高まったティオスは、先程とは比べ物にならない速度で突っ込んでくる。

「それではまだ・・・」

氷を纏わせた拳。それに水が絡まっていく一撃をお見舞いするティオス。それに対し天海は拳で対抗する。

「俺は楽しめない!!」

魔力を纏わせた拳と純粋に自身の実力でのみの拳。通常であればどちらが勝つかは明白であるはずなのに、長身のその男はそれすらもあっさりと跳ね返してしまう。

「バカな!!」

押し負けてよろけるティオス。天海はそんな彼の手を掴むと、引き寄せて額に頭突きを喰らわせる。

「竜神の・・・」

大きく息を吸い込む。二人の距離はほぼゼロ・・・今から交わしていては避けることなど不可能ならほどの距離。

「咆哮!!」

高い魔力を一点に集中させて解き放つ。それは天海を飲み込むかと思われたが・・・

「甘い」

彼は咄嗟にティオスの前に手を構えた。

「があああああ!!」

彼のブレスに押し負けることなくなんとすべての攻撃を跳ね返してしまった天海。自身の強力な魔法が完全に跳ね返されたことにより、ティオスは苦痛に顔を歪めていた。

「こんな・・・ことが・・・」

氷と水の混合魔法により全身血まみれのティオス。その様を見て、天海は大きくため息をついた。

「これでもまだお前はその余裕を貫き通すのか?」

3つの滅系魔法のすべてを解放することはせず、全力を出さないスタイルの彼に嫌気が差してきた天海は、笑みを失いつつあった。ただ強者との戦いだけを好む彼に取って、今のティオスは取るに足らない存在。

「・・・そうも言ってられなくなったようだな」

その瞬間、彼の魔力の質が変わるのを感じた。それは体内に魔力を持たないがために、相手の魔力の質を感じ取ることができない天海でさえ、わかるほどの大きな変化だった。

「君にはやはり全力以外では相手にならないようだ。だが悪く思わないでくれ。全てを解放するには準備が必要なんだ」
「準備?」

漆黒の翼を広げながら、さらに魔力を解放していくティオス。次第に高まっていくそれは、大気を震わせ、大地には亀裂が入り始めていた。

「長く全力を出したことがない俺がいきなり全てを解放するのは無理だ。徐々に段階を踏んでいかなければならない」

いきなり全てを解放してはさすがのティオスでも肉体がそれに耐えきれない。だからこそ、できるだけ力は解放したくなかった。

「さてと、まだ余力はあるんだろう?天海」

漆黒の翼を開き目の前の青年を睨み付ける。その姿を見て、天海はニヤリと笑みを浮かべた。

「俺はいかなる相手でも・・・どんなことがあろうと常に全力だ。それが礼儀でもあり、俺が生きる意味だから」

天使属性を解放したティオスにも怯むことを知らない天海。二人の戦いはさらに白熱を見せるのかと思われた・・・だが、それは意外な形で終止符を打たれることを、まだ彼らは知らない。

















「体が・・・動かない・・・」

ナツの荒ぶる感情の炎を受けたゼレフは動けなくなった自らの体に驚きながら横たわっている。

「こんなのは初めてだ・・・まさかこれが・・・いや・・・死ねる訳がない・・・きっとすぐに回復して・・・」

不老不死の体になっているゼレフは、自身が死ぬのかと思ったが・・・今までもその希望を何度も打ち砕かれてきた彼は、すぐにその思考を捨て去ろうとする。

「あとは任せていいんだよな?初代」
「はい」

ボロボロの二人の後ろで、フラフラとやっとの思いで立ち上がったメイビスがいた。

「俺・・・もう疲れたよ。早くハッピーたちの顔が見てぇ。じゃあな、兄ちゃん」

二人の邪魔をしないために魔力を使い切った体にムチを打ってその場を離れていく。同じくヨロヨロと歩いてくるメイビス。その目は魔力を完全に吸い取られたそのままで、虚ろになっていた。

「メイビス・・・」

息も絶え絶えのゼレフの顔を覗き込むメイビス。二人はこれから何を話そうとしているのか・・・
















その頃、ENDの書を書き換えていたルーシィは・・・

「はぁ・・・はぁ・・・」

どんどん体内に悪魔の無力が流れてくるルーシィは、最後の力でENDの書を書き換えると、飛び出していた文字が本の中へと戻っていく。

「本が・・・」
「どうなったんだ!?」
「文字が本に戻っていく」

すべての文字が本の中へと戻った。それを見たルーシィは安堵の表情を浮かべる。

「やれることは全部やった・・・あたしたちの思い出を全部書き込んだ。ナツは・・・あたしたちの知ってるナツは・・・」
「悪魔なんかじゃない」

ハッピーのその言葉を聞いたルーシィは意識を失ってしまう。いいところにグレイがいたため、彼は彼女を支えた。

「悪魔の書物に手を加えたんだ。そりゃ少しやべぇと思ったけど・・・」

滅悪魔法の模様を浮かび上がらせたグレイ。彼は魔力を解放すると、彼女の手首を掴む。

「こんな時こそ、悪魔を滅するこの力で、抜いてやるからな」

滅悪魔法を駆使してルーシィの中に入った危険な魔力を取り除こうとしたグレイ。その時・・・

「待ってくれ、グレイ」

空から翼を生やした水色の少年が現れた。

「シリル!!」
「どうしたの!?その翼・・・」

驚くグレイとハッピーを気にする素振りも見せることなく淡々とルーシィの元に歩み寄る。すると、彼は彼女の頭を鷲掴みにする。

「何してんだ!!シリル!!」
「黙れ!!」

いきなり仲間に乱暴を振るう彼を引き剥がそうとしたグレイだったが、シリルが力を入れると周囲に風が巻き起こり、吹き飛ばされてしまう。

「これは予想してなかったけど、ありがたくこの力も使わせてもらおうか」

そう言うと少年の手が輝く。すると、ルーシィの肌から見えていた悪魔の魔力が、次第に無くなっていく。

「かはっ!!」
「ルーシィ!!」

彼女の頭を放したシリルの片翼・・・白い方の翼が少し黒く染まっていく。それに比例して、彼の魔力が高まっていくのを、三人は感じていた。

「あと一つ。それで俺は・・・」

翼を広げ、空へと飛び上がるシリル。

「レオンを越える!!」

呆気に取られている三人を置いて、本来の目的地を目指そうとするシリル。そんな彼をすぐ近くである人物が見上げていた。

「シリル!!何やってんだ!!」

全身傷だらけのナツ。グレイたちを見かけた彼はゆっくりとした足取りで近づいていた彼は、見たことのない姿になっているシリルを見て慌てて駆け寄ってきた。

「もう俺はお前らの知るシリルではない。俺は・・・
















この世界を変えれる唯一の存在なんだ!!」

トップスピードでどこかへと行ってしまうシリル。その方角に覚えのあるナツは、目を見開いた。

「ハッピー!!シリルを追いかけてくれ!!」
「あい!!」

ナツを持って、シリルのあとを追いかけるハッピー。グレイはまだフラフラしているルーシィを抱え、彼らの飛んでいった方向を見るだけだった。

「ナツ!!あっちって・・・」
「ああ・・・」

どんどん遠ざかっていく少年の力を、懸命に追いかける。しかし、ほどなくして、少年の姿は見えなくなってしまった。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
シリル覚醒?暴走?状態ですが、果たしてどうなってしまうのでしょうか?
そしてティオス対天海はどんな決着を迎えるのか・・・次回に続く・・・ 
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