ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第125話:Glide Armor
アクセルはルナとパレットの喧嘩によって脱臼した両肩を何とか元に戻すと、痛みに顔を歪めながら元に戻した両肩を擦る。
「痛たた…」
「ごめん…」
「ごめんなさい…」
脱臼の原因である2人は正座をしてシュンとなりながらアクセルに謝罪した。
「…いや、大丈夫だよ。そんなに痛みも酷くないし…でも出来れば今度からは割りと本気で止めてね。下手したら僕両腕が無くなってオーバーホールしなきゃならなくなるかも…」
「「はい…」」
シュンとなって謝罪する2人を見て、何故か被害者であるはずのアクセルは自分が悪いことをしたような錯覚を覚えた。
「(ああ、レッドが言っていた男は女にはどうしても勝てない部分があるって言っていたけど、こういうのを言うのか)」
1つ男として成長したアクセルである。
しかし痛い目には遭ってしまったけれど2人がまだ正式な仲間でもない自分のために時間を割いて造ってくれたと言うのはやはり嬉しい。
「でも、ありがとう2人共。嬉しいよこれ」
2人の武器を嬉しそうに弄るアクセルだが、ここで1つの問題にぶち当たる。
どちらの武器を使うかだ。
粒子化して拡張領域にしまえるにしても、やはり限界は存在するために2人の武器を使うにしてもこのままではキャパシティオーバーになってしまう。
「俺の武器!!」
「私の武器を!!」
「待って待って、落ち着いて2人共。深呼吸して」
「「スー、ハー…」」
また喧嘩になるのはアクセルとしても遠慮したいので2人を落ち着かせる。
「正直2人がくれた武器は凄く頼りになると思う。でも僕としてはルナのように色々な銃を使って戦うのも良いと思うんだ…レッドアラートのみんなには僕の戦い方は知られてるしね」
今回イノブスキーに苦戦したのはイノブスキーのスピードが予想以上に強化されていたのもあるが、最大の原因はやはり、アクセルの戦い方が知られていることだ。
「ああ、確かに」
「確かにそうですね。」
「でもパレットの言うように僕のスタイルを完全に崩すって選択肢は有り得ないよね。変な戦い方をして、それでやられたら本末転倒だしさ」
「「うんうん」」
「だからさ、ルナとパレットが協力して造れば良いんじゃないの?ルナとパレットが力を合わせれば凄いのが出来そうだけど」
アクセル的にはルナとパレットの開発理論が合わされば自分にとって理想的な武器が出来上がるのではないかと思った。
「パレット…とか」
「ルナ…とですか…」
複雑そうに互いを見つめるルナとパレット。
何せ今までお互いの考えが今まで噛み合わず、言葉を交わせば即喧嘩の仲だ。
「いや、嫌なら別に良いんだけど…」
「いや、やるよ。パレット、手伝え」
「え?ルナ…」
ルナの予想外の言葉にパレットは目を見開いた。
「だ、だって…アクセルに迷惑かけちまったし……それに…少しやってみたくなったから」
赤面してる顔を隠すように言い訳するルナにパレットは吹き出した後に頷いた。
「そうね、やってみよっか!!」
パレットとルナの初の共同作業が開始された。
「この銃はエックスがカウンターハンター事件に使ったって言うホイール・アリゲイツの特殊武器も参考にしてるんだ。」
「確かに性質は似ているわね。」
武器の参考にしたホイール・アリゲイツの特殊武器であるスピンホイールの詳細をパレットに見せながら説明するルナ。
「だからな、こいつの武器を参考にした銃となると大型に…」
「うーん、それなら威力を抑えた斬撃系エネルギー弾タイプにすれば良いと思う。ルナの銃は一撃の威力を重視し過ぎてるから大型になるの。いくら威力を上げてもやっぱりチャージが出来るバスターを持つエックスさんには攻撃力や攻撃パターンで劣っちゃうし、アクセルの能力がエックスさんの劣化みたいになっちゃう。これからアクセルはエックスさんとも組むこともあるだろうし、はっきりと差別化を図った方が連携も取りやすいと思うな」
「なら、高速回転してガリガリ敵を削る斬撃エネルギー弾を発射するタイプにするか?だけど銃の形状はどうするかだ。アクセルのバレットから発射するようにするのもいいけど、あれじゃあ銃口の経口が小さいから満足のいく性能にはならねえな。それにバレットから放つとなるとエックスのような特殊武器扱いになるから弾数にも制限がついちまう」
「ハンターの人達が使ってる手持ち型のバスターで良さそうなのないかしら?」
「あ、そうだ。ルインのバスターだ。あれならアクセルのバレットと同じ位のサイズだし、銃口の経口も広い。いけるぜ」
「ルインさんのバスター?データあるの?…あるなら…見せて…ふむふむ、これなら大丈夫そう。やってみようルナ!!」
「おう!!」
数十分後、ルインのZXバスターを参考にした黒い銃から斬撃系の光輪を発射する特殊武器のレーザーホイールが完成した。
トレーニングルームで仮想エネミーに試射してみたが、連射は利かないが、地を沿って高速で敵に向かって行き、その高速回転でガリガリと削っていくのを見て総合威力も中々で対地武器としてはかなり優秀だ。
「いいね!これ、凄く使えそう。ありがとう2人共」
「「やったー!!」」
パチンと手を合わせる2人。
元々仲良くなれる要素は充分にあったこの2人だが、お互いの考えのズレによって険悪ではあったが、しかしこういう風に協力しあえばすぐに仲良くなれるのだ。
…そして後に、ハンターベースの誰もが成し遂げることが出来なかった2人の仲を改善させることに成功したアクセルの評価も上がった。
「あー、それからパレット。僕もルナみたいに普通にしてくれればいいよ。何か敬語って…むず痒いって言うかさ…」
「そう?それじゃあこれからは普通で」
そして、パレットと別れてアクセルとルナは休憩を取った後、司令室に来ていた。
「ゼロとエックスはまだ帰って来ないの?」
「ゼロとエックスはディープフォレストで戦っているわ。ここのレッドアラートのメンバーはソルジャー・ストンコング…」
「ストンコング…」
誇り高く、忠義に生きる戦士で、仲間からは尊敬の念を込めて哲人と呼ばれていた。
彼は強い、見知らぬアーマーを纏ったエックスとゼロの攻撃を防ぎながら、剣を繰り出していた。
「僕行ってくる!!」
「アクセル!?」
「ゼロとエックスが勝てば2人を迎えに。ストンコングが勝てば彼を倒す。どっちが勝つか分からないけど、とにかく行ってくるよ!!」
「待て待て、お前だけ行こうたって、そうは問屋が卸さねえ!俺も行くぞ!!」
「危険よ2人共!!あそこは険しい道が続いていてあなた達じゃ通り抜けられないかも」
「それくらい平気だよ。だって僕達にはこの力があるんだから」
2人はルインズマンに変身する。
「「「え!?」」」
「んじゃ、行ってくんぜー!!」
呆気に取られているエイリア達をよそに2人は出て行ってしまう。
「あの能力は…もしかして相手の姿、能力をコピーする…ただの噂だと思っていたのに…」
「ルナが今までメンテナンスを受けようとしなかったのはあの能力があったからでしょうか?」
「何ですかあれー!?アクセルとルナがルインズマンになっちゃいましたよ!?」
「……あの能力、ルナがウィルスに対する耐性が高いのはあの能力が関係しているのかもね」
エイリアの呟きが司令室に静かに響き渡った。
そして時間は大分…正確にはアクセルとルナがセントラルサーキットから戻ってきて少し経ったくらいの時間に戻ってエックスとゼロは共にディープフォレストの険しい道を走っていた。
「ルインの影…ルイン・シャドウ…それからレプリフォース大戦の時の奪われたデータを使って造られたかもしれないウェントスとテネブラエと言うレプリロイド…」
「ルインの影に関しては良く分からんな。そいつがレッドアラートのメンバーを破壊したならレッドアラートの仲間と言う訳でもなさそうだ…」
ルイン・シャドウの正体に頭を悩ませている時、目の前にカプセルが現れ、エックスとゼロに馴染みのある人物のホログラムが現れた。
「ライト博士!!」
「Dr.ライトか」
かつて2人の天才科学者がいた。
1人はその能力を平和のために使い、もう1人は己の欲望のために使った。
偶然かそれとも運命なのか…彼らは互いに自分が最高と自負するロボットを造り上げた。
片方は“平和”、もう片方は“破壊”を息子に託した。
『エックス、ゼロ。また戦いが起きてしまったようじゃな。非合法の組織と言えども平和を守ってきた者達と戦わねばならぬとは悲しいことじゃ…エックスよ、お主達も知っておると思うが、ルイン・シャドウと言うルインの偽者が動き出しておる』
「やはり偽者か」
『あれは恐ろしい存在じゃ、あのアーマーに潜んでいた悪意…ロボット破壊プログラムが個体となって意思を持ちながら動いておると言うのがな。あれをあのまま放置すればイレギュラーの大量発生!あのシグマの悲劇が再び繰り返されてしまうかもしれん……まさかこのような事件が起こるとはのう……』
「………大丈夫ですライト博士。ルイン・シャドウは俺達が何とかします!!」
「あいつの顔で好き勝手されるわけにもいかない。Dr.ライト、あなたが俺達の前に現れたのはルイン・シャドウの正体を教えるためだけではないでしょう?」
ゼロの問いにライト博士は頷くとエックスに授ける新型の強化アーマーのホログラムを映した。
『正直、ルイン・シャドウ…そしてそれを追う勢力の力は未知数じゃ。今回の強化アーマーであるグライドアーマーは完成した状態で渡す。エックス、グライドアーマーの各部位のパーツを説明をしよう。』
「お願いします博士」
『まずヘッドパーツは装着するとエネルギーの吸収範囲が飛躍的に上がり、今までのアーマーよりも長期戦に向いた性能にしておる。ボディパーツは防御力が上昇し、セカンドアーマーと同様のギガクラッシュを放てる。アームパーツはチャージショットの射程距離を長くし、高いホーミング性能を持ったエネルギー弾を伴って発射出来るようにした。そしてフットパーツ、これがグライドアーマーの最大の特徴じゃ、かつてのフォースアーマーとファルコンアーマーで培われたホバリング機能とフリームーブ機能を更に進化・最適化させたこのグライド飛行システムは、エックスにかかる負担を極限まで減らす事に成功し、更に滞空時間の上昇と長時間の滑空が可能にしたのじゃ。さあ、エックス…カプセルに入りなさい』
「はい」
ライト博士に促されたエックスはカプセルに入るとグライドアーマーを装着する。
『エックス、本来なら1つずつ渡して能力に慣れさせるべきなんじゃが、今のお主はいきなりフルアーマー状態になったことで体が思った通りに動けないかもしれん。お主ならすぐに慣れるじゃろうが…ゼロ…エックスのサポートを頼んだよ』
「了解」
『…ところでゼロ』
「ん?」
ライト博士の戸惑うような態度にゼロは首を傾げた。
『もしお主の創造主に会えたとしたら…どうする?』
「俺を造った奴に…?」
『勿論、もしもの話じゃ』
「…………」
ライト博士の言葉にゼロはしばらく黙考した後に口を開いた。
「正直、俺を造った奴には言いたいことは数え切れないほどにある。地球のこの惨状の一因は俺の体にあったプログラムが原因なんだからな…」
「ゼロ…でも…」
「分かっているエックス」
エックスの言葉を遮って、ゼロは話を進める。
「だが、そいつのおかげでエックスやルイン…アイリスに会えた。そしてこの出会いと今までのことがあったから今の俺はここにある。憎いと思う部分あるが、感謝している部分もある。」
『そうか…』
「……それでは失礼します」
一礼して去っていくゼロにエックスも慌てて一礼した後にゼロを追い掛けた。
『…だそうじゃぞワイリー?』
振り返るとそこにはゼロの生みの親であるワイリーが顔を顰めながら腕を組んでいた。
『ふん…ロックマンの後継機やその模造品共と馴れ合っただけでなくロックマンに最も近い娘を妻にまでしおって、わしに逆らったりしたフォルテやゴスペル以上の親不孝者じゃな』
『…良いではないかワイリーよ。もう過去のことは忘れて息子達を見守ろうではないか…わしらはただ息子達が幸せになることを祈る…それだけで良いではないか…お主とて最後の息子であるゼロに不幸になってほしい訳ではあるまい?お主に何度も逆らったフォルテやゴスペルさえ見捨てなかったお主じゃからな』
『…ふん』
鼻を鳴らしながらワイリーのホログラムは消え、ライト博士も苦笑しながら姿を消した。
そしてエックスとゼロは前進し続け、ディープフォレストの最奥に控えていた戦士と対面した。
「できるな…」
姿を見ただけで、ゼロは相手の強さに気付く。
大きな背からは、強者の気を感じられる。
「ゼロと言ったか、この世で最も優雅に舞う武神よ。我が名はストンコング。戦いの中にしか己を見出だせぬ。貴様と同じだ」
「一緒にしないでもらおう。俺は戦いが全てだとは思っていない。」
ストンコングの言葉に対してゼロは表情を歪めながら答える。
「否っ!!我は貴様ほど純粋な戦闘型レプリロイドを見たことはない。…ここからは、戦いの為の戦い!参られよっ!!」
ストンコングは巨体に似合わぬ身軽さでこちらに剣を構えて突撃してくる。
「チッ!!」
予想外の動きに反応が遅れたゼロはセイバーで受け止めるが、あまりの重量に押されてしまう。
「(ぐっ!何て重さだ。こんな物を片手で使えるとは…こいつはやはり…!!)」
「ゼロ!!」
ゼロの援護をするべく、エックスはチャージショットを放つ。
チャージショットとホーミング弾が同時にストンコングの剣に当たり、ストンコングの腕を動かした程度で剣は強化されたチャージショットを受けてもビクともしない。
「特殊加工した超硬度岩石か…!!」
想像以上の硬さに表情を歪めるエックス。
「ほう?見破ったか。流石はあのシグマから幾度も世界を救った蒼き英雄よ。」
「……1つ聞きたい、やり方に問題はあったとは言え曲がりなりにも人々を守ってきたお前達が何故こんなことをするんだ!?仲間だったはずの彼の意思を無視してまでこんな……」
エックスの問いにストンコングは少しの沈黙の後に口を開いた。
「………我らは…既に道を違えてしまった。ならば後は己の信念に従い、突き進むまで」
「その先にあるのが破滅だとしてもか!?」
「無論!我が戦いは偽りの策謀家の為ではない!!レッドへの忠義のため!!違えた道の先にあるのが破滅の未来だとしても突き進むのみ!!」
再び振り下ろされる剣をエックスはかわしながらショットを連射するが、全て盾に防がれてしまう。
「我が盾にこの程度の攻撃は通じん!!エックス殿!あの時の貴殿の力はこんな物ではなかったはず!!」
「…っ!うおおおお!!」
渾身の一撃を繰り出すが、ストンコングをいくらか押した程度で本人は無傷だ。
「っ…我をここまで押すとは…」
「エックスばかり見ていて良いのか?」
「ぬう!?」
ゼロがストンコングとの距離を詰めると、セイバーによる斬撃を浴びせる。
「(やはり奴の得物が超重量なだけあって威力は凄まじいが行動に移す動作に隙があるな)」
そこを突けば勝てると踏んだゼロはエックスとの連携で仕留めようとするが。
「我が手の内を全て見せたと思わんことだな」
ストンコングは中央の大きな柱に飛びつき、剣を納めて両腕を振り上げたかと思うと、その両脇に巨大な岩が出現する。
「あれは!?」
「馬鹿な、一介の剣士にこんな真似が…!!」
エックスがチャージショットを放つが、岩はストンコングの剣と盾と同じ岩石のようで弾かれてしまう。
「我は力を手に入れた。戦いの為の力を!!その力を出し尽くし、強者を討ち取るのが我が生きる証!!貴様と同じく!!」
「先程言ったはずだ。俺は戦いのために戦っているのではない。例えそのために俺が造られたのだとしてもだ!!」
ゼロはセイバーを何度も振るうが、岩を破壊出来ないことを悟るとエックスの腕を掴んだ…その瞬間に岩が爆発した。
ストンコングは己の必殺の一撃が決まったことに腕を下ろして安全な位置に着地する。
「…これが英雄と武神の力…か…紛い物の力をアクセルを利用してまで得た我に…強者を与えてはくれんと言う訳か…」
自業自得かと自嘲するストンコングだが…。
「勝手に終わらせるな!!」
「!?」
真上から聞こえてきた声に目を見開いて上を見上げると、ゼロが…そしてゼロよりも上にエックスがいた。
あの爆発の直前にゼロが空円舞で上昇、更にエックスを真上に投げたのだ。
ゼロはダメージを受けてしまったが、エックスは無傷。
「ストンコング!!」
グライド飛行で凄まじい勢いでストンコングに突っ込んでいくエックス。
あまりの速さにストンコングは対処が追い付かない。
「決めろエックス!!」
「ギガクラッシュ!!!」
至近距離でストンコングにグライドアーマーのギガクラッシュを喰らわせるエックス。
咄嗟に盾を構えることは出来たが、その威力と規模は凄まじく、過去に使用したセカンドアーマーのギガクラッシュの比ではない。
盾ではギガクラッシュを防ぎきることは出来ずにストンコングはそのエネルギーをまともに受けてしまう。
「これが…英雄の力…か…見事だ…っ!!」
強敵と戦えたことに満足感に満ちた笑みを浮かべながらストンコングは爆散した。
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