歳を取って
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「お祖父ちゃんはそうなったんだ」
「恰好よくなったんだよね」
「いい服を着て」
「そうだ、しかし今の祖父ちゃん過酷いいか」
「とてもね」
「憧れるよ」
「そうか、ならこのままでいるな」
羊三は孫達に笑顔で返事をした。
「これからは」
「それで一緒に歩いてね」
「僕達と」
「恰好いいお祖父ちゃんと一緒にいたいから」
「そうしてね」
「勿論だ、やっぱりな」
羊三は孫達の憧れの言葉に満面の笑みになって述べた。
「人間お洒落をしないとな」
「駄目なんだね」
「やっぱり」
「ああ、そのことがわかった」
こう言うのだった、そしてまた老人と会って彼に言った。
「平和主義、そして何歳になっても」
「人はですね」
「お洒落をするものですね」
「そうですね、お洒落をしますと」
「何かが違いますね」
「人として」
「ですから」
それ故にというのだ。
「私ももう一度と思いまして」
「お洒落をですね」
「貴方とお会いしてから」
「そしてその様なですね」
「服装になりました」
ブランドもののスーツと靴、それに帽子やアクセサリーでダンディに決めている。老人そしてサプールと同じ様に。
「何かこうした格好になりますと」
「気持ちが全く違いますね」
「もうこのまま老いて死ぬだけだと思っていました」
そう思うからファッションも何もかもをしなくなっていたのだ、美少年美青年美男子と言われていた頃と違って。
「そうなっていましたが」
「今ではですね」
「この通りです」
まさにというのだ。
「気分も華やかです」
「では華やかなまま」
「人生を最後まで過ごします」
「私も同じです、私も世を去る最後の最後まで」
その時までというのだ。
「お洒落をしていきます」
「そうされますか」
「はい、歳を取ったからといって枯れることは」
「よくないかも知れないですね」
「そう思いますので」
だからだというのだ。
「私も貴方も」
「これからもですね」
「お洒落をしていきましょう」
「それでは」
二人で話してだ、羊三はお洒落を続けた。一度枯れた彼がダンディに戻った。そしてそれは彼にとって非常にいいことであった。
歳を取って 完
2018・10・16
ページ上へ戻る