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海和尚

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第一章

               海和尚
 三橋由佳と西田智子は八条大学文学部で知り合ってからの友人同士で今も付き合いがある。それで今は西淀川のそれぞれの住まいがある団地から中央区難波に出て美味しいものを食べ歩いて楽しんでいた。
 由佳は長い茶色がかった黒髪を後ろで束ねていてやや吊り目な感じの目と細長い眉を以ている。胸がやけに大きく目立っているメリハリの利いたスタイルだ。
 智子は穏やかな顔立ちで薄茶色の髪を肩を少し覆う位で切り揃えウぇ―ブをかけている、胸は智子程ではないが小柄で可愛らしい感じである。二人共主婦であるせいか服装は穏やかなものである。だが。
 由佳は千日前のビックカメラの傍を歩きつつ一緒にいる智子に言った。
「私の旦那今ね」
「修司さん出版社にいるのよね」
「八条出版ね、週刊誌の編集やってるけれど」
「忙しいでしょ、週刊誌だと」
「毎週本出すからね、それが今度はね」
 賑やかな中を歩きつつ言うのだった。
「月刊の方に移るらしいのよ」
「そうなの」
「漫画の方のね」
「八条出版月刊漫画雑誌も沢山出してるしね」
「そう、それでそっちに移るけれど」
「その分忙しくなくなるのね」
「そうみたい、週刊誌は修羅場だったけれど」
 それがというのだ。
「随分楽になるかも」
「それは何よりね、うちの夫は」
 智子は智子で話した。
「建設でしょ」
「八条建設ね」
「今度カンボジアに出張するのよ」
「健二さんそっちに行くのね」
「そうなの、今その準備で大忙しよ」
 そうなっているというのだ。
「だからこうしてね」
「二人で外行くのも久し振りよね」
「お互い旦那が忙しいとね」
「家で子供の相手するのは私達だけだからね」
 母親でもある自分達だけだというのだ。
「そうなるからね」
「そうよね、こうして難波に来るのも」
「久し振りよね」
「大阪にいるのに」
「まあ今はね」
「折角のお休みでお互いの旦那も家にいるし」
「子供達は任せてね」
 そうしてとだ、二人で笑いながら話す。二人共まだ二十代だが穏やかなファッションの中でも豹柄がある。
「楽しくね」
「食べ歩きしようね」
「二人でね」
 二人で笑いながら話して実際に食べ歩きをした、それもカレーライスやうどんといった安いものをあえてだ。
 そしてその中でだ、由佳は智子に提案した。
「ちょっと道頓堀の方行く?」
「あっちに?」
「そう、あっちにね」
 法善寺横丁の夫婦善哉で二人で二つずつ並んで出されている善哉を食べながら話す、この店の名物である。
「行く?」
「あっちで何食べるの?」
「そうね、もう結構食べてるけれど」
 それでもとだ、由佳は善哉を食べつつ話した。
「お好み焼きとかたこ焼きとか」
「そういうのね」
「そういうの食べる?」
「いいわね」
 智子は由佳の提案に笑顔で応えた。
「それじゃあね」
「今度はね」
「道頓堀まで行って」
「たこ焼きやお好み焼きね」
「それ食べましょう」
「それじゃあね」 
 二人で楽しく話してだ、実際に二人は夫婦善哉の次は道頓堀に入った。そしてそこで思い切ってだった。 
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