ある晴れた日に
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242部分:オレンジは花の香りその二十五
オレンジは花の香りその二十五
「国産だったよな」
「いい香りでしょ」
「アメリカのオレンジと何か違うような感じがするな」
よく食べるそのオレンジについても話した。オレンジを皆で食べてきたのだ。そのオレンジについて話を進めるのだった。
「味も香りもな」
「そうでしょ?だから持って来たのよ」
「だからか」
「ええ。いい香りだったから」
彼が話すのは香りについてだった。
「あの香りが好きなの」
「花の香りがしたな」
「そうでしょ?オレンジって本当はそうした香りがするの」
また正道に話した。
「その香りがあんまりにもいいから。だから皆にもって思って」
「それでだったよな」
「音橋君も気に入ってくれた?」
「ああ」
正道は今の未晴の言葉に頷いた。
「最高のオレンジだったよ」
「そう。よかったわ」
「あのオレンジが好きで」
正道は未晴と話をしながらまた言葉を出した。
「香りが花の香りか」
「それが?」
「だからだよ。花、好きなんだな」
自然とこう導き出されることだった。彼はそのことも言ったのだ。
「そうだよな」
「好きよ」
彼女もこのことを認めた。
「お花、大好きよ」
「やっぱりな。そうだと思ったよ」
「どのお花も好きなの」
「おい、どんな花もか」
「今の季節の紫陽花も」
やはり梅雨は紫陽花だった。これがあるからこそ梅雨もまだいいと思えるのだ。紫陽花のない梅雨なぞそれだけで梅雨ではない。
「大好きだし。先月のさつきも四月の桜も」
「どれも好きなんだな」
「来月は朝顔よね」
未晴は七月のことも口にしてきた。
「そうよね」
「ああ、朝顔だな」
正道も七月の花について思った。話を聞くと思わずにはいられなかった。
「そうだよな。朝顔だ」
「朝顔も好きなの」
そして朝顔についても同じだった。
「それもね」
「朝顔、いいよな」
「音橋君も好き?」
「大体花嫌いな人間もいないだろ?」
これが彼の言葉だった。
「だからな。朝顔もな」
「そうなの。よかった」
「花もだよな」
彼はまた言った。
「ずっとな。一緒にな」
「見ていけたらいいわね」
「違うよ。見ていくんだよ」
言葉を変えてみせた。
「二人でな」
「見ていくの?」
「そうだよ」
彼はこういう考えだったのだ。
「花だって一人で見るより二人で見る方がいいんじゃないのか?」
「一人より二人で」
「道を歩くのと同じだろ?」
彼は言葉を続ける。
「だからな。ここはな」
「一人より二人でなのね」
「花もな。見ていかないか?」
また未晴に言ってきた。
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