極寒の中で
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第四章
二人は何もかもが凍てついているその中を進んでいった、そしてそのうえで魔女がいる洞窟に入った。その中もだった。
寒冷地に棲息しているモンスターや獣達が出て来て二人に襲い掛かってきた、だがその彼等を全てだった。
二人は倒していった、確かに寒いがその寒さにもだった。莫は水筒の中の蒸留酒を飲みながら残に話した。
「寒くなれば」
「少し酒を飲むとな」
「温まるので」
「その分身体が動けるな」
「寒さもです」
これもというのだ。
「まさに備えあればですよ」
「そういうことだな」
「そうです、魔女はこの寒さと雪、氷が自分の護りと思っているでしょうが」
「そういったものもな」
「備えがあれば」
そうであればというのだ。
「凌いで、です」
「魔女のところにも行けるな」
「そうです、こうしたモンスターも」
雪男を炎の術で倒しつつ言う。
「倒せますしね」
「ほんまに備えあれば」
「障害も乗り越えられます」
残に話しつつだ、そうしてだった。
莫は彼と共に先に先にと進んでいった、そうしつつ洞窟の中の財宝も手に入れていき遂に最深部でだ。
白い法衣を着た魔女、毛人の老婆のそれと対峙した。魔女は二人に対して言った。
「わしの雪や氷を越えてきたか」
「備えをして来たので」
莫はこう魔女に返した。
「来ることが出来ました」
「人が来るか」
「ですから備えがあれば。人には知恵があるので」
その知恵を使えばというのだ。
「こうした自然の要害も乗り越えられます」
「おのれ、だがわしを倒せるか」
「そもそもお前何でこの辺りを雪と氷に覆っているんだ」
このことは残が問うた、彼は既に身構えている。
「この辺りの人や生きものに迷惑だろうが」
「知れたこと、この辺りをわしの力で覆ってわしの世界にする」
「だからか」
「そうじゃ、その為にじゃ」
まさにというのだ。
「わしは力を使っておるのだ、わしはここから世界も氷と雪に覆って世界を治めるのだ」
「悪党の一つの典型ですね」
魔女の言葉を聞いてだ、莫はやや呆れた様に述べた。
「それでは」
「一つのというのか」
「小悪党というか。わたくし自分を小心者と思っていますが」
自覚しているというのだ。
「ですが小悪党ではないので」
「わしを小悪党と言うか」
「はい、こんなことで世界を治められません」
はっきりだ、魔女に対して告げた。
「こんな小さな力で」
「わしのこの力を小さいというか」
「そうです、貴女みたいな人が一番下らないです」
「その言葉後悔させてやるぞ」
「どうでしょう、世界は力だけで治められません。ましてやわたくし達の備えで破られる力なぞその程度ですし」
莫は魔女に容赦なく告げてだ、彼も身構えて言った。
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