ロックマンX~Vermilion Warrior~
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ロックマンX7
第122話:Red Alert
イレギュラーは増加の一途を辿っていた。
コロニー破片落下事件により、イレギュラーハンターは組織解体・再編成され、生き残ったハンターが働いているのみ。
レプリフォースは先の大戦で壊滅状態となっており、イレギュラーを倒せる巨大組織は今やまともに機能していない。
そんな中、バウンティハンターと呼ばれる非正規の戦闘集団が台頭してきた。
高額な賞金と引き換えにイレギュラーを撃破する。
元は裏社会で活動していた者達。
だが、ハンターや軍隊が弱体化した今となっては、非合法ながらイレギュラーを処分する彼らは民衆に支持される存在となっていった。
そのバウンティハンターの中で、特に注目される存在があった。
レッドアラート。
大鎌の戦士・レッドをリーダーとする戦士達は乱暴な手段ながらも人々を守っていた。
「ここか、ビートブード?」
「ええ、間違いありません。」
特別再開発指定区のとあるビルの前に立つエックスと、ビートブードを含めた元第17部隊のレプリロイド達。
「へへ、ビンゴだな。流石エイリアとソニア達だぜ」
ここで特S級の非合法品のイレギュラー化ウィルスの取り引きが行われることをサイバースペースで情報収集を行うソニアとそのソニアが得た情報を調べることで居場所と企みを見抜いたエイリアの話によってシグナスから出撃命令が出されて出撃した。
「イレギュラー化ウィルス…ようやくシグマウィルスのことが片付いたのにまだ悪事を働こうとするのか」
表情を歪めながら拳を握り締めるエックスにルナは淡々と呟く。
「まあ、仕方ねえ部分はあるさ。一度甘い蜜を吸っちまった野郎は悪事は止めねえよ。自分が得するって分かってるからな」
「………」
「ほう?どうやら先客がいるみてえだな」
「ん?……お前は確か…レッドアラートのリーダーのレッド……」
声に反応して振り返ると大型のビームサイズを携えた紅いアーマーのレプリロイド…レッドアラートのリーダーのレッドがいた。
「ほう?イレギュラーハンターが誇る最強のハンターさんに俺の名を知っていてもらえてるとは光栄じゃねえか」
笑いながらエックスに近寄るレッドにビートブードは警戒するが、殺気がないため攻撃の危険性はないと見たエックスがビートブードを下がらせる。
「やり方は乱暴ではあるが、バウンティハンターの集団の中では比較的良識を持ち合わせている組織と言うこともあって俺達もお前達のことにはある程度の知識はある。まあ、お前と彼女が顔見知りだから得られた情報もあるが…」
「彼女?って、お前は?」
「よう、レッド。久し振りじゃねえか…元気そうで何よりだぜ」
エックスの後ろからひょこっと顔を出したルナにレッドは目を見開いた。
「まあ、ボチボチってとこだな…最近はイレギュラーの増加で仕事が忙しくて仕方ねえ。それにしてもイレギュラーハンターに入隊したって噂は本当だったとはな。お前にこいつを会わせようとお前の拠点に足を運んだんだが、機材も何もかも無くなってもぬけの殻になっていたんだから驚いたぜ」
「へ?あ、ああ…悪い悪い。俺もバタバタしててよー、伝える暇が無かったんだよ。それで俺に会わせたい奴って誰だよ?」
「ああ、おいアクセル…」
レッドが振り返りながらアクセルと言う少年を呼ぶが、アクセルはエックスをじっと見つめており、見つめられているエックスは困惑したようにアクセルを見遣る。
「あいつが俺に会わせたい奴か?」
「ああ、全く憧れのイレギュラーハンターに会えたからって……おいアクセル!!」
「え?何、レッド?」
呼ばれたアクセルはレッドに振り返った。
「憧れのエックスに会えて嬉しいのは分かるが、まずはこいつだ。前にお前に会わせたいと言っていた奴だ。こいつはお前と年も近いし性格も気さくだから気が合うと思ってな」
「あ、うん…前にレッドが僕に会わせてやるって言ってたのがその子なんだね?」
「そうだ。ルナ、こいつがアクセルだ。年も近いことだし仲良くしてやってくれ」
「おう、よろしくなアクセル。俺はルナ…よろしくな」
「うん、よろしく」
握手を交わすアクセルとルナ。
性格は互いに明るく、設定年齢が近いためか2人は少し会話をするだけで親しくなる。
「…まさか…彼もレッドアラートの戦闘員なのか?あんな子供が…」
アクセルくらいの少年が戦闘員としていることにエックスは顔を顰める。
「ああ、アクセルはまだガキだが、秘めた力は相当なもんだ。それにガキを戦闘員にしてるのはそっちもそうだろう。」
ルナのような少女をハンターとして採用している時点でエックスの言葉に説得力は皆無だ。
「まあ、そうだな。イレギュラーの増加や度重なるイレギュラー事件でイレギュラーハンターの構成員は年々減少している。今ではイレギュラーハンターもあの2人くらいの子供までハンターやオペレーターとして採用しているくらいだ。」
「そうかよ、戦うための人材は何時でも何処でも不足ってのは変わらねえもんだな…そう言えば最近ではイレギュラーハンターではオペレーターの武装化も実施されてるらしいな」
「ああ、自衛手段の確保の名目で………そうだ、少し尋ねたいことがあるんだが?」
「あ?」
真剣な表情で尋ねてくるエックスに面食らった表情を浮かべるレッド。
「レッドアラートは世界各地で活動しているんだろう?なら、ルインを…朱色のアーマーで腰にまで届く金髪が特徴の女性型レプリロイドを知らないか?」
「ルイン?ルインっていやあ、先のコロニー事件の際に行方不明になった特A級ハンターか?…もしそうなら見てねえな。ルイン程の有名人が姿を見せれば俺達の間でも噂になるだろうしな。何せ俺達は非合法の組織だ。あんたらの動きには過敏なんでね」
「そうか…」
あまり期待はしていなかったが、やはりこういう結果は落ち込むものだ。
その様子にレッドはある予想をするが、殆ど間違ってはいないだろう。
「あんたとルインはまさか…」
「おいレッド。何時まで話してるつもりだ?」
「ああ、すまねえなカラスティング。おい、アクセル。そろそろ行くぞ」
「分かったよ、それじゃあ。」
「おう、お互い頑張ろうぜ」
カラスティングと言う鴉型レプリロイドに注意されたレッドはアクセルを呼び戻すと意識を切り替えてビルの方に視線を遣る。
「ところでお前達レッドアラートの狙いはイレギュラー化ウィルスか?それとも指名手配の奴らか?」
レッドアラートの狙いが何なのかを知っておかねばならないと判断したエックスはレッドに尋ねる。
「両方だ。ウィルスと指名手配の奴らをぶっ潰す。しかも今回の取り引きのブツはあのシグマウィルスの模造品、ウィルスプログラムΣ-02だ。」
「……何だって?」
「(あ、やべ…)」
それを聞いたエックスの顔から表情が消える。
ルナの表情が引き攣るが、レッドは気付かずに知るまでの経緯を教えた。
「うちには専門家がいてな。あの爺さんにかかれば奴らの目的と居場所の特定は簡単に分かるのさ」
「……………」
「おいこらあ!!レッドが親切に教えてんのに礼も無いってのは…うっ!?」
「イノブスキー?…なっ…?」
イノブスキーと呼ばれた猪型レプリロイドがエックスの無反応に憤るが途中で勢いを失い、それを見たカラスティングが疑問符を浮かべながらエックスを見遣ると彼もまた絶句した。
無表情のエックスから放たれる凄まじい怒気にハンター、レッドアラートの面子問わずに絶句する。
「おい、レッド。エックスにシグマウィルスの話題はタブーだぜ…」
「あ…あわわわ…」
あまりの怒気に比較的エックスの近くにいたカンガルー型のレプリロイドは腰を抜かしてしまう。
「ガンガルン…そう怯えるな」
「ス、ストンコング…ぼ、僕は怯えてなんか…」
ストンコングと呼ばれたゴリラ型のレプリロイドはガンガルンの傍に歩み寄るとエックスに向かって口を開いた。
「エックス殿、その怒気を収めて頂きたい。ガンガルンが怯えているのでな」
「エックス!ほれ、ルインのことで模造品とは言えシグマウィルスに腹立つのは分かるけど止めとけって…ガキも怯えてんぞ」
「え?あ…すまない」
ストンコングとルナに宥められたエックスは怒気を収めるとビルの方に視線を遣る。
「助かった…」
「あの状態になったエックス隊長は凶悪なイレギュラーより怖いんだよな…」
「私はあんなエックス隊長は初めて見たからまだ震えが止まらないわ…」
「(そういや、ルインはシグマウィルスの蔓延しているコロニーにスペースシャトルで突っ込んで行方不明になったんだったな。なるほど、あそこまでキレるわけだな)」
エックスのあの怒気の理由を理解したレッドは大鎌を構えた。
「ふう…よし、ハンター部隊!突撃開始!!」
【了解!!】
深呼吸して気持ちを切り替えたエックスは表情を引き締めて部下と共にビルに突入した。
「………とんでもねえ怒り様だったな。誰だエックスを甘ちゃんだとかほざいた奴は?」
「何だウオフライ?流石のお前もあれにはビビったか?」
冷や汗をかきながら呟いているウオフライにレッドがからかうように言う。
「し、仕方ねえだろ。まさかあんな風になるとは予想してねえよ!!」
「俺は寧ろあれを見てエックスに男として親近感が湧いたぜ、あの怒り様は女…あの行方不明のハンター・ルインが絡んでると見て間違いねえな」
「…何で?」
「ルインは過去のコロニー事件の際に行われたスペースシャトルによる特攻作戦で行方不明になっている。シグマウィルスが深く関わってるんだ。シグマウィルスを憎悪する理由としては充分過ぎる……ガンガルン、お前はまだガキだから分からねえかも知れねえが…男ってのはな、心底惚れた女の為なら悪魔にだって喧嘩売ることが出来るんだぜ。…さてと、俺達も行くとするか!!ハンター共に遅れるな!!」
【おお!!】
結果的にとは言え、イレギュラーハンターとレッドアラートの共同戦線により、ギャング達の企みは容易く粉砕されたのだった。
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