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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第119話:After

異空間から脱出したライト博士とワイリー。

あの事件から数日後、ワイリーはタイミングを見てライト博士を問い詰めた。

『さあ、ライト。わしに話せ。さっきの光は何じゃ?女神とはどういうことじゃ?』

『何故お主はそういつも上から目線なんじゃ。そんなだからお主はキングの事件などで息子(フォルテ)の反抗期で野望を阻止されてしまうんじゃよ』

『ふぬおっ!?痛いとこを突くでないわ…』

もう殆どの人々は知らない20XX年の戦いの歴史には、ワイリー作のロボットであるフォルテがワイリーの世界征服の野望を粉砕した事件もあったりする。

『まあいい、ルインを連れ去ったのは女神…文字通り、神様じゃよ。彼女が人間であった彼女にレプリロイドとしての生を授けたんじゃ』

『か、神じゃと?』

『別に神様がいたとしても不思議ではあるまい?地球外ロボットや未知のエネルギーやらあったわしらの世界じゃぞ』

『確かにな』

実際関わったことのあるワイリーは思わず納得してしまった。

『それでレプリロイドとなった彼女に生き残らせるために特殊アーマーを授けた女神殿じゃがな。彼女としては単なる強化アーマーとして与えたらしくまさかあのアーマーにゼロの人格やプログラムまで入っているとは思わなかったんじゃよ。何とかしようにも作戦が遂行して間に合わず…現在に至るわけじゃ』

『………つまり、あの戦いはシグマウィルス以外にもその女神と言う名の駄女神の大ポカによって始まったと言うことか?駄女神のドジの尻拭いをわしらの息子共がすることになったとは…恐らくこれから先の未来でも二度と無いであろうあの凄まじい戦いに何ともしょうもないオチが付いたわ』

恐らく、もう単純な戦闘力でルイン以上の存在は現れないだろう。

それくらいイレギュラー化したルインは凄まじかったのだが、その存在の誕生のきっかけの1つが女神の大ポカである。

『まあ、女神殿は神様らしく人格はとても素晴らしいお方なのじゃが、お主のように肝心な時にミスをやらかしたり、お主のように少し考えれば分かりそうなポカをやらかしたりするからのう。正にお主のように大賢は大愚に似たりを体現したかのようじゃな』

ライト博士も認めるワイリーの才能はワイリー自身が自称する通り天才と呼ぶに相応しい。

若い頃にはまだロボットの心と言うべき人格プログラムが完全に完成する以前からダブルギアシステムと言うロボットの性能を飛躍的に増幅させるシステムの試作品を造り出し、その後は古代文明の遺跡から発掘された物であろうと、宇宙より飛来した未知のエネルギーであろうと、その仕組みや特性を理解し応用利用出来る頭脳は正に凄まじい。

しかし、その有り余る才能が故にワイリーは実に信じ難いミスを起こす。

良くも悪くも天才型の典型と言うべきか、閃きや把握能力には優れる反面、少し考えれば分かりそうなポカをやらかすのがワイリーの欠点である。

まあ、それがあるからロックマンはワイリーに勝てたと言う部分もあるわけだが。

『………貴様、然り気無く駄女神と共にわしを貶しとるじゃろう。』

『そんなことは…』

「き・み・た・ち・ねえ~」

『『なっ!?』』

ライト博士とワイリーが振り返ると怒りのオーラを纏ってルインを背負った女神の姿があった。

『(こ、これが女神か…成る程、この威圧感…確かに人間でもそれによって造られた者でもないな………ライトから聞いた大ポカのせいで色々台無しで威厳なんぞあって無いようなもんじゃがな)』

「何か言った?」

『別に何も言っとらんが?それより何の用じゃ?駄……女神よ』

「今、駄女神って言おうとしたね!?」

『女神殿、それよりルインは?』

涙目でワイリーに抗議しようとしたが、ライト博士によって阻まれてしまい、頬を膨らませた女神はルインに触れた。

「う~…ルインちゃんの魂はギリギリ崩壊する寸前だったね。もう少し爆発のダメージを受けてたら消滅してたかもしれない。元々無理させて復活させたしね。」

『そうですか、それで彼女は助かるのですね?』

「勿論、私は女神だからね。少し長い休息が必要になるけど…」

『…やはりすぐには戻れませんか……』

「ダメージが酷いからね」

ルインの生存を信じて待っているエックス達の姿を思い出すとライト博士も胸が痛む。

「まあ、ルインちゃんに関しては仕方ないとして……さあて、ワイリー博士?」

『な、何じゃ?』

女神に横目でギロリと睨み付けられたワイリーは少し後退した。

「よくも死人の君がこの世界を滅茶苦茶にしてくれたねえ。でも君の企みは終わりだよ。何てったってゼロ君を縛る物が無くなっちゃったんだもん」

『………』

痛いところを突かれたワイリー。

もうゼロに介入することは出来なくなってしまった。

出来たところでゼロは自分の命令には従わないだろう。

「挙げ句に君のせいでルインちゃんが暴走しちゃったじゃない!!超完璧な女神を自負する私に恥かかせて、許さないんだからああああっ!!!」

『…いや、あの小娘に関しては知らぬわ』

『女神殿、流石にそれはワイリーのせいではなく女神殿の責任ですぞ』

『あの小娘の内部機構については駄女神である貴様がやらかしたんじゃ!!それをわしに責任転嫁するでないわ!!この駄女神めが!!』

「ああああっ!!!また私を駄女神って言ったああああっ!!!うわああああんっ!!!!」

メンタルが弱い女神は人間であるワイリーに言い負かされて泣いてしまう。

『ワイリー!!事実とは言え、女神殿に言って良いことと悪いことがあるぞ!!』

あまりの言いようにライト博士はワイリーに抗議するが、ライト博士もライト博士で言うことが酷かった。

「ライト博士ええええっ!!?ライト博士も滅茶苦茶ひっどい!!」

「(…………うるさい)」

傷ついた魂を癒すために眠りについているルインだが、周りの騒がしさに表情を顰めるのであった。

「ぐすっ、と、とにかく…これ以上悪さしたら…許さないん…だからね!!今回はルインちゃんの暴走を止めて世界の破滅を救ってくれた功績を鑑みて、今回は罰は与えませんけどね!!ヒック…」

『せめて泣き止んでから言わんかい……』

『ワイリーよ、この方の一挙一動に一々ツッコんでいてはキリがないぞ』

『成る程、ライトの神経が図太くなった理由が分かったわい。このような駄女神と一緒にいれば嫌でも図太くなるわけじゃな』

「君達!!私は女神様なの!!偉いの!!ボロクソ言うの止めて!!」

『まあまあ、女神殿。そのようなことより優先すべきことがあるでしょう』

「そのようなこと…ああもう分かったよう。ルインちゃん、お休み」

ルインは再び光に包まれてこの場から消えた。

『消えた…どこにやったんじゃ?』

『生と死の狭間の空間とでも言おうかのう。本来死ぬ運命ではなかった者のみが運ばれる空間。あそこならゆっくりと休めるじゃろうな』

『そうか、まあ…わしとしてもロボット…いや、現在で言うレプリロイドが目の前で死ぬのを見るのは本意ではないしな…ではわしは去ると…』

「待ちなさい」

この場を去ろうとするワイリーの肩を掴む女神。

『何じゃ駄女神?』

「もう隠す気もないんだね…まあいいや…もう。君はどこにも行かせない。これ以上滅茶苦茶にされたらたまらないからね!!」

『ふざけるでないわ!この駄女神め!神と言えど人の拘束など許されることではないぞ!!』

「うっさい!この土下座大魔王!!ゼロ君にライト博士が残していたロックマンVSDr.ワイリー。ワイリーの歴代土下座シーンコレクションを見せてやろうか!?」

女神がスイッチを押すとモニターが現れ、ワイリーの土下座シーンが映った。

『なっ!?これは…』

「この時から始まって!!この時も!!この時も!!この時も!!この時も!!この時も!!この時も!!この時も!!この時も!!この時も!!この時も!!その他の土下座シーンを含めれば数えきれない回数だよ!!!どうだこの土下座大魔王!!!」

【許してくれ!!許してくれ!!】

因みに歴代ワイリーの土下座相手であるロックマンは当時のワイリー戦に有効な特殊武器の体色であった。

『…………………ライト、貴様ああああっ!!何故この時代にまでこんな物を残しとるんじゃあああああっ!!!』

『ん?ラッシュがワイリーを倒した記念に記録してくれたんじゃよ。ラッシュは本当に気が利く名犬ロボットじゃったわい』

「ふふふふ!!ゼロ君に悪の天才科学者からプライドゼロの駄目親父と見下げられたくなかったら言うことを聞きなさい!!」

『己…外道め…っ!!』

『お主は人のことを言えんぞワイリー』

弱みを女神に握られているワイリーは女神に拘束され、拘束されたワイリーは自由を失い、ライト博士に愚痴を溢す日々が始まるのであった。

そして更に激戦から数日経過して、ルインが造り出した異空間のあった場所は調査用レプリロイドと第17精鋭部隊のレプリロイド達が必死に捜索していた。

任務はルインの捜索と保護であり、組織のため、エックス達のために彼らは必死にルインを捜索していた。

瓦礫は半分撤去され、後残り半分に望みを託す者がいるのと同時にルインの生存は絶望的ではないかと思う者も少なからずいる。

異空間の崩壊に巻き込まれ、更に大破寸前の状態で生存出来るレプリロイドなどまずいない。

それに異空間崩壊から既に数日も経ってしまっており、仮に生き延びて非常時用エネルギーが稼動していても既に尽きてしまっている時間だった。

ルインは死んでしまったのではと思う者も少しずつ増えてきた。

「…………」

ハンターベースのエックスとルインの部屋でもある隊長室ではエックスがベッドに座りながら沈んでいた。

仕方がなかったとは言え、ルインを結果的に崩壊する異空間に置き去りにしてしまったことがエックスの心を沈ませていた。

「エックス」

隊長室への入室コードを入力して入ってきたのはエイリアであった。

「エイリア……」

エイリアの姿を見ると無理に笑顔を作るエックスだが、それを見たエイリアは胸が締め付けられるような痛みを覚えた。

ルインがいない状況はあの時に似ていてエイリアは少し戸惑いながらも報告する。

「エックス、今回の捜索結果だけど…ルインのパーツも見つからなかったようだわ…データ反応も全くない……」

「そうか…」

明らかに落ち込むエックスにエイリアは報告書をデスクに置くとエックスの隣に座った。

「………大丈夫よ、エックス。ルインはきっと生きてるわ…何となくだけど」

隣に座ったエイリアはエックスとの距離を縮めると優しく抱き締めて語りかけた。

エイリアの言葉にエックスは少し目を見開いた。

「珍しいね、君がデータに基づかない感覚的な話をするなんて」

いくらエックス達との交流で変わったとは言え、やはり元科学者レプリロイドであるためか、基本的にデータに基づいた理論的なことを話すことが多いエイリアがこのように感覚的に話をするのは少し珍しい。

「そうかもね、でもみんながあの子のために頑張っているのを見ているもの。なら私達も信じないと、そうでしょうエックス?」

「………ああ、そうだな…ルインだって帰るって言っていたんだ。俺達が信じないと……どれだけ時間がかかっても…」

エイリアの言葉に少しだけ救われたエックスは彼女を優しく抱き締め返し、そして同じくあの戦いを生き残ったゼロは…。

アイリスは戦場の跡を見つめ、ゼロは無言で瓦礫を撤去していた。

シグナスの傍らにはダグラスとルナ、ゲイトがいて、3人は2人を見守っている。

「………なあ、ルイン。お前が今どこにいるのか知らねえし、生きてるのか死んでるのかも分からねえけどな。みんながみんな…必死にお前を捜してるぞ。お前の僅かなパーツさえ見逃さないように。あのゼロもだ。アイリスもお前の帰りを信じ続けている…正直…エックス達から聞いたようなダメージを負って………」

ダグラスはそれ以上言葉を口にすることは出来なかった。

これより先を言葉にしたらルインはもう二度と帰ってこないような気がして…。

「……これだけ捜してパーツすら見当たらないところを見ると…覚悟を決めるべきかもな」

「……うむ、ゲイト。未だにルインの反応は無いのか?」

ルナの呟きを聞きながらも、シグナスが隣でルインのデータ反応が無いかを調べているゲイトに尋ねる。

「データ反応はなし…でも、彼女は…ルインは生きているさ…きっとね…」

「珍しいな。現実主義者のお前がデータがないのにそんな適当なことを言うなんて」

イレギュラーハンターに配属されてからのゲイトの今までの姿を知っている者からすればゲイトの発言は今までにないことであった。

「ふっ、そうかもね…でも、何となく信じられるのさ。ルインは生きているとね…今までの戦いで数多くの奇跡…滅茶苦茶を引き起こしてきた彼女の悪運を僕は信じるさ…だからシグナス。君もあまりルインのことを引き摺らないことだ。総監である君が揺らいでいたら部下もまた揺らいでしまう」

「そうだな、ルインの生存を信じるか信じないにしろ。総監である私がしっかりしなければ私の作戦で死地に向かった彼女に申し訳が立たないからな」

「そういうことだね。みんなが必死で彼女を捜しているのを見ると彼女の人望の厚さが分かるね……一部邪な考えの者もいるみたいだけど」

「くそ、ルイン副隊長が行方不明なんて…あんな美人がそうなるなんて…世界の損失だ…!!」

「全くだ…何としても副隊長を救出せねば!!」

「ただでさえ17部隊は華が少ないのに、貴重な華を失うなんて許されない!!」

「あんた達は本当にブレないわね…」

「ここまで来ると感心するわ」

もうツッコむ気力も失せたのか黙々と作業を続ける女性ハンター達。

「ゼロ…やっぱりこの辺りにルインのデータ反応は無いわ」

「そうか、ならばもう少し奥の方を調べてみるか。ついて来てくれアイリス」

「分かったわ………」

「どうしたアイリス?」

急に無言になったアイリスにゼロは疑問符を浮かべた。

それに苦笑を浮かべるアイリスは今まで胸の内にしまっていたルインへの愚痴を呟き始める。

「本当に勝手よねルインって、私達に何の相談もなく勝手にやって…それで散々私達に心配かけて…最後は信じてなんて…」

アイリスの愚痴にゼロは苦笑を溢してしまう。

「あいつの勝手によって救われたものもあるのも事実だがな。実際あいつの作戦でシグマウィルスによる二次災害を防ぐことは出来たし、地上のシグマウィルスの残滓は意思も何もない分、除去が容易だしな」

流石にルインもウィルス感知すら出来ない残滓は吸収出来なかったらしく、地上の所々では通信やモニターにノイズが入ったりするなど問題が起きているが事件当時に比べればマシだろう。

「お説教、また1つ追加ね。ルインにも見て欲しかったのに…形だけとは言え…」

アイリスがロケットペンダントを取り出すと、ロケット部分を開くと指輪があった。

近い内、ハンターベースによって行われるゼロとアイリスの結婚式がある…結婚式とは言えシグマウィルスによるイレギュラーの暴走で結婚式を行えそうな場所は無く、ハンターベース本部でのドレスも何もない、本当に形だけの結婚式が行われることになった。

「アイリス、そのすまなかったな。俺があんな事件が起きる前にもっと早く君に……レプリフォース大戦からあまり日が経ってなかったことや色々事情があったとは言え……」

結婚式は女性の憧れだと聞いたことがあるゼロは、アイリスにちゃんとした結婚式をさせてやれない自分を不甲斐なく思った。

「良いの、私はあなたとずっと一緒にいられるだけで…凄く幸せなの…ゼロ、不束者ですが…よろしくお願いします」

「アイリス…いや、俺の方こそ…君に色々迷惑をかけてしまうかもしれないが…」

「ふふふ……それにしてもエックス達はどうするのかしらね……?」

「あいつらのことだ。ルインが戻ってくるまではやらんだろう。あいつらは3人揃って…らしいからな…さっさと帰ってこいルイン。エックスとエイリアをあまり待たせるなよ」

ゼロとアイリスはルインの帰還を信じる。

何となくだが、ルインは必ず帰ってくると確信していたのである。

長い付き合いだからだろうか、あの最後の言葉は嘘ではないと確信出来たからだ。 
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