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ある晴れた日に

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197部分:さくらんぼの二重唱その十五


さくらんぼの二重唱その十五

「そんなとんでもねえメニュー出す店に何で行くんだよ、御前等」
「何でって?」
「しかも毎回そのびっくりメニュー頼んでるじゃねえか」
 実はそうなのである。
「せめてそれ頼まなかったらいいだろ?」
「だってなあ」
「ねえ」
 だがここで未晴を除いたこの五人は言うのであった。それぞれ顔を見合わせて。
「スタープラチナって機種も揃ってるし」
「安いし」
 まずはこの二つの理由があった。
「プリクラあるし」
「お料理もお酒も美味しいし飲み放題歌い放題あるし」
「サービスもいいから」
 そういう理由からであった。
「だから行くのよ」
「そういうのには気を使ってるけれどね」
 明日夢は自分の店を褒められて上機嫌になっている。手首を折って両方の腰にやって得意げなポーズを見せている。
「こっちもね」
「それはわかったさ」
 野本はここまでの話は受けた。
「けれど何でそのメニュー頼むんだよ。せめてそれ頼まなかったらいいだろ?」
「それだったら面白くないだろ?」
「ねえ」
 ところが五人はここでこう言い返すのだった。
「何が出るかっていのがいいんじゃない」
「スリルがあって」
「つまり怖いもの見たさってわけね」
 桐生はここまで聞いて全てを理解した。
「いつもあのメニュー頼むのは」
「私もその場で何を出すのか咄嗟に決めるのよ」
 明日夢自身のコメントだ。
「何出すかなんて考えたこともないわ」
「それでどうしてベイスターズの勝ち負けが関係あるんだ?」
「幾ら何でもそりゃないだろ」
 明日夢の話を聞いた皆の言葉である。
「しかも勝ったら普通の組み合わせって」
「何でなのよ」
「しかもよ」
 野本がここでまた言った。
「ベイスターズだよな」
「ええ」
 明日夢は彼の言葉に頷く。
「それがどうしたのよ」
「勝率一割程度だろ?」
 野本の言葉はこれまた実に残酷なものだった。
「確かよ」
「二割五分はあるわよ」
「それって百敗ペースよね」
「っていうか暗黒時代のうちのチームより凄いじゃない」
 阪神ファンであり暗黒をよく知っている静華と凛も唖然とする勝率である。
「どうなのよ、それって」
「道理でびっくりメニューで酷いことになる確率が凄いって思ったら」
「悪い?」
「悪くはねえよ」
 野本もそれは否定しない。
「けれどな。本当にベイスターズ弱いよな」
「また随分言ってくれるわね」
「弱いっていうか何だよ」
 顔を怒らせる明日夢に対してまた言う。
「その勝率。やばいだろ」
「それでもベイスターズ好きなのよ」
 明日夢も引かない。
「子供の頃からね」
「まあそれはわかるけれどな」
 明日夢は急に優しい言葉を出した。
「俺もな」
「阪神ファンだから?」
「阪神も長い間凄かったからな」
 野本は腕を組みながら遠い目になった。そこに何かを見ているのだった。
「もう巨人が相手で斉藤や桑田が出て来たらよ。もうそれだけでな」
「ああ、それな」
「はっきり覚えてるよ」
 男組は野本の言葉に忌々しげな顔になった。
「一点取れたらもう満足って位でよ」
「巨人相手もそれだったしヤクルト相手だともっとな」
「優勝した時なんか特にだったよな」
「そうそう」
 怒った顔になるクラスの中で春華と奈々瀬だけが明るい顔になっていた。
 
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