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ある晴れた日に

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18部分:もう飛ぶまいこの蝶々その一


もう飛ぶまいこの蝶々その一

                   もう飛ぶまいこの蝶々
「さてと、それじゃあ」
 ホームルームの時間だった。江夏先生は教壇の前で一枚の紙を見て生徒達に言っていた。
「これで決まりね。クラス委員は」
「加山君と矢追さんです」
 江夏先生の横にいる田淵先生が告げてきた。
「くじ引きの結果二人になりました」
「そういうことでいいわね」
「まあ別に」
「私はいいですけれど」
 大柄で髪を短く刈った太目の少年と眼鏡をかけて少し小柄で可愛らしい肌の白い女の子が先生達に応えていた。二人がそのクラス委員になった加山大作と矢追千佳である。
「けれど何で」
「くじ引きなんですか?こういう場合って」
「ああ、選挙はしないのようちの学校」
 江夏先生が二人だけでなく皆に言ってきた。
「だからくじ引きでこういうのは決めるのよ」
「何でですか?」
「そう言えば変わってるよな」
「何でだろ」
「決まってるでしょ。こういう時の選挙って」
 江夏先生は言う。
「休んでる人とか適当な人を皆で選んでならせるでしょ」
「まあ大抵は」
「そうなりますけれど」
「だからよ。だからこうしているのよ」
 こう皆に説明するのであった。
「くじ引きでね。他のクラス委員もよ」
「そうなんですか」
「そういえば私飼育委員になったわ」
「僕も」
 明日夢と桐生が自分が持っているくじを見てそれぞれ言う。各自当たった者もいれば当たって者もいる。それを見て言い合うのだった。
「そういうことよ。わかったかしら」
「全部運かよ」
「何かなあ」
「運も実力のうちよ」
 江夏先生の言葉は実にドライであった。
「それでどうするかも人生。わかったわね」
「どう転んでも上手くやれってことですか?」
「その通り。後は本人の努力次第」
 質問への返答もやはりドライな江夏先生であった。
「わかったわね。じゃあなった人はそれぞれ頑張ってね」
「はい」
「よりによって御前が美化委員かよ」
 野本が呆れて春華を見ていた。
「幾ら何でもそりゃないだろ」
「そういう御前は何なんだよ」
「俺?図書委員」
「はぁ!?」
 これには春華だけでなく皆が声をあげた。
「マジかよ」
「くじは嘘つかねえよ」
 こう言って皆にそのくじを見せるがその通りであった。
「ほらな、ちゃんと書いてるだろ」
「先生、こいつだけは代えて下さい」
「ついでに伊藤さんも」
 春華の名字である。誰もこの二人がそのくじの仕事に合っているとは思えなかったのだ。外見と行動での判断結果である。
「絶対に無理です」
「っていうか野本が本なんて読む筈がありません」
「マガジン読んでるよ」
 野本の反論はよりによってこんな有様であった。
「ふざけるなよ、今だって鞄の中にな」
「授業中に出したら即没収よ」
 今にも出さんばかりの彼に江夏先生が言う。
「言っておくけれど」
「うっ、きついなおい」
 先生の言葉には動きを止めざるを得ない野本であった。
「とにかくだよ。俺だって本はな」
「漫画以外は読むのかよ」
「新聞読んでるよ」
 今度の返答も随分なものであった。少なくとも皆の確信を払拭するようなものでは到底なかった。
 
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