FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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それぞれの拳
血の匂いが漂う荒野・・・その中心で睨み合う二人の男。
「やっと戦えるんだな、お前と」
「そうだね・・・君はこの日をずっと待ち望んでいたんだろ?」
危険な状況にも関わらず、二人の表情は緩んでいる。その表情の奥にある心の中は、両者には見えない。だが・・・
(君が何を考えているか、手に取るようにわかるよ。天海)
(俺にもわかるぞ・・・貴様の思考が)
彼らは目を見ただけで相手が何を考えているのかわかっていた。
(あと俺に残された関門は君だけ・・・この戦いが終われば・・・)
このあとのことを考えただけで笑いが止まらなくなる。ティオスにはこの後の世界のいく末が手に取るように見えている。
「俺がこの世界の神になる」
自身の目的の達成は目と鼻の先。対する天海の心も高まっていた。
「それで?お前の策は一体なんなんだ?」
ここはシリルの意識の中。天界からヨザイネによって彼の意識の中へと放り込まれたヴァッサボーネ。彼の突発的な問いに対し、シリルは何か策を見出だしたようだった。
それが一体どんな作戦なのか、ヴァッサボーネは問いかける。
「ヴァッサボーネはさぁ、今のままの俺でティオスに勝てると思う?」
突然の問いかけに困惑してしまう。彼のその質問の意図が全く読み取れないからだ。
「・・・普通に考えれば、勝てないだろうな」
ウソを言って励ますのは得策ではない。そう判断した彼は冷静に、見たままの事実を告げる。すると、シリルは顔を俯けた。
「いや!!だがーーー」
我が子の絶望の顔に何とか戦意を取り戻してもらおうと声をかけようと口を開いた・・・だが、彼のすぐに少年の表情の異変に気が付いた。
(シリル・・・笑っている?)
うつむけている顔からわずかに笑みが溢れているのだ。それはとても追い込まれ、敗北に・・・破滅に向かっている人間のそれではなかった。
「そう。今のままの俺では絶対にあいつには勝てない。それは俺もよくわかってるよ」
そう言って顔を上げたシリル。その顔を見てヴァッサボーネは目を大きく見開いた。
「シリル・・・お前・・・まさか・・・」
最愛の我が子の顔に浮かび上がっている暗黒の模様。それは彼の瞳にすら届こうとしていた。
「オオオオオ!!」
炎を纏いし拳で目の前の敵へと次々に技を繰り出すナツ。
「どこまで僕の邪魔をすれば気が済むんだい・・・」
ルーシィたちの助けによって息を吹き替えしたナツの怒濤の攻撃。それを受けているゼレフは負の感情を芽生えさせていた。
「みんなと笑って過ごせる日を取り戻すまでだぁ!!」
「それを僕が作ってやるんじゃないか!!」
ナツの怒濤の攻撃の合間を縫って体を切り裂くゼレフ。彼の鮮血が飛び散るが、怯むことなく敵を見据えている。
「違う!!お前は自分のことしか考えてねぇ!!お前のやろうとしてることは・・・この世界を否定することだ!!」
「世界に拒まれ続けた者の苦しみも知らずに・・・よくも・・・」
仲間がいたからこそ生き続けることができた弟と誰からも理解されず、絶望を味わい続けてきた兄。真逆の境遇を進んできた二人の相容れぬ感情。
「燃えろ!!俺の全て!!ギルドの力を炎に変えて・・・」
ギルドマークが光り、全身が炎に包まれるナツ。対するゼレフの拳には、漆黒の魔力が集まってくる。
「炎竜王の崩拳!!」
「暗黒爆炎陣!!」
ぶつかり合う二人の拳。両軍の大将対決は終焉を迎えようとしていた。
「あいつら・・・まさか・・・」
その頃、アクノロギアを仕留めるために動いていたエルザたちは地上に見える二人の男たちをクリスティーナから見つめていた。
「自分たちで潰し合おうというのか!?」
互いを見据えて目付きを変えている二人・・・どこからどう見ても戦いを始めようとしているようにしか見えない。
「彼らはアクノロギアを倒してしまうほどの力を持っている・・・この戦いの勝者を時の狭間に閉じ込めることができればそれがいいけど・・・」
「けど・・・どうしたんですか?アンナ先生」
アクノロギアという脅威が消えたとはいえ、目の前にはさらに強大な敵が存在している。ただ、アンナの考えた作戦にならってアクノロギアを倒すときと同様の戦法を取ればいい。
しかし、問題が一つ・・・
「時の狭間は・・・上空にあるの・・・」
ティオスも天海も人間・・・空を飛ぶことはできない。いや、ティオスはシリルの持っていた天使としての遺伝子もあるから空を飛ぶことはできるが・・・
「そもそも、時の狭間はティオスが支配しているはずでは・・・」
「え!?」
エクリプスと時の狭間を繋げることによりこの時代へと残り続けているティオス。彼を時の狭間に閉じ込められるとは到底思えない。むしろ彼がパワーアップする要因になりかねないのである。
「そんな・・・一体どうすれば・・・」
どちらが勝ってももうあの作戦は使えない。アンナは懸命に思考を張り巡らせるが、そんなに簡単に次の策が出てくるはずがない。
「・・・!!」
全身が静かに次に取るべき行動を思案していた時、外を見ていたカミューニの顔色が変わった。
「おい!!すぐにここから離れろ!!」
響き渡る青年の声。その声のトーンからただ事ではないことはすぐにわかった。
「どうした?カミューニ」
「どうもこうもーーー」
彼が言葉を言い切るより早く、大きな震動がクリスティーナを襲う。あまりの衝撃に中にいるものたちは皆転倒していた。
「なんだ!?」
「何が起こってる!!」
細かく押し寄せる震動に壁に掴まりながら状況を理解しようと必死な面々。彼らに伝わるように、大声でカミューニが叫んだ。
「どうもこうもねぇ!!あいつらの戦う力は尋常じゃねぇんだ!!本気でぶつかり合ったらこの距離でも残骸が飛んでくるんだよ!!」
その通りだった。戦闘を開始したティオスと天海。彼の力は壮絶だった。魔力を極限まで高めて攻撃を仕掛けるティオスと自らの強靭な肉体でそれに立ち向かう天海。
その衝撃により、地面は砕け、大地が揺れていた。
「一夜!!ここからすぐに全力で離れろ!!」
「メェーン!!任せたまえ!!」
すぐに操縦席に指示を出そうとした一夜。だが・・・
ドゴォン
クリスティーナに瓦礫がぶつかった衝撃で、大きな穴が空いてしまった。
「なっ・・・」
「しまっ・・・」
壁が壊れたことにより内部に空気が入り乱れる。それにより、バランスを崩してしまっていた魔導士の中でも、壁を掴むなどをできていなかったものたちが外に放り出されてしまった。
「カミュ!!」
「ジェラール!!」
「一夜さん!!」
「ウェンディ!!」
ピクッ
落下した四人の名前が叫ばれた時、一人の少年の体が揺れた。しかし、誰もそれには気付かない。
「俺たちはいい!!早く離れて体勢を整えろ!!」
「だが・・・」
落下していくカミューニはウェンディを抱き抱えながら落下の衝撃に備えるべく体勢を整える。
「ヒビキ!!クリスティーナの指示は任せた!!私も必ず合流する!!」
「先生!!」
力の香りを吸い込み体を巨大化させる一夜。彼は筋肉により着地のダメージに耐える方法らしい。
「エルザ!!カミューニたちは俺があとで連れていく!!だから気にせず逃げろ!!」
ジェラールはそう言って持っていたマントを広げて落下速度を下げていく。残されたものたちはその姿を見届けることしかできなかった。
「こうして君と向き合うのは何年ぶりだろう」
静かな声で問いかけるティオス。その表情は少しずつではあるが、引き締まっているようだった。
「4年ぶりくらい・・・だったか」
「そうか・・・もうそんなに立つのか」
まるで久々に再会した友と会話するかのように穏やかな様子の二人。しかし、実際にはどちらの思考も歪みに歪みまくっていた。
「寂しいね、君ともう会えないと思うと」
「あぁ・・・そうだな」
その刹那、二人の姿は一瞬で見えなくなる。消えたのではない。双方のスピードが速すぎて、動き出しが全く見えなかったのだ。
ドゴォン
彼らが互いを見据えて立っていた場所のちょうど中心部・・・そこから周囲の地面が割れるほどの大きな震動が起きる。
「へぇ・・・」
「相変わらずのパワーだな」
ぶつかり合った二人の拳。世界を絶望に陥れる悪才同士の戦いの幕が切って落とされた。
後書き
いかがだったでしょうか。
おおまかな構想は決まってるのに細かなところが決まってなくて進まねぇ・・・
小出しに行きます。小出しに。
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