ロックマンX~Vermilion Warrior~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第110話:God of Destruction
エックスがディノレックスと戦っている最中であった。
ハンターベースで再び施設内に響き渡るけたたましいアラーム音。
「な…何だ?」
ワクチンプログラムをイレイズしたイレギュラーにインストールさせようとしていたライフセーバーは足を止めて目を見開く。
放送にてシグナスの怒号にも似た声が轟いたのはその次の瞬間であった。
『緊急事態だ!!奴が…ダイナモが再び姿を現した!!ルイン!!スペースポートに向かい、至急応戦を!!』
「了解!!」
放送を聞くや否やルインの行動は迅速だった。
前回のエニグマの時の失敗を繰り返さない為にハンターベース周辺の警戒を強化していた事が功を奏し、しかも丁度ルインとゼロもいるという幸運にも恵まれたと言えるだろう。
しかしゼロはペガシオンとの戦いのダメージが癒えていないので、ダイナモとはルインだけの戦闘になる。
スペースコロニー・ユーラシア破壊のための正真正銘最後の希望であるスペースシャトルがあるハンターベースのスペースポートに向かうと既に待ち受けていたルインを前にダイナモは目を見開いた。
「君が噂に名高いルインちゃんか。また遊びに来たよ。暇だったでしょ?」
「暇じゃないよ。誰かさん達のせいでのんびり休んでいる暇も無いくらいなんだから」
ルインはダイナモを睨みながらZXバスターにエネルギーを集束させようとする。
「はっきり言っていい加減しつこいよ君。一体君は何がしたいの?」
「だから君達の邪魔をするだけ、君らもシグマの旦那も正直理解に苦しむよ。何時も何時もマジな面しちゃってさ。ちょっとは肩の力抜いて生きてみたらどうなんだい?」
「君達がこんなことを仕出かしてくれているせいで肩の力を抜く暇すらないんだよここで仕留めてやる。覚悟して…この作戦…絶対に成功させる。これまで多くの仲間の犠牲の果てに生かされてきたんだ。私達に諦めるなんて選択肢は決して許されないんだから」
凛とした表情で告げるルインは金髪を靡かせながらバスターを向ける。
夕陽の光によって照らされたその表情はダイナモが感嘆するくらいに美しいと感じた。
「ヒュ~、想像以上のレベルだ。でも頑固過ぎるのがマイナス点だな、美人なのに勿体無い。笑えば可愛いと思うんだけど…仕方ないな、親切心で教えてやるよ。肩の力の抜き方とこの世界で誰よりも冷静でまともなのはこのダイナモ様だってことをね!!」
笑止の沙汰だ。
ゲーム感覚でシグマに加担し大量虐殺を目論んだこのイレギュラーの何処がまともだと言うのか。
しかもそれを自身で言うように冷静にこなしているとしたら、まさしくこの男こそイレギュラーの中のイレギュラーでシグマよりもずっとイカれた殺人鬼だ。
人類抹殺、ハンター抹殺と言うしっかりとした目的を持っているシグマの方がまだ潔いと思える。
「よく言うね。大した理想も信念もない癖にただ他人を見下して悦に入っているだけの小者の癖にさ」
繰り出されたダイナモの拳を片手で受け止めたルインが微笑む。
「軽いね。この程度のパンチなんかドラグーンの全力に全然及ばないよ」
そして次の刹那、ルインの蹴りがダイナモの側頭部を勢い良く蹴り飛ばす。
「ぐあぁぁっっ!!」
フェンスに強かに叩き付けられ呻くダイナモ。
「クッ…やるじゃないか。こりゃあ想像以上だよ…ぐあっ!!?」
体勢を建て直そうとしたダイナモの頬にルインの拳がめり込んでいく。
「残念だけどそんな時間を与えてやるつもりなんかないし、こっちも時間がないの。ここのシグマウィルスはかなりの量のようだし…もしかしたら私の…ルインとしての最後の戦いを見せてやる!!」
ダイナモに笑みを向けると、表情を引き締めて徐々にルインのアーマーが朱から紅に色と形状が変化していく。
「なっ…ま…まさか君は…」
「でやあっ!アースクラッシュ!!」
アースクラッシュの拳がダイナモの鳩尾に炸裂し、あまりの威力に背後のフェンスを突き破り、ダイナモの体が宙を舞う。
「がはぁっっ!!」
床に激しく叩き付けられるダイナモだが、どうにか踏み止まることが出来た。
「逃がさないよ!!」
「っ!!」
ダッシュからの跳躍で一瞬の間にダイナモの背後に回り込むルイン。
事前に機動力強化のパーツのハイジャンプを組み込んでいたのが良かったようだ。
ハイジャンプのおかげで普段なら届かない場所にも余裕で届いた。
「うおりゃあああ!!」
太股のホルスターからアルティメットセイバーを抜き、チャージしたセイバーを一閃させダイナモの胸部を斬り裂こうとするルインだが。
「甘い、燕返し!!」
跳躍してかわしながらセイバーを振り下ろしたルインの背中を目掛け、ダイナモはDブレードで一閃する。
「っ!!」
咄嗟にホルスターからもう1本のセイバーを抜いてブレードを防ぐ。
「パワーだけじゃ俺には勝てないよ!!アースゲイザー!!」
ブレードを受け止めていたためにアースゲイザーの閃光をまともに浴びるルイン。
「舐めるな…!!オーバードライブ!!」
紅いオーラを身に纏うとセイバーの柄をバスターショットに取り付けるとそれをダイナモに向ける。
「ダブルチャージウェーブ!!」
ダブルチャージショットと衝撃波の連続攻撃をまともに受けるダイナモだが、吹き飛ばされながらもダイナモはバスターを構えてショットを放ち、ルインに直撃させることで追撃を阻害する。
「っ…やるね」
「ハァッ…ハァッ…そっちこそやるじゃないかルインちゃん。だが…些か自信過剰が過ぎたな!!」
間髪入れずにダイナモはブレードでルインに斬り掛かるが、ルインはセイバーで難なく受け止めた。
「甘いよ!!」
アルティメットセイバーとDブレード…光学系の斬撃武器として最高峰の性能を誇る光刃がぶつかり合う。
紫と紅の刃がぶつかり合う度に放電現象が起き、互いに全身に強大なエネルギーを纏いつつ猛烈な勢いで刃を交えるルインとダイナモ。
我流ながらダイナモの剣技は極めて完成度が高く、最強のアーマーであるOXアーマーを纏うルインと渡り合いながら些かも後れを取らない。
「これならどうだ!?裂光覇!!」
「甘いっ、アースゲイザー!!」
そして互いにエネルギーを収束した渾身の拳をぶつけ合うが、互いの威力を相殺しただけに終わり、相手に致命打を与える事は出来ない。
「どりゃああああ!!」
炎を纏わせながらの跳躍斬りがダイナモに炸裂し、空中からバスターショットを向けるとダブルチャージショットを繰り出す。
「Dブレード!!」
ダイナモはブレードを投擲し、投擲されたブレードはルインのダブルチャージショットを粉砕しながらルインに迫る。
「はああああっ!!」
それに対してルインはチャージセイバーを繰り出し、高速回転しながら迫るブレードを弾く。
壁に足を付け、そのまま足に力を入れて弾丸のようにダイナモとの距離を一気に詰めてダイナモの頬にチャージナックルを喰らわせる。
「っっ…どりゃあ!!」
チャージナックルの威力に一瞬、意識が無くなりそうになったが、ダイナモはブレードを一閃し、ルインの胸に深い傷を負わせる。
「ぐっ…!!」
「ふう…やっぱり強いわ…マジだもんな?でもここまでさ」
「ふふふ、それはどうかな?」
ダイナモがバスターをルインに向けた瞬間である。
ルインが微笑んだ瞬間に周囲のシグマウィルスがルインの体内に入り込むとたちまち、傷が修復された。
「お…おいおい。何だよそれ…再生能力なんて反則だろ……?」
傷だけではなくエネルギーもフルの状態になっていくルインを見てダイナモの笑みが引き攣っていく。
「シグマが地上にばら撒いたシグマウィルスのおかげ。このアーマーを纏っている時はどれだけ傷を負おうと、エネルギーを消耗しようとすぐに元通り。おまけにパワーアップ付きだよ。このアーマー限定とは言えこんな化け物みたいな能力が身についちゃった。さあ、これでもまだ君は笑えるのかな?傭兵君?」
笑みを浮かべながらウィルスを吸収して自己再生するルイン。
その笑みは自嘲しているようにダイナモには見えた。
当然、ルインとダイナモの戦いはシグナス達にも見られている。
「なるほど、これがルインに起きたと言うシグマウィルスによるパワーアップ現象か」
「興味深いねえ、ウィルスを吸収してパワーアップするレプリロイドなんてそう簡単に見られるものじゃないだろうし」
「そんな呑気なことを言ってる場合じゃないでしょう!?」
「そうです!!早くルインを止めないと!!」
このままシグマウィルスを吸収して戦い続ければルインはどうなるのか分からない。
下手したらイレギュラー化する可能性もあるのだ。
メンテナンス中にも関わらずそれを中断してアイリスの隣に立っていたゼロも今のルインを見て手を震わせていた。
まるで自分の正体を眼前に突きつけられたかのような恐怖が体を蝕む。
「その必要はあるまい」
司令室に入ってきたのはライフセーバーであり、全員の視線がライフセーバーに集中する。
「………どういう…ことだ…」
ゼロの問いにライフセーバーは振り返ると冷笑を浮かべて口を開く。
今までシグナスやゲイトに相手にされなかったことの鬱憤もあったのか、自分の予想が正しかったことが証明されたためか、普段のライフセーバーより滑舌であった。
「あのような危険なイレギュラーはこのままダイナモと戦わせて弱らせた所をハンター達に一斉攻撃をさせて処分するのが得策でしょう。」
「ライフセーバー、いくら何でもその発言は聞き逃せないわね。ルインがイレギュラーですって!?」
親友をイレギュラー呼ばわりされたことにエイリアは怒りを露にするが、その姿にライフセーバーは嘲笑した。
「正真正銘のイレギュラーではないか。あのような得体の知れない怪物など処分して当然だろう。これでルインの危険性と同時にゼロの危険性も証明されたわけですな総監」
「なっ!?」
「ゼロが危険ってどういうことですか!?」
「知れたこと、ゼロもまたシグマウィルスを吸収することでルイン同様、パワーアップするのだ。今まで何度もルインとゼロの処分を申告しても聞いてもらえなかったが…ここまで決定的な証拠があっては言い逃れ出来まいイレギュラー?」
「っ…」
イレギュラーと呼ばれたことにゼロは否定したくとも言葉が出ない。
「ゼロはイレギュラーではありません!!」
「てめえら、いい加減にしやがれ!ネチネチネチネチとしつけえんだよ!!」
「イレギュラーの妹とジャンク屋風情が何を言うか!イレギュラー関係者と部外者である貴様らには関係のないことだ!!総監、今すぐベース内にいるハンター達に命令を!!状況を見てあのイレギュラー共を処分するのです!!」
「な…っ!?」
「んだと!?こらあ!!」
ライフセーバーの言葉に憤慨し、掴みかかろうとするルナをゼロが制した。
「おい、何で止めるんだよゼロ!!」
「こいつを殴ってみろ。お前までイレギュラー扱いだ」
それだけ言うとルインとダイナモの戦いを見守るゼロ。
「しばらく様子を見るぞゲイト」
「了解」
「何を悠長なことを!!早くハンター達にイレギュラーの処分を…」
「少し黙っててくれないかな?正直耳障りなんだよね」
「なっ…」
ゲイトの絶対零度をも下回る冷たさがこもった視線と声にライフセーバーは絶句する。
「いやはや、こりゃもう笑うしかないね。良いよ。ゲームってのは一見して勝てそうに無いボスキャラを倒すことに面白みがあるってもんだからね」
ダイナモがブレードを構えながらルインに突進するとルインもセイバーを構えて突進する。
「そりゃあ!!」
「てええぇい!!」
互いの刃が再びぶつかり合い、そのままダイナモは腕に力を入れてルインを弾き飛ばそうとするが出来ない。
いや、寧ろこちらが押されている。
「おりゃあああ!!」
そのままルインは咆哮を上げながら、力で強引にダイナモを弾き飛ばす。
「チッ、ウィルスを吸収する度にパワーアップするってのかい?こりゃ、早めに決めないといくら俺でもまずいかもな…」
持久戦に持ち込まれれば、ウィルス吸収により再生&回復とパワーアップするという出鱈目な能力で確実にやられるだろう。
「アース…」
「甘いよ傭兵君!!」
アースゲイザーを繰り出そうとした瞬間、低空ダッシュジャンプで一気に距離を詰められる。
「はあああああ…乱舞!!!」
セイバーによる連続斬りと龍炎刃を組み合わせた連携技をダイナモに叩き込む。
「ぐあっ!!?くっ…アースゲイザー!!」
ダメージに構わず、エネルギーを収束させた拳を直接ルインの腹部に叩き込む。
「うぐっ!!」
腹部に叩き込まれたあまりの威力に思わず膝を着いた。
「これで終わりだ!!」
ブレードで四肢を両断してアースゲイザーのエネルギーを込めた拳を顔面に受け、意識を失うのと同時にルインの頭部が弾け飛んだ。
「あ…」
「ル…イン…」
頭部を失って力なく倒れるルインの体を見てエイリアとアイリスは顔を青ざめた。
「ふん…これで良い。これで労せずしてルインと言う危険極まりない悪質なイレギュラーをこの世から葬り去る事が出来たのだ。ふははは…」
そんな彼女達の背後でライフセーバーが笑う。
アイリスは立ち上がると涙を浮かべながら手にカーネルの形見であるサーベルを握り締め、ライフセーバーに突き付けた。
「なっ!?」
「それはカーネルの…何故アイリスが…」
別にアイリスが形見として持っていることは不思議ではない。
アイリスはカーネルの妹なのだし、彼のサーベルを持っていても可笑しいことではない。
疑問なのは高出力を誇るカーネルのサーベルを出力させただけでなく片手で保持していることである。
「最近は物騒だからね、オペレーター達にも自衛のための戦闘能力を与えるという試みが成されているのさ。ただ、オペレーター達は最初から戦闘型としてエックス達と違って色々作り直さないといけないからアイリスにはその実験台になってもらっていたのさ。身近なゼロの戦闘データを基にしてね」
「何!?」
「因みに誤解しないように。これはアイリスの意思でもある。詳しいことは彼女に聞くといい…彼女の言葉が終わったらね」
「き、貴様…何の真似だ!!」
「いい加減黙ってくださいライフセーバー…私の親友をこれ以上侮辱するようなら、私はイレギュラー認定されようとあなたを斬ります!!」
「イレギュラーはイレギュラーに違いあるまい!!あのまま生き残ったところでいつイレギュラーとしての本性を出すか分かったものではないわ!!」
「黙りなさい!!あなたなんかに何が分かるの…彼女がどれだけの思いで今まで戦ってきたのかなんて知りもしない癖に勝手なことを言わないで!!」
「アイリス、止めろ。流石にそれ以上は見過ごせん…私の目の前で仲間をこれ以上失わせないでくれ……」
彼女の肩に手を置いて制するシグナス。
アイリスは唇を噛み締めながら元の位置に戻る。
「ライフセーバー、口を慎め。これ以上の発言は許さんぞ」
「総監!!」
「聞こえなかったのかね?私もこう見えても元はレプリフォースの軍人。お前の口を永久に閉ざすなど容易に出来るのだが?」
シグナスから発せられる殺気はゼロ達からすれば大したものではないが、ライフセーバーを黙らせる威力はあった。
「やれやれ…可愛い顔してとんでもない奴だったな…さあて、お次はルナちゃんかな?またあの能力を見れれ…ば…?」
ダイナモは足を何かに掴まれたような感覚を覚えた。
ふと、足元に目を遣ると、切断されたルインの右手がダイナモの足を掴んでいた。
『ふふふ…』
「なっ!?」
『勝手に終わらせないでよ…』
頭部を失った胴体が右腕と接合し、更に残りの両断された四肢も接合、頭部が凄まじい勢いで再生していく。
「ば、化け物かあんたは…!?」
「私が…化け物?………そう、かもねえ…ク、ククク…ハーッハッハッハッハ!!!」
大量のシグマウィルスを吸収して狂ったように笑うルインにダイナモの背に冷たい何かが走る。
ダイナモが注意深く見ていれば、彼女の瞳の色がいつもの翡翠ではなく血のような紅になっていたのに気づけたかもしれない。
「じょ…冗談じゃない……無茶苦茶だ。メモリー吹っ飛ばしても復活する再生能力に加えて回復&パワーアップ能力なんてチートとかそんなレベルじゃないよこれ…。こっちもマジで戦ってるって言うのに全然勝てる気がしないよ…」
「ふはははは!!…どうしたのかなあ…?さっきまでの君のムカつく余裕が消えてるんだけどお!!?」
ほぼチャージ無しでチャージセイバーを繰り出すルインにダイナモは跳躍してかわし、ショットをルインに当てるが、直ぐさま再生してしまう。
「ククク…その程度の攻撃で今の私が倒せると思ってるの……?だとしたら間抜けだね君は…」
「正真正銘の化け物…いや、悪魔か…正直俺から見ても悪魔にしか見えないね…(逃げなきゃ…こんな化け物を相手にしてたら命がいくつあっても足りないよ本当に)」
下手をしたらシグマ以上の怪物である今のルインをこれ以上相手にするのは無謀だ。
ダイナモはそう決断すると簡易転送装置を利用してその場を去ろうとするが、携帯端末をルインがΩナックルで奪うと同時に握り潰す。
「逃がしはしない。ここで確実に仕留めてあげるよ」
妖艶な笑みを浮かべてダイナモにセイバーを向けるルイン。
「チッ…勝つには再生出来ないほど粉微塵にするしかないわけか」
セイバーとブレードがぶつかり合う。
出力ではほぼ互角だが、最早ダイナモでも防ぐのがやっとなくらいルインはウィルスを喰らい、パワーアップしていた。
「くっ…やべえ…ウィルスでパワーアップするなんて反則過ぎだろ…」
「砕け散れ…アースクラッシュ!!」
繰り出されるアースクラッシュ。
今まで放たれたアースクラッシュとは隔絶とした破壊力を誇っていた。
あの衝撃波をまともに受ければ言葉通りダイナモは砕け散るだろう。
「燕返し!!」
片手にもう1本のブレードを取り出し一気にルインに対して横薙ぎする。
「ぐあっっ!!」
丁度アースクラッシュ発動後の硬直を狙っての必殺の一撃に呆気なく横一文字に真っ二つとなるルイン。
胴体が真っ二つ、おまけに動力炉まで斬り裂かれてしまっては普通のレプリロイドであればこれで終わっているだろうが、今のルインはレプリロイドの物差しで計れる存在ではない。
「ふふふ…今のは少し驚いたよ…」
真っ二つになった体がウィルスによって即座に接合する。
「真っ二つにしても駄目なのかよ…」
「その程度の力で私を倒せると思っているのかな?今の不死身の私にねえ…」
「全く…これじゃあどっちがイレギュラーなのか分から無くなってきたね……」
再びぶつかり合う両者。
ダイナモはこれでは埒があかないと判断し、一気にケリをつけるべく疾走した。
「(頭を吹っ飛ばしてアースゲイザーで木っ端微塵にしてやる!!)」
一気に斬り上げ、ルインのセイバーを弾き飛ばす。
「くっ!!?」
「とどめ!!」
ダイナモがルインをもう一度真っ二つにしようとブレードを振るおうとした瞬間、ルインはニヤリと笑うと手刀を構えると凄まじいスピードでダイナモの懐に入り、ダイナモの右腕を切断した。
「っ…ぐうぅ…!!」
痛みに顔を顰めながら膝をつくダイナモにルインは手に付着した疑似血液を舐めとりながらますます笑みを深くしながらダイナモに歩み寄る。
「ふふふ、形勢逆転だね傭兵君?」
そしてダイナモが右腕をルインに奪われてからは一方的であった。
ルインに腕をもがれた状態で一方的に痛め付けられるダイナモ。
「がふっっ!!」
息も絶え絶えに倒れ伏すダイナモを心底楽しそうに眺めながらルインは馬乗りになってダイナモの首を締め上げる。
「ぐっ…ぐああああああああっっ!!」
「……………っ!!!!」
周囲に響き渡るは苦痛に絶叫するダイナモの悲鳴。
そしてルインは表情から笑みが消え、目から大粒の涙を流していた。
「苦しいだろ…?痛いだろ…?だけどお前はシグマと手を組んで沢山のレプリロイド達を狂わせた。お前が受けた何倍もの苦しみを…罪もないレプリロイド達に与えたんだ…お前は絶対に許さない…!私は…私はみんなにイレギュラーと呼ばれても、蔑まれても、攻撃されたっていい!!私は…エックスもソニアもエイリア達も…この世界も…絶対に…守るっ!!!」
それを見たアイリス達は確信した。
ルインの自我はまだ死んでいないことを、彼女もイレギュラーの自分と戦い続けているのだということを。
ページ上へ戻る