ある晴れた日に
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178部分:輝けダイアモンドその十ニ
輝けダイアモンドその十ニ
「それならね」
「あれっ、見るのかよ」
「うちの学校とこの学園って近いじゃない」
「ああ」
これはもう言うまでもなかった。だから二人も今こうして歩いてここまで来たのである。つまりは歩いてすぐに来られる距離なのである。
「この学園から出たり入ったりするのは結構見るわよ」
「そうなのか?」
「ひょっとしてあれ?」
未晴はここで左手を指差してきた。
「あのサイドカーのこと?」
「んっ!?」
正道はその言葉を聞いて未晴が指差したその左手に顔を向けた。見ればそこには確かにサイドカーが停まっていた。黒と銀のカラーリングがやたらに目立つ。
「あれのことかしら」
「ああ、あれだよ」
正道も未晴の言葉を受けて頷く。
「あのサイドカーだよ。間違いないぜ」
「あのサイドカーだったら結構見るわよ」
未晴はまた言うのだった。
「ここの周りでね」
「そうだったのかよ」
「サイドカーってやっぱり数が少ないし」
ハーレーダビットソンやスポーツカーと同じく趣味のものである。だからいざ見るとなるとかなり限られているものなのである。これは確かだった。
「それにあのカラーリングでしょ」
「目立つよな」
「サイドカー自体がかなり目立つものだし」
未晴はサイドカー自体も目立つと言った。確かにそうである。
「だからね。ついつい」
「それでなんだよ」
これについては正道も同じであった。
「あのサイドカー目立つよな」
「ええ」
「あれが喫茶店の前で停まっててな」
「それで目立つのね」
「そういうことだよ。けれどあのサイドカー」
正道はそのサイドカーをまじまじと見ながらまた言うのだった。
「この学園の人のみたいだな」
「そうみたいね。学生さんかしら」
「多分そうじゃねえのか?」
彼は考える顔でまた述べた。
「やっぱりな」
「何かわかるの?」
「わかるっていうかあのサイドカーに乗ってる人な」
正道は言う。
「その店の娘さんと付き合ってるらしいんだよ」
「ふうん、そうなの」
「詳しいことはわからないぜ」
このことは前置きするのだった。
「それでもな。娘さんここの大学に通っててな」
「何か縁ね」
「縁っていうかな。そのせいであのサイドカーだってな」
「そのお店に停まってるのね」
「そういうことになるよな」
こう未晴に話すのだった。
「あのサイドカーの持ち主の人にとっても行きつけの店なんだよ」
「世界って案外狭いのね」
「っていうかここで見るとは思わなかったぜ」
またここでサイドカーを見る正道だった。
「まさかな」
「だから。世界って」
「狭いってか」
「そう思うわ」
未晴は言うのだった。
「広いようでね」
「かもな。じゃあ竹林もひょっとして」
ふと思いもした。
「その店知ってるかもな」
「喫茶店は好きよ」
自分でも言うのだった。
「実際ね」
「じゃあ知っててもおかしくないな」
「そうかもね。駅前も時々行くし」
「どうするかな」
正道はあらためて考える顔になった。
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