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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第109話:Volcanic Inferno

火山地帯の安全ルートの解析が終わるまでハンターベースで待機していたエックスにエネルギータンクを回収して戻ってきたルナが話しかけてきた。

「よう、ご苦労さんエックス。あんたはディノレックスのとこに行くんだろ?あそこはマグマの流れが酷いから一番の危険地帯だ。ハンターベースには俺やゼロやルインもいるから安心して行きなよ」

「ああ、ありがとうルナ。君には随分助けられた。君がいなければコロニー落下までの時間稼ぎすら出来なかったかもしれない」

「まあ、本音を言えばエニグマの時点でコロニーをぶっ壊してやりたかったんだがな……ホタルニクス爺さんの犠牲を無駄にしねえためにもこのスペースシャトル特攻作戦は必ず成功させてやるぜ」

拳を握り締めて表情を険しくするルナにエックスは申し訳なさそうに口を開く。

「君には本当に世話になった。エニグマのこともそうだけどダイナモのことも…ホタルニクス博士のことも…君には辛い思いをさせた。そしてスペースシャトルによる特攻作戦のためのパーツ集めまで…」

「……気にすんなよ。爺さんのことであんたが暗い顔してどうすんだよ」

「ああ、すまない。コロニーのことといい、シグマウィルス…そして犠牲になったレプリロイド…たった1日で色んなことが起こりすぎて…」

「まあ、あんたの悩む気持ちは分からなくは無いけどな。とにかくしっかりしろよエックス。お前はこのウィルスまみれの現状でもまともに動ける貴重なレプリロイドなんだからよ(まあ、ライフセーバーとかの政府の犬は俺やエックス達を怪しんでるようだけどな)」

時々、自分やエックス達に降り注ぐ懐疑の視線は恐らく政府から送られてきたレプリロイドからだ。

政府直属のレプリロイドのためかエリート意識が高い彼らからすれば怪しさ満点の自分達は信用に値しないと言うことか。

「(まあいいさ、正直奴らも他のハンター職員から嫌われてるみてえだし…奴らがハンターベースを追い出されるのも時間の問題かもな)」

ゲイトは当然としてハンター達からすれば政府側のレプリロイドはエリート意識が高いためそりが合わないのか、対立が起きているのは部外者故に内部事情をあまり知らないルナでも分かる。

そしてこれはルナも知らないが、OXアーマー発動後のルインの異変を知って、ライフセーバーはルインの危険性をシグナス達に訴えたが、曖昧な返事を返すか嘲笑されて一蹴されるだけ。

エックス達の留守中にもライフセーバーが同僚達と共にその危険性をシグナスに訴えたのは再三どころではない。

シグナスは曖昧な返事を返し、エックス達のメンテナンスを担当するゲイトはまともに取り合おうとしない。

最低でもゼロとルインをこのまま放置していれば、何れシグマ以上の脅威となる可能性とて十二分に考えられるのにと言うのにそれがライフセーバーには歯痒くてならないのだろう。

そしてイレギュラーとなり得る者達と今後も同列に扱われる事になるなど到底受け入れられる話ではないのだろうが…。

「(だけど今はそこに触れる段階じゃない。現時点での最優先事項はシャトル作戦だ。今は例えイレギュラーの力を借りてでも、コロニーの落下阻止が最大の課題。地球が滅んだらプライドも何もねえだろうによ。下手したらハンターの業務執行妨害で追い出されるだろうことも分からないのか?)」

「すまない弱音を吐いて…ルインもゼロもアイリスもシグナス達も…君も頑張っているのに…」

「あ?いや、気にすんなよ。弱音を吐いてもらえるってことはそれなりに信頼されてると思っていいんだよな?弱音を吐ける相手がいるってのは大切なことだぜ?でもしっかりしろよリーダーさん」

思考に専念していたためか、反応が遅れたルナだが、笑顔でエックスの背中を叩きながら朗らかに言う。

「リーダー…か…君から見れば俺はそう見えるのか?」

「は?」

「俺より優れたハンターは沢山いるんだ。ゼロやルインとか…時に迷う俺に皆の上に立つ資格があるのか?」

「ん~、あまり難しいことは分かんねえけどな。まあ、ぶっちゃけそういうのは自分じゃ分かんねえよな。エックスもそうだけど、今となっちゃあ俺もルインもゼロ達も旧型のレプリロイドだからな。やっぱり俺達みたいな旧型は新型には能力的に敵わないのかもしれねえな。俺達にあるのは長年培ってきた経験と意地なのかもな。自分より後に生まれたレプリロイドに負けてたまるかって言うな。」

「意地か…」

「まあ、それが普通のレプリロイドならな。」

「え?」

「俺にもあるんだよ。普通のレプリロイドにはない“成長”する能力が、戦えば戦う程、知識を蓄えようとすればするほど自分の糧になる。だから俺は普通のレプリロイド程その危機感みたいなのは感じない。もし高性能な奴が現れてもそいつ以上に成長すればいいだけだからな。俺達もその能力のおかげで今を生きていられる。その点に関しては創造主様に感謝だな」

「…………」

「まあ、大いに悩みたまえ。人間は悩んで成長するらしいしな、エックス……悩み苦しむことは絶対に間違いじゃねえ。きっとそれもお前の力になるはずだからな」

「そうだな……ありがとうルナ」

「いいってことよ。気をつけてな」

ルナに見送られ、エックスはディノレックスがいる火山地帯に向かう。

そしてエイリアのナビに従って比較的安全なルートを辿り、現地に辿り着くと、灼熱の大地の中を基地を探し求めて彷徨ようこととなる。

灼熱のマグマと切り立った断崖と近付く者一切を寄せ付けない火炎地獄。

それよりも今一番厄介なのはシグマウィルスでイレギュラー化したレプリフォース軍だろう。

ライデンを駆りながらエックスに向かって来る。

「くっ…スピアチャージショット!!」

ファルコンアーマーを纏ってエックスが貫通力の高いスピアチャージショットを放つとライデンの堅牢な装甲を容易く貫いた。

ファルコンアーマーは機動力を特化させたが為に、主武装であるバスターの出力自体は通常時と大差がない。

おまけに機動力にエネルギーを割きすぎたのか特殊武器のチャージが出来ないため、単純な攻撃性能は歴代の強化アーマーの中でも下に位置するだろう。

ただし、そのバスターのエネルギーをより凝縮、一点集束させる事でライデンの堅牢な装甲すら貫通する凄まじい貫通力を誇るのだ。

攻撃範囲こそ狭いが点に於ける威力については、あのプラズマチャージショットをも凌駕するだろう。

「やはりここにいる兵士もイレギュラー化しているか…しかしディノレックス…こんな所に武器倉庫を造るとはどうかしているな」

フリームーブを使って全身にエネルギーフィールドを纏いつつ、ライドアーマー部隊に向かっていくエックス。

ファルコンアーマーの機動力を最大限に解放すると目の前の兵士の眼前へと移動するエックス。

「ずあっ!!」

兵士の顔面をビームスピアで貫くエックス。

彼はその兵士からライデンを奪取すると自らもそれに乗り込み、コンソールパネルを叩くとモニターで、ついさっきまでこのライデンを駆っていた兵士にとっての友軍の位置座標を即座に把握する。

「奴らの位置座標は…あそこか!ファルコンアーマーの機動力から逃れられると思うな!!」

たった今倒された味方を囮にして付近に潜伏しているのであろう、岩陰に5機ほどの反応が見える。

イレギュラー化しても、心身に叩き込んだことは消えないのか、他のイレギュラーとは違い、統率が取れている。

「すまないが、コロニー落下まで時間がない。目の前に敵が現れたなら…撃ち払うまでだ!!」

ライデンを駆り、標的となる兵士の前に躍り出るエックス。

「プラズマチャージショット!!」

ライデンから降り立ちアーマーをファルコンアーマーからフォースアーマーへと換装するとエックスは至近距離での必殺のプラズマチャージショットを撃ち放つ。

凄まじい攻撃力と規模を誇るプラズマチャージショットに巻き込まれ、次々に爆散していくライドアーマー部隊。

ホバリング機能で如何なる悪路をも迅速に走行できるライデンも、エックスのファルコンアーマーの機動力とフォースアーマーの火力を前にしては敵うはずもない。

巧みに分散しエックスから逃れようとするイレギュラー達だが、最初に倒されたライデンのデータから大よその座標を掴まれているため次々に居場所を看破され、フォースアーマーとの換装を絡めたエックスの圧倒的な力の前に為す術も無く破壊されていくのみだ。

「スピアショットウェーブ!!」

周囲に無数の貫通弾を発生させるギガアタック・スピアショットウェーブで残りのライドアーマー部隊を殲滅した。

「…シグマめ……」

シグマウィルスに感染したがために狂ってしまった彼らを悲しげに見遣りながら先に進もうとするが、ふと視線を横にずらすと、見慣れたカプセルがあった。

「ライト博士…」

『エックス…ここでお前に与えるのはガイアアーマーのアームパーツのプログラムじゃ。このアームパーツはガイアアーマー搭載の高出力ジェネレーターを利用したガイアショットを撃ち出すためのものじゃ。ガイアショットは射程こそ短いが敵のエネルギー弾を破壊し、破壊力に優れておるのが特徴じゃ。更に他のアームパーツよりもバスターのチャージが遥かに短いのも特徴じゃ。』

要はプラズマチャージショットともスピアチャージショットとも違った特性を持つ高出力バスターだろう。

『ルインが使っていたFXアーマーを元に改良を加えているために初期のガイアアーマーよりもパワーが増しているため、エネルギーを纏った拳を相手に叩き込むことで相手の防御を無視して吹き飛ばすことが出来るガイアインパクトが使えるようになる。』

「分かりました…パーツファイルを受け取ります…」

『エックスよ…例えどれ程の絶望に苛まれようと決して諦めてはいかん。ルインとゼロ達と共にこの状況を乗り越えるのじゃ』

「はい…」

パーツファイルを受け取り、ハンターベースに転送するとディノレックスの元に向かう。

そしてハンターベースではエックスによって最後のパーツとなるガイアアーマーのアームパーツのファイルが転送され、エイリアの手で急ピッチでプログラムを解析をしていた。

「…………」

「おい、ゼロ?」

メンテナンスルームではレプリエアフォース本部から帰ってきてゲイトのメンテナンスを受けているゼロにルナが首を傾げた。

何だかゼロの様子がおかしいと気付いたから。

「…なあ」

「ん?」

「もし俺が…」

イレギュラー化したら…。

「いや、何でもない」

「そうかい?」

即座に首を振り、何でもないというゼロにルナは疑問符を浮かべながらも頷くとエイリアがメンテナンスルームに入ってきた。

「ルナ、悪いんだけど、アーマープログラムの組み立てをお願い出来るかしら?」

「おう、任せとけ」

「おや、何なら僕がしても構わないよ?」

「結構です!!」

アルティメットアーマーの件からかゲイトをキッと睨むエイリア。

それを見たゲイトが鼻で笑った。

「ふっ、まだアルティメットアーマーのことを妬んでるのかい?エックスも大変だね、こんな嫉妬深いエイリアが相手の1人とは」

「何ですってーーーっ!!?」

「ああ、もう…ここがメンテナンスルームだって忘れてねえかなこいつら…」

エイリアとゲイトの子供のような口喧嘩に呆れるしかないルナであった。

「(シグマウィルス…今までずっと戦ってきた…あらゆるレプリロイドをイレギュラー化する最強のコンピュータウィルス。何故だ…何故ウィルスダメージを受けない?逆にパワーが漲る感覚さえ覚える…俺の身体はどうなってるんだ!!まさか…)」

ゲイト達の喧騒を気にせず、ゼロは少しずつ自分の体の異変に気付き始めていた。

そしてハンターベースの屋上ではウィルスで汚された空を黙って見上げているルインの姿があった。

そして火山地帯の最奥にある武器倉庫の前でエックスはディノレックスと対峙していた。

「バーン・ディノレックス……」

「何をしに来た!こんな所まで…。」

「お前が隠し持っている高出力のブースターロケットが欲しい。ここが秘密の武器倉庫になっているのは…調べがついている。今地上がどうなっているか分かっているはずだ。大人しく渡すんだ!!」

「あーはいはい、渡しますよ…って…そんな奴いないのも分かっているよな?大体こんな時にブースターロケットなんざ手に入れてどうする?まさか、シャトルに搭載させてユーラシアにぶつける気か?ギャハハハハッ!!もしそうだとしたら電子頭脳がイレギュラー以上にイカれてんじゃねえのかイレギュラーハンターの新総監となったシグナスの野郎は!!」

「何だと!?」

仲間を侮辱されたことでエックスの表情が怒りで歪んだ。

「そんな作戦を考える時点で電子頭脳がイカれたとしか思えねえよ!!そんな事で今更あの大質量コロニーを食い止められるわけねえだろ。どれだけシャトルをチューニングしようがな!!追い詰められたせいで元レプリフォースの癖にそんなことまで分からなくなっちまうとは笑い過ぎて腹痛えぜ。まあ、ブースターロケットが欲しいなら何時ものように戦って奪い取ってみろよ。俺様に勝てたらの話だがな。クククッ…さあ、戦ってスッキリしようぜ!何時ものようにな!!」

「くそ…」

「グランドファイア!!」

ディノレックスの放った巨大な火炎球がエックスを襲う。

エックスはブレードを振るい、火炎球を斬り裂くとチャージを終えたバスターを構えた。

「スピアチャージショット!!」

間髪入れずにスピアチャージショットをディノレックスの肩に当てる。

頑強なはずのディノレックスのアーマーすら容易く貫くスピアチャージショットの貫通力には流石のディノレックスも顔を顰めた。

「チッ…バーンタックル!!」

「プラズマチャージショット!!」

強化パーツのハイパーチャージにより、チャージ時間が通常の半分でフルチャージショットを放てるようになったエックスはあまり間を置かずに連続でプラズマチャージショットを放つ。

「調子に乗ってんじゃねえ!!」

プラズマチャージショットを弾きながら炎を纏った体当たりをエックスに喰らわせるディノレックス。

「ぐあっ!!」

エックスは吹き飛びながらも直ぐさま体勢を整えてファルコンアーマーに換装し、スピアとブレードを構えて突進する。

「はあああああ!!」

スピアとブレードを連携させ、強烈なソニックブームを繰り出すが、ディノレックスはその巨体に似合わぬ速さでそれを回避する。

そして口から灼熱の火炎を吐き、床を火の海にする。

エックスは咄嗟にフリームーブで回避し、そして炎が消えるのと同時に着地するとそれを狙っていたかのように一気にディノレックスは駆け抜けるとエックスの右肩に噛み付いた。

「ぐっ!!」

激痛に顔を顰めながらも自由な左腕でブレードを振るって、何度もディノレックスに斬り付けるが、ディノレックスは全く離れようとしない。

「この…!!スピアショットウェーブ!!」

このままでは右腕を奪われると判断し、エックスは全身にエネルギーを纏わせ、再び無数の貫通弾を発生させた。

「ぐはぁっっ!!?」

周囲を覆う膨大な貫通弾には流石のディノレックスも堪えたと見え、ディノレックスの身体に無数の亀裂が入り、漸くディノレックスはエックスから身を離す。

そんなディノレックスにエックスはフォースアーマーに換装するとチャージしたバスターを向ける。

「プラズマチャージショット!!」

スピアショットウェーブを受け、亀裂が入った胸部に向けてとどめのプラズマチャージショットを放った。

いくらディノレックスでもそんなボロボロの状態でプラズマチャージショットを受ければ…。

「ちっくしょおおぉぉぉ!!!」

プラズマチャージショットをまともに受けたディノレックスは爆散した。

「ふう…」

ディノレックスを倒して安堵の息を吐くエックスだが、大変なのは寧ろここからだろう。

何しろ残り少ない時間で目当てのブースターロケットを武器倉庫の中を探して見つけ出さなくてはならないのだから。

「ルナなら分かるかな…?」

エックスはメカについてはあまり詳しくないため、どれがブースターロケットなのか分からない。

武器やそれに関する知識に置いては彼女の右に出る者はいないため、取り敢えずルナと通信を繋いでブースターロケットの特徴を尋ねることにしたエックスであった。 
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