| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ヒュアデスの銀狼

作者:蜜柑ブタ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SS4  オオカミが知る感情

 
前書き
カップリングは、オリ(カズ)×カンナです。 

 

 結果から言えば、かずみの強奪は、失敗に終わった。
 カンナが正体を隠して依頼した、プレイアデス聖団に恨みを持つ魔法少女ユウリが、驚異的なドジっ子で、かずみが入ったトランクを、偶然にも同じ種類のトランクを持った者とぶつかって入れ替わってしまうという事故が起こった。
 しかも、接触相手は、イーブルナッツによって魔女もどきになった女警官によって爆弾魔に仕立て上げられようとしていた男で、トランクの中身は時限爆弾だったというオチだ。
 爆弾入りのトランクを突き返し、かずみと交換させようとしたが、結局プレイアデス聖団のカオルと海香に阻止され失敗に終わる。
 さらに、その後、魔女もどきになっていた女警官がかずみと接触し、魔法少女として覚醒させてしまった。
 しかし、かずみのソレは、かつてのミチルという魔法少女のソレだ。
 魔女もどきと交戦するかずみに、カオルと海香が援護に入り、魔女もどきはイーブルナッツから解放され人間に戻った。

「イーブルナッツ…取られた。」
「予定通りだよ。」
 遠くのビルの上から、魔獣の力で強化された視覚で様子を見ていたカズの見てるモノを、座っているカズの後ろに背中合わせで座っているカンナがコネクトで認識しながらなんてことないと言った。
「魔女もどきは、しょせんは人間。それにイーブルナッツじゃ、浄化はできないし。アイツらにたっぷりと魔法を使わせて消耗させることが目的だからね。なにせ、アイツら、自分のソウルジェムの状態に気づいてないし。」
「かずみ…、強い。」
「そうだね。あの破戒の魔法は、厄介。さすが合成魔法少女って言ったところかな。」
「…ソウルジェムが、グリーフシードに似てる。」
「それは…、カズと同じマルフィカ・ファレス(魔女の肉詰め)だからだね。」
「オレは、かずみになれなかった。魔法少女にもなれなかった。」
「その代わり、もっとすごい魔獣の力があるじゃない。」
 カンナが振り向き、カズの背中に抱きついた。
「もし。」
「ん?」
「もし…、かずみがオレ達を否定したら?」
「その時は……、かずみが選んだこの世界を盾にする。」
「…できるかな?」
「できる。やるの。」
 カズは、首を捻ってカンナの方に顔を向けた。
「失敗したら?」
「カズならできる。」

 二人が会話していることは。
 カズの、“強制進化”についてのことだ。

 プレイアデス聖団がレイトウコと呼んでいる、他の魔法少女とソウルジェムを封印して補完している場所がある。
 最終的にそこを強奪し、大量のグリーフシードを得る。
 それをコネクトでカズと繋ぎ合わせ、変異させ、進化を促すのだ。
 計算上は、ワルプルギスの夜をも越える強大な魔獣になれるはずであるが……。

 それは、同時に……カズ自身の体が進化に耐えきれず自己崩壊を起こす可能性も孕んでいた。

 カズは、グリーフシードを食べることで強くなれる。
 だが、同時にグリーフシードがため込む絶望(?)を、全身に痛みと苦しみとして味わう。
 それが、魔女の“味”だということはなんとなく分かっていたが、単品のグリーフシードでも相当に苦しいのだ。一度に大量のグリーフシードを取り込めばどうなるかなど、火を見るより明らかだ。
 だがそれでもやるのだ。やらなければならないのだ。そのために、今日まで魔女を食べて耐えることを覚えてきたはずだと、カズは自分自身に言い聞かせる。

 すべては、カンナのために!

「カズ…。」
「カンナ…、オレは、やる。ヒュアデスが幸せになれる世界のために。」
「…私のオオカミさん。」
 カンナが、チュッとカズのおでこにキスを落とした。
「あなたが、アダムで、私がイヴで……なーんてね。」
「っ…。」
「あれ? 照れてる? そんな反応も出来るんだー。」
 カンナがクスクスと笑った。
 カズは、自分の顔を押さえ、赤面していることを知った。

 この感情は…なんだろう?

 っと、自問自答したが、答えは得られなかった。



 
 

 
後書き
カズは、カンナがすべて。
だけど、カンナに抱く感情の正体をまだ知らない。
カンナの方も、カズに抱く感情を濁してる。(?) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧