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ある晴れた日に

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146部分:妙なる調和その十八


妙なる調和その十八

「おっ、今度は御前かよ」
「来たのかよ」
「楽しくやってるって聞いてな」
 正道は店に入りながら皆に応えるのだった。その背にはギターケースがある。
「それで来たんだけれどな」
「誰に聞いたの?それ」
「竹林だよ」
 こう明日夢の問いに返す。返しながらさらに店の中に入る。
「あいつにな。聞いたんだよ」
「未晴に?」
「会ったの」
「そうさ、駅前でな」
 今度は五人に対して言葉を返した。その間に皆が座っているその巨大なテーブルの空いている席の一つに座るのだった。丁度竹山の横である。
「委員長にも会ったけれどな」
「委員長にもなの」
「委員長は図書館に行ってそれであいつは」
「自分の家になのね」
「そう聞いたぜ」
 笑って皆に述べる。その間にギターをケースから出してきていた。
「で、皆ここに集まってるって聞いてな。飲みに来たんだよ」
「それはいいけれどさ」
「悪いけれど」
「何かあるのかよ」
「もうないぜ」
 皆でこう正道に言うのだった。
「悪いけれどな」
「もうスパゲティはな」
「げっ、もう喰ったのかよ」
 ここで正道は気付いた。テーブルの真ん中にあるとてつもなく巨大な皿の上が本当に何もかも奇麗さっぱりなくなってしまっていることに。
「また早いな、おい」
「喰うのはな。皆な」
「早いから」
「ついでにその量も」
「佐々よお」
 正道は皆の言葉を聞きながら顔を顰めさせつつその皿を見ながらカウンターにいる佐々に対して問うのであった。
「一体何キロあったんだよ、スパゲティ」
「まずは一人あたり五〇〇グラムな」
「ああ」
 まずはそれなのであった。スーパー等で買うパスタで茹でればまずこれだけで満腹できるものだ。少食な人間ならば食べきれない。
「そっからそこに十キロはあったな」
「で、それが全部かよ」
「そうだ、全部だよ」
 返答はこうであった。
「喰ったよ、皆でな」
「おいおい、洒落になってねえぞ」
 話を聞き終えてあらためて唖然となる正道だった。
「それってな」
「まあ仕方ないじゃない」
「食べたものは残らない」
「そうそう」
 皆でその正道に対して言う。
「だから諦めなさいって」
「スパゲティはな」
「ちぇっ」
 皆の言葉にまずはふてくされた顔になるのだった。
「仕方ねえな。じゃあ何を頼もうかな」
「ほらよっ」
 ところがここでであった。彼の前にうず高く積み上げられたナポリタンが出て来たのだった。正道はそのナポリタンを見て声をあげるのだった。
「何だよ、これ」
「ほら、食えよ」
 そのナポリタンを出してきたのは佐々だった。青いエプロンを着けてそこにいた。
「御前の分だよ」
「ああ、悪いな」
「とりあえずうちには食えるもんは何でもあるからよ」
「何でもか」
「しかもたっぷりな」
 こうも言う佐々だった。
 
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