ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
3章 穏やかな日々
30話 立ち直り
前書き
どうも、白泉です!
いつの間にか前回の更新からこんな月日が…!申し訳ありません…!ただ、これからは速度を上げてバンバン頑張っていこうと思うので!楽しみにしていてくださると嬉しいです!
さてさて、今回はいよいよ完結編!どうなるんでしょうか。
では、早速どうぞ!
「久々にここまで重い戦闘やったね…」
「ああ…25層のボス戦を思い出したな」
なんとか3人でボスを倒すことに成功した。が、役割が全員アタッカーのため、あまりにも編成のバランスが悪く、少々てこずってしまった。
体と脳に残る重めの疲労感を感じつつ、リアは振り返り、キリトを見た。
必死にメニュー画面をスクロールしているであろう指は、驚く程震えていて、嫌でも彼の期待と不安が伝わってくる。
数秒後、キリトの手がぴたりと止まる。そして、キリトの手の中にふわりと、七色に光る、途方もなく美しい宝石が舞い降りた。
リアとツカサは、それを固唾をのんで見つめた。
「サチ…サチ…」
キリトのすがるような小さな声が、白銀の世界に静かに響き渡る。
キリトの指がその宝石をクリックした。2人が見守る中、キリトの瞳が、彼の前にあるだろうアイテムの説明欄を追って動く。だが…
「うぁ…あああああ…」
キリトの喉の奥から、獣のような咆哮が発せられ、キリトはその宝石を力いっぱい雪の上へたたきつけると、何度の何度も踏みにじった。
「っ、キリト!」
「キリト、落ち着け!」
流石にリアとツカサも黙ってみていられなくなり、暴れまわるキリトを押さえつける。
「くそっ…くそぉぉ‼‼」
リアが筋力値に物を言わせ、キリトの動きを封じる中、キリトはずっと叫んでいた。ツカサはキリトが実体化した宝石を拾い上げて、リアにも見えるように、説明画面を可視モードにする。
そこには見慣れたフォントと形態で説明文が書かれていた。
それを読み終わったリアの腕からは力が抜け、キリトの体がどさりと雪の上に滑り落ちる。
あまりにも彼にとって残酷な仕打ちだった。その宝石の効果は、死亡して“10秒以内”のプレイヤーをよみがえらせることができるというもの。
ツカサも悔しそうにうつむき、リアも唇をかみしめた。
一筋の希望を与え、どん底に叩き落す。
こんなことなら、いっそのことこんなアイテムないほうがましだった。デマだったほうがよかった。
「ごめん、リア姉、ツカサ…」
わずかに聞こえたキリトの声に、そちらを振り返った途端、「転移、ミュージエン」という言葉とともにキリトの体は消え去っていった。
―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
「ごめんね、残していくようなことして」
「いんや、あいつはリアとツカサだからこそ一緒に行ったんだよ。俺達がついてこうとしてたら、きっと俺たちを攻撃してまで一人で行こうとしてたさ」
クラインと先ほど別れた場所まで戻ってみると、そこには疲弊したクラインと風林火山のメンバーがいた。クラインだけがつかれているところを見るに、恐らく整竜連合のトップと一騎打ちをしたのだろう。
「それで、アイテムはどうだったんだよ?」
「…死んだ人には使えなかった。死んで10秒以内に使用すれば、確かに生き返るらしいけど…」
ツカサの手に握られた、眩い宝石は、今はその眩さが忌々しく思えてしまう。
「これはクラインにやるよ。…だれか目の前で死んだ仲間に使ってやってくれ」
ツカサはそう言うと、クラインにその宝石を放った。
「とと、って、俺が持ってるよりもお前たちが持ってるほうがいいんじゃないか?」
危なっかしくキャッチしたクラインは、怪訝そうな顔を浮かべる。だが、リアは首を振った。
「いいんだよ。私たちには必要ない。…ああ、あと、ボスからドロップしたアイテム、全部あげるよ」
リアとツカサはそういうなり、トレードウィンドウを開き、クラインが何か言う前にすべてクラインに送ってしまう。
「お、おいおい、気前良すぎやしねぇか?」
「今回のお礼。受け取ってよ」
クラインは、リアとツカサが言い出したら聞かないたちだということを知ってか、あっさり引き下がった。
「…わぁったよ。ありがたくもらっとくわ。…それで、キリトのやつは?」
「…結構まずいと思う。今から追いかけてみるよ」
「ああ、よろしく頼む。今のあいつを救えるのは、お前たち二人だけだろうからな」
リアとツカサは、ゆっくりとうなずくと、転移結晶を取り出し、キリトの後を追いかけた。
―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
「キリト…?」
ミュージエンの街のはずれにある小さな宿屋。穴場のため、キリトが現在拠点にしている場所だ。どの部屋を使用しているのかも知っているため、部屋をノックしてリアが呼びかけてみるが、応答はない。
リアとツカサは顔を見合わせる。ツカサが試しにドアノブに手をかけると…
ガチャリ
という音をたて、あっさり開いた。恐らく、パーティーメンバー開錠可の設定になっていたのだろう。ボス戦からまだパーティーを解除していなかった。
ドアがゆっくり開かれると、簡素なベッドに、一人の少年がベッドに腰を掛け、頭を抱えていた。
「キリト…」
キリトの体からにじみ出る絶望のオーラに、リアでさえもキリトに近づくのを躊躇する。
「…なあ、リア姉、俺はただの人殺しだ…俺のせいであいつらを殺して、結局サチすらも救えなくて…俺は…俺は、どうすればいい…?俺に生きている価値なんて、あるのか…?」
キリトの濡れた声によって話される話の重さに、リアは、一瞬なんといっていいのか、返答に困り詰まる。
そんな中、ヒュッと風がリアの髪を揺らした。目の前を横切る、なびく黒髪。次の瞬間、どさっという音が部屋の中に響く。リアは驚きで目を見開いた。
そこには、キリトを組み敷き、彼の首筋に槍の切っ先を向けるツカサの姿がある。
「死にたければ今ここで、俺が殺してやるよ」
氷の刃のような言葉は、あまりにも予想を上回っていて、リアもキリトも固まっていた。
「別にお前の命はお前のものだ、死んでその罪を償うというのなら、その通りにすればいい」
無機質な漆黒のツカサの瞳に、わずかに揺れる。どこか遠い目のようにも見える。
「だがな、命で償うっていうのは、綺麗ごとであって、自分に対する自己満足でしかないんだ。そして…単なる逃げだ」
「…逃げ…?」
「ああ…死んだ先は誰にもわからない。だが、重荷を背負ったこの状況から逃れるために死ぬんだろう?違うか?」
「……」
キリトはギリッと歯を食いしばった。顎の線が盛り上がる。
「罪を償うつもりなのなら、生きろ。すべての重荷を背負って、誰かのために生きろ。それが一番の罪滅ぼしだろ」
リアは、ただ、キリトの瞳から雫が零れ落ちるのを見ていることしかできなかった。
ツカサは、ゆっくりと立ち上がると、槍を背に戻した。
ツカサとリアの視線が交じり合う。リアは、ツカサから目をそらした。
シンとした沈黙の中で、キリトの手が動いたのを、リアは横目でとらえた。メッセージでも来たのか。だが、それは一瞬止まり、そして再び動き出す。
上半身を起こしたキリトの手の中には、いつの間にか青い結晶が握られていた。
「記録、結晶…?」
リアが呟く。そう、あれは音声や写真を記録できる記録結晶だった。いったいなぜこのタイミングで…?キリトは震える手でそれをタップした。
それからあふれ出したのは、いかにも優しそうで、おっとりした少女の声だった。
恐らくキリトが生き返らせようとした少女の物だろう。キリトへ向けてのメッセージを淡々としゃべる声だけが部屋を支配していた。
キリトの嗚咽が漏れ始め、彼女が赤鼻のトナカイを歌い始めたころ、リアとツカサはそっとその場を後にした。リアには確信があった。もう、彼は大丈夫だろうと。
―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
「ねえ、ツカサ君」
「何?」
ミュージエンの街を歩きながら、リアは小さく言った。
「キリトに言ったこと、ツカサ君が自分に言い聞かせてることだったり、する?」
ツカサは歩きつつ、視線をリアに向けた。そして、その口から発せられた言葉は…
「そうだとしたら、何?」
夜空に溶け込みそうな漆黒の瞳。しかし、それはどこまでも、空っぽだった。
「…ううん、なんでもない」
リアは小さく首を振る。その右手がぎゅっと握られたことを知る者は誰もいない…。
後書き
はい、いかがでしたか?キリトさん、何とか立ち直ってよかったですねぇ。
そして、最後の2人。若干ツカサが闇落ちしてるみたいな雰囲気でしたが…(-_-;)きちんとフラグ回収できるように頑張ります…!
そして、今回のことは回想の中の話でしたが、あえて現実には戻らないで終わらせてしまいました。そこは読者様の想像ってことで…。
なんてことはさておき、話は本編に戻ります!クラディールのとこですが、どこでどうわれらが主人公、リアとツカサを絡ませるかまだ未定なので、もしかしたらすっ飛ばしてるかもですが…!
次回もお楽しみに!
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