ある晴れた日に
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136部分:妙なる調和その八
妙なる調和その八
「あの人もいいよな」
「藤井フミヤも」
「同じだな」
未晴の言葉にいよいよ我が意を得たりといった感じになるのだった。
「俺もフミヤさん好きだよ」
「そういえばチェッカーズの曲結構ギターでやるわよね」
「後期の曲はあんまり、だけれどな」
少しだけ言葉を濁らせていた。
「ブルームーンストーンとかはそれでも好きだけれどな。好きなのは夜明けのブレスまでかな」
「夜明けのブレスね」
「あれいい曲だよな」
「そうね。あの曲もいいわよね」
何時しか二人共笑顔になっていた。そうしてその笑顔で音楽について語り合っていた。それは何故か実に自然な風景になっていたのだった。
「チェッカーズのバラードでね」
「チェッカーズはバラードだけじゃねえけれどな」
「それでもバラードが凄くて」
「そうそう」
満面の笑顔で未晴の言葉に頷く。
「それは今だって同じだしな」
「フミヤのバラードっていうわよね」
「最初の曲だってそうだったしな」
「トゥルーラブね」
この曲が出て来た。藤井フミヤのソロでのはじめての曲である。
「あれよね」
「あれで完全にはまったんだよ」
正道は笑顔で語る。
「フミヤさんにな」
「チェッカーズもそうなのね」
「まあな」
年齢的にそうなるのであった。彼等の年齢ではチェッカーズのことはリアルでは知らないのだ。これは仕方のないことであった。チェッカーズももう古い話なのだ。
「けれど聴いてみても歌ってみてもな」
「いいのね」
「ポップスもロックもバラードもな」
チェッカーズについての話だ。
「いい感じだしな」
「そうよね。音橋君もチェッカーズからのフミヤさんが好きなのね」
「解散したのは惜しいよな」
今度はこう言う正道だった。
「あのグループの音楽が今聴けないのはな」
「そうね。もうクロベエさんがいないから」
「ああ」
クロベエという名前が出て表情を暗くさせた二人だった。クロベエというのは仇名で本名右派徳永善也という。チェッカーズのドラムだった。
「あの音楽は永遠にないんだよ」
「残念な話だよ」
天を仰いでの正道の言葉だった。
「全くな」
「そうね。けれど正道君がギターでフミヤさん歌えるのは嬉しいわ」
「そうか」
「ええ、それはね」
表情を明るいものに戻して言う未晴だった。
「やっぱり。好きだから」
「こっちだって好きだからな」
ギターを手にして述べる。
「だから奏でるんだよ」
「好きこそっていうのは本当ね」
「嫌いな曲は聴きもしないさ」
正道はまた言う。
「全然な。これは絶対だぜ」
「好みにはこだわるのね」
「音楽ってそういうものだろ?」
また未晴に顔を向けての言葉だった。
「そうじゃないのか?」
「そうね。それはね」
また正道の言葉に頷く未晴だった。
「その通りね」
「じゃあトゥルーラブにするか?」
早速ギターのコードに手をやっていた。
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