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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第94話:Death Σ

全員が合流し、近衛兵がいなくなったことで格段と進みやすくなったエックス達は迎撃してくるメカニロイド達を破壊しながら先に進む。

しかしシグマの近くに来ているのに守りが薄すぎると感じたエックス達だが、間もなく理由を理解した。

「侵入者ヲ、発見シマシタ。排除行動に、移リマス」

エックス達が向かう先から見覚えのある8体のレプリロイドが現れる。

かつては誰もが、絶大な実力を誇った一部のイレギュラーとレプリフォースの猛者達。

ウェブ・スパイダス

サイバー・クジャッカー

ストーム・フクロウル

マグマード・ドラグーン

ジェット・スティングレン

スプリット・マシュラーム

フロスト・キバトドス

スラッシュ・ビストレオ

「シグマの常套手段の…ボスのデッドコピーか…」

「ご丁寧にあの“バグ”プログラムまで再現してやがる。どうやらあれもシグマの仕業だったか」

デッドコピーは知性を省き、単純に姿と性能だけを再現したものであり、基本的にはメカニロイドに用いられる技術だ。

だがここにいるのは、コピーとはいえ一流の戦闘用レプリロイドなのでその実力は、決して侮れないが…。

「侵入者排除…」

「笑わせないでよ」

エネルギーを拳に纏わせる武器であるΩナックルのチャージナックルがスパイダスのコピーの顔面を粉砕した。

本物のスパイダスならこの程度の攻撃は容易くかわし、それだけでなく反撃しただろう。

「姿だけを似せた物に今更負けるものか」

そしてエックスもまたXブレードでマシュラームのコピーを両断した。

「完全再現も出来ていない奴など話にならん」

ゼロもトリプルロッドでクジャッカーのコピーを貫く。

クジャッカーのみ、プログラムのために、空間を自在に移動出来る能力をデッドコピーで再現は出来なかったようだ。

「落鳳波!!」

此方に向かってきたフクロウルをカウンターの要領で落鳳波を叩き込む。

「龍炎刃!!」

ルインは怨敵であるキバトドスを龍炎刃で両断してアースクラッシュで粉砕。

「フロストタワー!!」

スティングレンをフロストタワーで氷漬けにしてプラズマチャージショットで消し去り…。

「ダブルチャージウェーブ!!」

ダブルチャージショットと衝撃波の連続攻撃でビストレオを爆砕。

「ダブルサイクロン!!」

最後のドラグーンにはチャージダブルサイクロンで切り刻み、最後にはストックチャージショットで撃破した。

レプリロイドの皮を被った、メカニロイド以下のデッドコピー達は瞬く間に消え去ってしまった。

「意外に呆気ないな」

「所詮は皮だけ似せたガラクタだよ」

「よし、残るはシグマだ。行こう」

「うん」

「ああ」

強い意志を瞳に宿しながらエックスとルイン、ゼロは足を動かした。

「さあ…クライマックスの始まりだ。世界滅亡へのカウントダウンのな…」

モニターに映し出される地球を前にシグマは漆黒のローブの奥で愉快そうに笑みを浮かべていた。

エックス達は知らないが、デスフラワーは少しずつ少しずつ、地球に向かっていた。

シグマは自身の本体であるシグマウィルスでデスフラワーを掌握し、デスシード砲よりも確実に人類抹殺を行える方法を用いた。

無論、そんな巨悪の思惑を阻止せんと立ちはだかる者達はおり、扉が開きシグマの背後に待ち望んでいた来訪者達が姿を現したのはその時だった。

「フフフ…レプリフォースとイレギュラーハンターを潰し合わせるこの計画は実に上手く行ったよ。ダブルやディザイア、ドラグーンを始め、我が手先達もよく働いてくれた…」

姿を現したエックスとルイン、ゼロを前に嘲るように笑いながらシグマが口を開いた。

ルインとゼロは嫌悪感を露にし、エックスは圧倒的なエネルギー反応を示すシグマを前にしても怯むことなく、寧ろ挑発的に鼻を鳴らしてみせた。

「シグマ…あなたは絶対に許さないよ…死に損ないのくせに…」

「いい加減、貴様の顔も見飽きてきたところだ。ここで倒してやるぞ」

「ここまで来ると呆れの感情しか沸いて来ないな。まるでゴキブリ並みのしぶとさだ。何度倒されても蘇るお前には最早怒りを通り越して哀れみすら感じるよ。何せ蘇る度に地獄に送り返されるんだからな」

「ほざきおったなエックス。人類の飼い犬の分際で…。如何に貴様と言えど今の私に敵うはずもない。身の程を知るのは貴様らの方だ。人類を抹殺し、私は世界を統べる皇帝となるのだ」

「皇帝だって?笑わせるな。第一、皇帝とは人徳を持ち、それ相応の立場の者が名乗るべき称号だ。貴様のような死期を見失った奴に相応しいわけがないだろう」

世界滅亡のカウントダウンが始まる中、数々の悲劇を生んだこの戦争の元凶を前に、エックス達の最後の戦いがまさに始まらんとしていた。

「さあエックス…ルイン…ゼロよ、地獄へと旅立つ準備は出来たかね?」

漆黒のローブに巨大な鎌を持つその姿はまさに死神そのものだ。

見た目ばかりでなく、史上類を見ない世界規模の大戦を勃発させ計り知れない命を奪ったシグマを表すのに“死神”という呼称以上に当て嵌まるものは無いだろう。

「ふん、貴様こそ今から地獄に旅立つ準備は出来たか!?」

「あなたに利用されたみんなの無念を思い知れ!!」

「消えてなくなれシグマ!!」

ルインが先行して、エックスとゼロが続く。

「龍炎刃!!」

「落鳳波!!」

「プラズマチャージショット!!」

ルインの龍炎刃の業火がシグマを瞬時に包み込み、ゼロとエックスは高威力の攻撃で追撃を放つ。

「これで終わりと思うな!!」

「何!?」

マントが焼けたのみでシグマ本人は全くの無傷。

余裕の笑みを浮かべながらシグマは巨大なビームサイズを軽々と3人に向けて投擲してくる。

「かわせ!!」

3人はエアダッシュでビームサイズを回避した。

「小賢しい!!」

シグマが目からレーザーを放つが、エックスはホバリングで滞空し、ゼロは空円舞を駆使し、ルインはΩナックルの強化された腕力で天井のパイプを掴んでやり過ごす。

「当たれ!!」

レーザーが止んだ隙にチャージショットをシグマに喰らわせるルイン。

「チッ!!」

「シグマ!!」

ブレードを構えて斬り掛かるエックス。

シグマはビームサイズを巧みに使い、エックスの斬撃を防いでいく。

「それは私のΣブレードか?随分と懐かしい物を出してきたものだ。だが、それだけで調子に乗らないことだエックス!!」

その瞬間シグマの肩や脚などに奇抜な装飾品の様に装着されていた真紅のブーメランが、まるでそれぞれが意思を持っているかのように飛翔しエックス達に襲い掛かる。

「チッ!!」

ゼロはシールドを展開し、盾を高速回転させてブーメランを弾くが、ブーメランの性質上、不規則な軌道を描くために攻撃が防ぎにくく、いくらか受けてしまう。

「うっ!!」

「ぐあっ!!」

シグマの放ったブーメランに全身を斬り裂かれ呻き声を上げるエックスとルイン。

必死にブーメランを回避しつつ反撃の態勢を取ろうとする3人をシグマは嘲笑う。

「ぐっ!こんなもの!!」

その時、執念でブーメランの軌道をどうにか見極め振り切ったルインが拳にエネルギーを収束させ、構えた状態でシグマに挑みかかる。

「喰らえ!アースクラッシュ!!」

「ぐあっ!?」

アースクラッシュの拳を直接シグマに叩きつけた。

ルインの思わぬ反撃に狼狽しつつ悲鳴を上げるシグマだが、ルインの右腕に亀裂が入ってしまう。

今までの戦いで酷使し続けた影響がこの場で出てしまったのだ。

「エックス!!」

腕の痛みに構わず、ルインは声を張り上げる。

「ライトニングウェブ!!」

複数のライトニングウェブをシグマの足元に放ち、動きを拘束するエックス。

「シグマ…。パワーアップした私達3人を同時に相手取ってあなた1人で本気で勝てると踏んでるなら救いようのない大馬鹿だよ」

「な…何だと…?」

冷たく言い放つルインに鋭い視線を向けるシグマ。

「例え刺し違えてでも貴様だけは確実に葬ってやる。カーネルや貴様に運命を弄ばれた者達のためにもな!!」

バスターを抜いてシグマにショットを連射するゼロ。

同じ箇所に攻撃を受け続けた結果、シグマのボディに亀裂が入り始めた。

「ば…馬鹿め。如何にお前達と言えどその私に敵うはずがない。私に決して敗北など有り得ぬのだ!!」

「終わりだよ。今度こそな!砕け散れ!!ノヴァストライク!!」

ライトニングウェブで拘束されたシグマに渾身のノヴァストライクを繰り出すエックス。

まともに受けたシグマの体全体に更に亀裂が入り、そしてストックとブレードのチャージを同時に終えて追撃をかけた。

「ストックチャージショット!!」

亀裂に吸い込まれるようにストックチャージショットとチャージブレードが炸裂した。

「ま、まさか…この私が倒れるなど…!!この私に敵うレプリロイドなど…」

敗北を信じられないままシグマは大爆発を起こした。

ストックチャージショットとチャージブレードの連続攻撃は事実上ルインのダブルチャージウェーブの上位互換攻撃で耐えられるものではない。

安堵の溜め息を吐いた瞬間に床が崩れ、エックス達は下に落ちてしまうが、エックスがゼロとルインの腕を掴んでホバリングでゆっくりと下降して着地した。

「ありがとうエックス」

「助かったぞ」

「ああ、気をつけて2人共、今までのシグマのことを考えればこの程度で終わるはずが…。」

エックスが周囲を見遣ると、前方にビーム砲を装備したメカニロイドの頭部にあるシグマの顔が嘲笑を浮かべた。

「フハハハハッ!!どうだこのパワーは!!さっきまでの私やジェネラルなど比べものにならん。さあ、このまま宇宙の塵になるがいい!!あの世でお仲間達が待っているぞ!!」

「…っ!!」

凄まじいエネルギー反応にエックスは無意識にフォースアーマーをアルティメットアーマーに変化させた。

巨大メカニロイドは手に持ったビーム砲の照準をエックス達に合わせ、先制攻撃を仕掛けてくる。

「くっ!!」

「うあっ!!」

「ぐあっ!!」

その凄まじい出力の前に敢え無く吹っ飛ばされるエックス達だが、攻撃直後の硬直で動けないメカニロイドのシグマの顔目掛けてプラズマチャージショットとダブルチャージショット、チャージショットを喰らわせる。

「これがパワーアップしたと言うお前達の力か?随分と弱い攻撃だ!!攻撃とはこうするのだ!!」

ビームを放ち、床を吹き飛ばすシグマにエックス達は吹き飛ばされながらもバスターで攻撃するが…。

「ぐああああああああああっっ!!?」

「「エックス!?」」

エックスの全身を突き抜ける凄まじい電撃。

空中に目を向けると、シグマの顔を模した黄色いオブジェが浮かんでいる。

今度は青いオブジェが出現したかと思うと猛烈な吹雪が周囲に吹き荒れ、極低温の冷気が傷付いたエックス達の全身に容赦なく叩き付けられる。

「くそ!悪趣味なオブジェだ!!空円斬!!」

即座にゼロは高速回転斬りを繰り出してオブジェを破壊した。

「よし!!」

そしてダメージから立ち直ったエックスもプラズマチャージショットで黄色いオブジェを破壊し、攻撃を止めた。

「オブジェは破壊した!!出てこいシグマ!!」

「愚か者め…オブジェは私の意志で何度でも出現させられるのだ!!しかもそれだけではないぞ!!」

3人の目の前で床が歪み、せり上がっていく。

そして姿を現したのは巨大なシグマの顔であった。

その瞬間、瓦礫交じりの猛烈な突風が3人の周囲に吹き荒れ、エックスもルインも背後の壁に叩きつけられて散弾銃のように飛び交ってくる瓦礫に全身を打たれていった。

「どうだ!!この今までにない圧倒的なパワーは!!泣け!!喚け!!そして絶望の果てに死ぬがいい!!」

黄色いオブジェが電撃を、青いオブジェが冷気を、赤いオブジェが火炎をそれぞれ放ち容赦ない波状攻撃をエックス達に浴びせていく。

「ギガ…ブレードッ!!」

「裂光覇!!」

「落鳳波!!」

しかしエックスはブレードの最大出力の斬撃を飛ばし、ルインとゼロもそれぞれの大技でオブジェを破壊しつつ、床のシグマの顔に喰らわせた。

「ええい!!まだ諦めぬか!!」

「諦められるわけ…ないでしょ!!」

「この戦いで犠牲になった彼等のためにも負けられないんだ!!それに人類抹殺と言う邪悪な野望を掲げ、何度でも甦るお前を放置出来るほど、俺達はお人好しじゃない!!」

「フン、人間共にその力を利用され続けている愚か者共に何が分かる。我々レプリロイドはこの世界の優良種なのだ。劣悪種たる人間共を駆逐し我らレプリロイドが全てを支配する新世界の創造。それこそが…」

「「「クロスチャージショット!!!」」」

シグマの顔面に合体攻撃が炸裂する。

プラズマチャージショットの特性を引き継いでいるため、ノヴァストライクやギガブレード級の威力を誇りながらプラズマによる追加ダメージを与えていく。

「黙れ。お前の口上はもう聞き飽きた。」

「今すぐその耳障りな口を塞いであげるよ」

「減らず口を!!ならば今度こそ跡形も無く消滅させてくれるわ!!羽虫の分際で私に逆らうことの愚かさをその身に刻み付けてくれる!!」

「羽虫だと…?死期を見失った薄汚いゴキブリ風情が言ってくれるじゃないか。イレギュラーに堕ち、甦る度に荒唐無稽な理想を繰り返す今のお前の醜態は正直見てられんな」

エックス達は残ったエネルギーを解放し、シグマを睨み据える。

まずは突っ込むのはルインで、メカニロイドのシグマの顔面目掛けてバスターを向ける。

「消え去れ小娘!!」

「フリージングドラゴン!!」

ビーム砲をルインに向けるシグマだが、LXアーマーに換装すると、シグマのビーム砲の銃口を凍らせると行き場を失ったビーム砲が爆散した。

「ぬっ!?」

「お願い!!」

直ぐ様HXアーマーに換装すると、エアダッシュで即座に離脱するルインは自分の後ろのゼロに向かって叫ぶ。

「任せておけ。喰らえシグマ!!」

シールドを投擲し、強烈な一撃をシグマの顔面に喰らわせる。

「ぬうう!!」

「これで終わりだと思うな!!空円斬!!」

追撃の空中での回転斬りをシグマに喰らわせる。

床のシグマの顔が突風を起こそうとするが、ルインがそれを妨害する。

「でやああああ!!」

落下の勢いを利用して繰り出された左拳のチャージナックルによってシグマの顔は口を閉じた。

「任せたぞ」

「了解!!はああああ!!」

ブレードをチャージし、顔面にチャージブレードを喰らわせるエックス。

エックスの渾身の斬撃を顔面に浴びシグマが呻く。

「ぐっ…やはり我が前に立ちはだかるのは貴様かエックス!!」

「エックスだけじゃない。私とゼロだって何度でも立ちはだかってやる!!」

「それから最後は図体頼みってのも芸がないぜシグマ。まあ何時もの事だがなっ!!」

「毎回毎回やってるせいか最早パターン化してるしね」

ゼロとルインはセイバーで床のシグマに何度も斬撃を浴びせる。

2人同時の連続攻撃には耐えられず、あっという間に床のシグマは破壊されてしまった。

「ば、馬鹿な!!」

「プラズマチャージショット!!」

片方の自身を破壊され、動揺したシグマにプラズマチャージショットが炸裂した。

「うおおおお!!」

バスターをブレードに切り替えると、ブレードを何度もシグマに叩きつける。

度重なるダメージにシグマの顔面に罅が入り、メカニロイドのボディにも亀裂が入り始める。

「行くぞルイン!!今度こそ奴を葬る!!」

「OK、ゼロ!!」

ゼロとルインが跳躍し、セイバーで両肩を両断したことで、もうシグマに戦闘力は残されていない。

「エックス、ルイン!!行くぞ!!」

最後の一撃を繰り出すためにロッドを強く握り締めるゼロ。

「うん!!」

セイバーを限界までチャージするルイン。

「シグマ…貴様が自分の欲望のために戦うのなら…俺は…今の俺は…彼女の…アイリスのために戦う!!他の誰でもない彼女1人のためだけに!!消え去れ!!俺達の悪夢よ!!」

「これで終わりだよ。地獄でレプリフォースとディザイア達に詫びてくるんだね!!さようなら…私達の宿敵さん!!」

出力を限界まで引き出したロッドを投擲し、ルインもチャージしたセイバーを投擲した。

「これで終わりだシグマ!!」

アルティメットアーマーがエックスから分離して飛行形態に変形し、アーマーがノヴァストライクのエネルギーを纏い、シグマに突っ込んだ。

「ぐああああああああ!!?わ、私がまた奴らに敗れるとは…!!し、しかしこの兵器は我がウィルスで完全に掌握し、既に地球に向けて落下している…地球は終わりだ!!」

シグマの撃破を確認したルインは即座に司令室に戻るとOXアーマーを解除して司令室のコントロールパネルを操作しようとするが。

「駄目…やっぱり操作を受け付けない!!」

シグマは倒せたが、厄介な置き土産を置いていった。

「(このアーマーはもう使えないな)」

最後の一撃はアルティメットアーマーの出力を限界以上まで引き出したものだ。

その負担は絶大でアルティメットアーマーはフォースアーマーに戻ってはいたが、ベースとなるフォースアーマーには所々に亀裂が入り、もう使い物にならないくらい破損していた。

「デスフラワーの動力炉を破壊するしかないが、このまま向かっても間に合わんか…!?」

『わしに任せなさい。お前達はすぐに脱出するのじゃ』

ライト博士のカプセルが出現し、エックス達に脱出を促す。

「ライト博士!?」

『ルイン、正気に戻れたようじゃな。良かった…わしがサイバースペースを経由してデスフラワーの動力炉のコントロールにハッキングを仕掛けて動力炉を自爆させる。お前達は早く脱出するんじゃ』

「分かりました。デスフラワーに残っているレプリフォースの兵士達にも伝えなければ!!」

ライト博士の指示に従い、エックス達はデスフラワーのレプリフォース兵達に脱出を促しながら、自分達もデスフラワーか脱出した。

そしてエックス達がデスフラワーを脱出した後、レプリフォースが誇りし最終兵器たる死の華が存在していた地点を中心に、宇宙空間に巨大な閃光が広がっていった。

それを悲しげに見つめるルイン。

ゼロは壁に背を預けながら、宇宙を見つめる。

エックスはシャトルを自動操縦に切り替えるとゼロの元に向かう。

「これを」

「?」

エックスが差し出したDNAデータとメモリーチップに疑問符を浮かべるが、次に差し出したサーベルを見て、ゼロはDNAデータとメモリーチップの正体に気づいた。

「カーネルのDNAデータとメモリーチップか…」

カーネルのサーベルとDNAデータ、メモリーチップを受け取りながら、ゼロは悲しげに呟いた。

エックスはルインの元に向かうと、ディザイアのサーベルを差し出した。

「これ…!!」

「彼の使っていたサーベル。俺より君が持っていた方がいい。形見として持っていてくれないか?」

「うん…ごめん…少し1人にさせて…」

「分かった…」

ルインは奥へと引っ込み、エックスは操縦席に座って息を吐き、少しして奥からルインの押し殺したような泣き声が聞こえてきた。

エックスもゼロも悲しげにデスフラワーのあった方を見遣った。

心が…感情がイレギュラーと見做される行為に走る切っ掛けとなった今回の事件。

ならば心を持ちより人間に近い思考回路を持つレプリロイドとはイレギュラーと同義なのではないか。

エックスの心中をそんな不安が過ぎっていく。

「なあ、ゼロ…」

「…どうした?」

不意に声を掛けられて、やや驚いた様にゼロがエックスに目を向ける。

「もし…俺がイレギュラー化したら、君が処理してくれ」

エックスの言葉に驚愕するように目を見開いたゼロだが、その問い掛けには答えようともせずに憮然としたまま前方に目を向けた。

今のゼロにとっては残酷な願いだとはエックスにも自覚がある。

だがそれ以上に自身がイレギュラー化した場合の事を思うと、そう願わずにはいられない。

「約束だよ…ゼロ…」

ゼロに向かって言い放つエックス。

これをゼロが受け入れてくれるかどうかは分からないが、エックスとしてはこの約束だけは何が何でも譲れはしない。

何かの間違いで自分が暴走してしまったら、それを止められるのも…また止めて欲しいのもゼロ以外にありはしないのだ。

…戦いは終わった。

しかし、エックスの心を例えようのない不安がよぎる。

“イレギュラー”とは、一体何なのか?

…もしかしたら、自分自身もイレギュラーとなってしまうのか?

そしてゼロも蘇りつつある過去の記憶が自身の心に迷いを生じさせる。

…イレギュラーを許せないハンターとしての自分……。

“あいつ”を倒す定めを負った、本当の自分…。

そしてルインは部下の…そして自分を愛してくれた男を思いながら涙を流した…。

彼を救えなかった自身に憤りながら、サーベルを見つめた。

愛ゆえにイレギュラーとなった彼。

感情があるからイレギュラーとなることを本当の意味で気付かされたルインも自分がイレギュラーとなり、エックスや仲間を傷つけてしまうのではないかと恐怖を抱き始めた。

不吉な予感は現実となり、3人のハンターを運命の戦いへと導く。

そう遠くない未来で…。 
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