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ある晴れた日に

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129部分:妙なる調和その一


妙なる調和その一

                   妙なる調和
 キャンプが終わるともうゴールデンウィークだった。正道は駅前でストリートミュージシャンを気取っていた。ビニールをコンクリートの上に敷きそこに座ってそのうえでギターを奏でるのだった。目の前にはギターケースを開きお金を受け取るようにしている。楽譜も開いている。
 そうして歌う。何曲か歌っているとやがて。そこに見知った顔が通り掛ってきたのであった。
「あっ、音橋君」
「ああ、委員長かよ」
 それは千佳だった。彼女は私服で可愛らしいデザインの白いブラウスにピンクのひらひらとした短めのスカートという格好である。髪型等は学校にいる時と変わらない。鞄も地味でどちらかというと真面目なものであると言っていい、彼女らしい外見であった。その彼女が正道の前に現われたのである。
「何かここで会うなんてな」
「奇遇ね」
「奇遇?そうだな」
 自分に顔を向ける千佳に対して微笑んで言葉を返した。
「委員長がここで俺の歌を聴けるんだからな」
「そうじゃなくて」
 正道の冗談半分の言葉にも真面目に返す千佳だった。
「ここで会ったことがよ」
「何だ、そんなことかよ」
 こう言われて一気に面白くなさそうな顔になる正道だった。
「そんなの普通にあるだろ?」
「人と人が会うことって普通じゃないわよ」
「そうなのかよ」
「そうよ。やっぱりそこに何かあるじゃない」
 千佳の言葉ではこうである。
「そこにこそね」
「そんなものかね」
 千佳にこう言われてもわかっていない感じで首を捻る正道だった。
「そこに何かがかよ」
「そうよ。私はそう思うけれど」
「俺にとっちゃ。委員長は運がいいんだよ」
「運がいいの?私が」
「そうさ」
 千佳の顔を見上げて楽しそうに笑ってみせての言葉である。
「だってな。俺今新曲ができたんだぜ」
「えっ、また!?」
 新曲と聞いて思わずこう言ってしまった千佳だった。
「またなの」
「またかって。一曲できたばかりだぜ」
「だってこの前も新曲あったじゃない」
 こう正道に言うのだった。
「キャンプの時に」
「あれとはまた別の曲なんだよ」
 正道自身の言葉ではこうであった。
「またな」
「それとは別の曲だったの」
「そうさ。前にも言ったろ」
 楽譜と千佳の顔を交互に見ながら話す。
「俺はいつも何曲か作って考えてるんだよ」
「あっ、そうだったわね」
 千佳も言われてこの言葉を思い出す。
「音橋君って。いつも音楽のことを考えていて」
「そうさ。音楽は俺の命ってわけか」
 ここで楽しそうな顔を見せる。
「だからな。それでなんだよ」
「新曲なの」
「それで。聴いてみるかい?」
「お金。いるの?」
 千佳は怪訝な顔になって正道に尋ねた。
「ひょっとして。何か」
「ああ、これかよ」
 ギターケースの中の金を二人で見た。
「これはまああれなんだよ」
「あれって?」
「気が向いたら入れてくれってやつさ」
 こう述べる正道だった。
「これはな」
「気が向いたらなの」
「気に入ったら入れてくれ」
 正道は言う。
 
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