巨人の花嫁
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第三章
「白い牡牛の痣がありまして」
「そして、ですか」
「はい、そこを攻められると」
「駄目なのですね」
「私は死んでしまいます」
姫にも言うのだった。
「そうなってしまいます」
「そうなのですね」
「ですから常にです」
こう姫に言うのだった。
「腰の後ろは守っています」
「そうなのですね」
「はい」
姫に確かな声で答えた、姫はにこやかな顔で聞いていたが目は笑っていなかった。そしてバディカンもだった。
その姫を見ていた、そうして彼は姫との話の後でボグに言った。
「気をつけることだ」
「といいますと」
「理由はわからないが姫はそなたを嫌っている」
「まさか」
「いや、あの目はだ」
自分が見たそのものを言うのだった。
「そなたに侮蔑と嫌悪を抱いている」
「そうした目でしたか」
「そして何気なくだが」
それでもというのだ。
「そなたの弱みを聞いた」
「痣のことを」
「その痣を狙って来る、だからだ」
「それで、ですか」
「気をつけることだ。風呂に入る様に言われてもだ」
身体が無防備になるその時もというのだ。
「私の警護もということでだ」
「王子と共にですか」
「入れ、そして寝る時もだ」
やはり無防備になるがというのだ。
「私の警護という口実でだ」
「共に、ですね」
「寝ろ」
こう言うのだった。
「同じ部屋でな、そなたは敵に背を向けないが」
「敵は後ろからも来ますね」
「腰には鉄の覆いは常にしておけ」
「そして痣を守れというのですね」
「そうしておけ、そしてだ」
「出来る限りですね」
「この国を早いうちに出るぞ」
こう言ってだ、王子はボグに警戒させたうえで常に自分の傍に置いて自身の忠実な従者を護った。そうしてだった。
ある日ボグの背中から彼を憎悪で観る姫にだった、バディカンはそっと近寄ってそのうえで彼に問うた。
「私の従者に何か」
「!?」
いきなり言われてだ、姫は顔に驚愕の色を浮かべた。そのうえでバディカンに顔を向けた。
「王子、一体」
「気付いていました、貴女は私の従者を憎んでいますね」
「いえ、別に」
「目でわかります、一体どうされたのですか」
「貴方の従者は賊です」
「賊?」
「はい、以前この国に来て娘達を攫って行った」
姫はバディカンに話した。
「恐ろしい賊です」
「その賊が私の従者だというのですか」
「最初に見てすぐにわかりました、あの時私は娘達が攫われた村にいたのですから」」
まさにその時にというのだ。
「あの巨体、黄色い肌、彫の浅い顔は」
「賊のものですか」
「間違いありません」
バディカンに強い声で言い切った。
「またこの国に何食わぬ顔で来てどうするつもりか」
「そう思われたからですか」
「貴方の従者を成敗する機会を伺っているのです」
「従者は賊ではありません」
バディカンはこのことはきっぱりと否定した。
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