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何処まで攻めるのか

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第四章

「この通り」
「やはりそうか」
「早いところ終わって欲しいものですね」
 戦がとだ、親父は願う様に言った。梁はその話を聞いてから少し飲んで店を後にした。そうして後に戦が終わると夜の街に景気が戻った。
 だが戦の終わり方は宋にとって都合がいいとは言えないものだった、それで張は梁の屋敷に来て彼に怒って言った。
「こんなことならだ」
「より攻めてか」
「そうだ、攻めて河南を取り戻してな」
「私もそう思う、しかしやはり金に勝てず戦は長引き」
 そしてとだ、梁は張に難しい顔で述べた。
「その間景気は悪いままだとな」
「よくないか」
「私も燕雲十六州とまではいかないが東京等がある河南まで取り戻したかったが」
「それは出来なかった」
「淮河が境になったか」
「毎年多くの銀と絹を贈ると共にな」
 金の方にであることは言うまでもない。
「岳将軍にずっと戦ってもらえば」
「だがそれで金を滅ぼせたか、戦は短く終わったか」
「それは」
「難しいな、本当に難しい」
 梁は張に言うと共に自分自身にも言った。
「戦は何処で収めるか、何時終わらせるか」
「そのことを思うとか」
「まことに難しいものだ、そして国を脅かす力を持っていれば」 
 岳飛達がというのだ。
「あの様になる」
「あれはわしはな」
「殺してはならなかったとだな」
「思うがな」
「だが官軍でない強い軍を持つとな」
「ああいうことになるか」
「安禄山のこともあるしな」
 唐の節度使だった男だ、大乱を起こしたことで知られている。
「只でさえ我が宋は軍の動きについては五月蠅い」
「だからか」
「ああなったか、私もどうか思うが」
「岳将が官軍を率いていればああならなかったか」
「そうかもな、弱くともな」
 それでもとだ、梁は張に話した。
「その辺りはどうとも言えぬ」
「そうか」
「しかし戦は終わった、不本意なところも多いがそれは確かだ」
「これも政か」
「そういうことになるな」
 梁は張に納得いかないものを感じつつも戦が終わり景気が戻ったことはよいとは感じていた、だがどうしてもだった。
 彼も納得出来ないものがあり張と同じ表情もそこに見せていた、そうして彼と茶を飲むのだった。その茶は二人共随分と苦いものに感じた。


何処まで攻めるのか   完


                2018・11・4 
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