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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第89話:X & ZERO & RUIN

ルナはゼロと共にアイリスを治療カプセルに入れて容態を確認していた。

「はっきり言って最悪な状態だな、クジャッカーの“バグ”が彼女の身体を蝕んでいやがる。この状態をどうにかするには、スラッシュ・ビストレオの輸送列車にあるワクチンデータを奪取するかドップラー博士に頼んで作ってもらうかの二択だ。」

今までルナの話を黙って聞いていたゼロはゆっくりと口を開いた。

「その二択だとどちらが早い?」

「ぶっちぎりで奪取の方だな、どうやらタイミング良くビストレオの輸送列車がこの近くを爆走しているらしい。しかし当然ながら危険度は極めて高い。安全性を求めるならドップラー博士に頼んで作ってもらうだな。しかしこの“バグ”を除去するワクチンデータを一から作成するとなると時間がかかるな」

頭を掻きながら説明するルナにゼロは外に向かって歩き出した。

「そうか、確か外にイーグルがあったな。あれを借りていくぞ。戦闘機では脱出に手間が掛かるからな」

「待ちなゼロ、せめて武器のメンテナンスを終えてから行きな」

「………」

「待てないってツラだな?だけどな、もし失敗してお前が死んじまったらそれこそ体を張ってこうなった彼女に申し訳立たねえだろうが!!だから今はしっかり準備をしろ。新しい武器も用意するから」

「…分かった」

彼女の言うことも尤もなので大人しく武器のメンテナンスをしてもらうことに。

一方でエックス達イレギュラーハンター側もビストレオの輸送列車を発見しており、エックスのアディオンの用意がされていた。

「それじゃあエックス。気をつけて」

「ああ、勿論。ライト博士の新しいアーマーや君が復元してくれたアーマー…それにケイン博士達に頼んでおいた武器も完成したからね。大丈夫さ」

エックスの腰にはシグマがかつて愛用していたΣブレードに酷似した1本のビームサーベルの柄があった。

接近戦の武器の重要性を知っていたエックスはケインとドップラーに頼んで研究所に残っていたΣブレードをベースにした専用のビームサーベルであるXブレードに改良してもらっていたのだ。

因みにエックスが望む性能に仕上げるのは大変だったと後にケインとドップラーは語る。

「そうね、それだけの装備なら何が来ても怖くないわ…でも気をつけて…ちゃんと帰ってきて…あなたが帰って来なかったら私は…」

その言葉に周囲のハンターやオペレーター達の視線がエックスとエイリアに集中した。

「?」

エックスは自分とエイリアに視線が集中したことに気付いたが、取り敢えずエイリアの言葉に集中する。

「あなたが帰って来なかったら……アーマーの解析とかが出来なくなるじゃない」

【へ?】

ハンター達とオペレーター達がポカンとなるが、エイリアは構わず、言葉を続ける。

「あの伝説の科学者であるライト博士が造った強化アーマーを解析出来るなんて科学者でもある私からすれば夢のようなことよ!!だからあなたが帰って来なかったらアーマーの生きた性能は見れないし解析も出来ないし色々と困るのよ!!」

【そっちかい!!】

その言葉にハンター達とオペレーター達は思わず一斉に転けた。

「あら?みんなどうして転けてるの?」

「さあ?」

転けてるハンター達やオペレーター達を見遣りながら不思議そうに疑問符を浮かべるエックスとエイリア。

取り敢えず会話を再開することに。

「とにかくエックス…アーマーの解析もあるけど絶対に無事に帰ってきて。みんなにとってあなたは必要なの。ルイン達にとっても、私にとってもね…また私にあなたのためのアーマーを造らせて頂戴。今度はもっと良い出来の物を用意するから」

「ありがとうエイリア。君には本当に世話になりっぱなしだ。ルインやゼロが…いなくなったあの時から…」

「…………」

あの時とは最初の大戦の時にルインとゼロが大破した時のことだろう。

最初はただのハンターとオペレーターの間柄だったが、本格的に仲間、友人として接し始めたのは大戦が終わって涙を流すエックスにハンカチを渡してからだ。

接していれば分かるようにレプリロイドとは思えない程に人間臭いエックスは合理性に欠けるのだが、いつも悩んで寂しそうだったエックスの支えになりたいと純粋に思ったのだから、それはあまりマイナスな要素とは思えないし、寧ろ母性本能をくすぐるような魅力だったかもしれない。

「本当に君には感謝してるんだ。ありがとう」

「気にしないで、早く戦いを終わらせてルインを見つけてお説教してあげましょう!!とびっきりキツめのね」

「そうだな、それじゃあ出撃するよ」

アディオンに乗り込み、エックスはビストレオの輸送列車に向かうのであった。

「…気をつけて、エックス」

祈るように呟くとオペレーターとしての作業に戻るエイリアであった。

それを見ていたハンター達とオペレーター達はひそひそ話を開始した。

「なあ、エックス隊長ってルイン副隊長とエイリアさんのどっちとくっつくんだろうな?」

「」それはルイン副隊長じゃない?片思いみたいだし」

「でもエイリアさんはルイン副隊長がいない間はエックス隊長を支えていたし、エイリアさんはルイン副隊長に負けないくらいエックス隊長と親密だぞ」

「実際に仲間とかで済ませるには親密過ぎるのよねえ…エックス隊長とエイリアさん」

「あなた達、何を話しているの!?早く持ち場に着きなさい!!」

【りょ、了解!!】

エイリアの声に全員が慌てて持ち場に戻る。

「取り敢えず俺達は暖かーい目でエックス隊長達を見守ってやろうぜ。どんな結果になろうとも、俺達はそれを黙って受け入れよう」

【了解、暖かーい目で】

「………?」

エイリアは全員から向けられる暖かい目に疑問符を浮かべたが、取り敢えず作業に集中することに。

一方、ゼロは武器のメンテナンスを終え、万全の状態でイーグルに乗り込んだ。

「ゼロさん、お願いします!!」

「ワクチンデータをアイリスに……彼女を助けてください!!」

「分かっている。彼女は必ず助ける」

アイリスの仲間に見送られながら、腕に円盤状の物が付いた腕輪を装着したゼロがそう返すとルナが説明をする。

「ゼロ、その腕輪はシールドブーメラン。見ての通り、腕に装着するタイプの武器で、回転させるとビーム刃が真ん中の円盤状から出て、チャージして勢いよく振ると、ブーメランのように飛んでく。盾としても使えるぜ。あのアルマージの装甲にも用いられていた合金が使われてるんだ…お前は近接戦闘が主だからどうしても攻撃を喰らいがちだ。こういう武器も必要になるだろ」

「そうだな、お前には世話になったな。この借りは後で必ず返す」

「おう、気を付けてな」

イーグルのブースターを噴かして、ゼロもビストレオの輸送列車を目指す。

そしてハンターベースやアイリス達の拠点から大分離れていた場所からもビストレオの輸送列車に凄まじい速度で向かう影があった。

「…………」

無言のルインは冷たい表情を浮かべたままOXアーマーからHXアーマーに換装し、ビストレオの輸送列車を追い掛けるのであった。

そしてイーグルに搭乗したゼロはイーグルで市街地を爆走している輸送列車に接近する。

【敵襲だ!!】

当然、ビストレオの部下達もゼロの接近に気付いて発砲する。

攻撃は全てイーグルが受けたが、集中攻撃にイーグルの耐久力が保たず、小さな爆発が起き始めた。

「チッ!!」

大破したイーグルを捨てて、セイバーとロッドを構えて突撃するゼロ。

「はああああ!!」

セイバーとロッドを片手で巧みに操り、メカニロイドやノットベレー、ライドアーマー・ライデンを蹴散らしていく。

ビストレオのいるコマンダー車両を目指してダッシュを脚部の負担も気にせずに連続使用する。

「かっ…構えーーーっ!!撃てーーーっ!!」

あまりの速さに怖じ気づいてしまうが、何とかゼロに発砲する。

「空円斬!!」

リーチがセイバーより長いロッドを構えて高速回転斬りを繰り出す。

ダッシュジャンプの後の使用だった為にゼロは猛烈な勢いで突撃していき、敵を薙ぎ払って行く。

着地した瞬間、固定砲台がゼロに照準を定めた。

攻撃直後の硬直で動けないゼロは直撃を受けるかと思われたが。

「チャージブレード!!」

丁度良いタイミングで現れたエックスがアディオンを乗り捨ててサードアーマーを身に纏った状態でXブレードのチャージ攻撃を叩き込んで砲台を粉砕した。

「エックス!!」

「ゼロ、君も来ていたのか!!」

「まあな、互いに話したいことはあるが、アイリスが悪質な“バグ”に侵されて危険な状態なんだ。悪いが今はワクチンの奪取を優先させてくれ」

「アイリスが!?勿論だよゼロ、俺も一緒にワクチンの奪取を手伝う!!」

アイリスが危険な状態だと聞かされたエックスはゼロのワクチン奪取を手伝うことを決意する。

「良いのか?」

「ああ、今の彼女は元レプリフォースだ。敵でないのなら助けてはならない理由はない。それに彼女は一緒に戦った大切な仲間だ!!」

その言葉にゼロは一瞬目を見開きながら、少しだけ微笑んだ。

「すまん、助かる…ん?」

ゼロはルインの姿がないことに気が付いたが、多分別の場所で戦っているのだと結論付けた。

話しながら前進するとエックスとゼロの前にライデンが迫る。

「「邪魔をするな!!」」

ブレードとセイバーが交差し、堅牢な装甲を持つはずのライデンをX字に斬り裂いた。

「エックス、そのビームサーベルは…」

「ああ、シグマが使っていたビームサーベルを俺専用に改良したんだ。ケイン博士の研究所に1つだけ残されていてさ…恐らく予備だったんだろう」

改良を施したとは言えかつて最強のイレギュラーハンターと呼ばれたシグマが愛用していただけあり、エックスの求める性能を発揮している。

「ふん、シグマの武器が平和のために使われるか…最悪のイレギュラーであるあいつには随分な皮肉だな」

エックスとゼロはそれぞれの武器を扱いながらコマンダー車両に向かって行く。

一方、コマンダー車両では…。

「狐が2匹も迷い混んだらしいな」

「は……はい。予想以上の実力の持ち主達でして……」

エックスとゼロはこうしている内にもコマンダー車両に近付いているだろう。

「言い訳か?」

「いえっ!実際に奴らの実力はっ………」

「それが言い訳だと言うのだ」

「はっ、はい!!」

ビストレオはゆっくりとした動作で椅子から立ち上がりながら言うと目の前の兵士は震えながら姿勢を正した。

「言い訳する前に対処すべきだったな」

「ひっ」

ビストレオは左腕を振るうとあっさりと自分の部下を殺害してしまう。

「我らが旗に恥ずかしいと思え!!」

吐き捨てるように言うとビストレオは再び椅子に座り、傍に控えていたレプリロイドに血塗れの爪を拭かせる。

「あれを」

「はい」

もう1体のレプリロイドにワクチンデータを持ってこさせると、それを摘まみながら呟く。

「こんなワクチンデータの為に殺されに来ると言うのか……」

そして輸送列車に近付く緑色のレプリロイド、HXアーマーのルインがコマンダー車両の真上に着地した。

そしてOXアーマーに換装すると拳にエネルギーを収束させる。

「アースクラッシュ」

拳を床に叩き付けることで穴を開けるとコマンダー車両室に入った。

「む?」

「敵は…全て破壊する…」

冷徹な表情を浮かべながら呟くルインにビストレオは椅子から立ち上がる。

「予定外の狐が乱入したか。本来の獲物が来るまでの暇潰しでもしてみるか」

爪でルインを八つ裂きにしようとルインに襲い掛かるビストレオだが、それがビストレオを破滅へと導くことに気付かなかった。

「全てをゼロにするために」

アースクラッシュの拳がビストレオの顔面に炸裂した。

一方、エックスとゼロは…。

「プラズマチャージショット!!」

サードアーマーからフォースアーマーに換装し、アームパーツをプラズマにするとプラズマチャージショットを後方から迫る武装列車に発射する。

着弾と同時にプラズマが発生し、武装列車をボロボロにしていく。

「とどめだ!!」

ゼロもシールドブーメランのビーム刃を展開し、シールドを投擲する。

投擲されたシールドは武装列車の武装を全て破壊し、列車本体も爆散した。

「くっ、何て数なんだ…」

「チッ、数だけはいるな」

ゼロはセイバーで1体のノットベレーを両断するが、連戦で疲弊していたこともあり、注意力が何時もより散漫になっていた。

ライデンの接近を許してしまい、背後からブレードで胸を貫かれてしまう。

「ゼロ!!」

思わずエックスもそちらに目が行くが、こちらへの攻撃はまだ続いているためにゼロを助けには行けない。

何とか起き上がるゼロだが、手が自分の疑似血液で染まり、脳裏に様々なことが過ぎる。

「(……迷うな…俺に必要なのはこんなものじゃない。俺に必要なのは…“今”!!)」

立ち上がるのと同時に全力で拳を振るってライデンのパイロットを殴り飛ばすゼロ。

「ゼロ!!」

「エックス、一気に片付けるぞ!!」

「…ああ!!」

ゼロは拳に、エックスは全身にエネルギーを収束させていく。

「落鳳波!!」

「フロストタワー!!」

ゼロはエネルギーを収束させた拳を床に叩き付け、エネルギー弾を放射状に放ち、エックスは自分の周囲に複数の巨大な氷塊を敵に向けて叩き落とす。

エックスとゼロは爆発に巻き込まれないうちにコマンダー車両に向けて駆け出す。

そしてコマンダー車両の前に辿り着くと、中から鈍い音が聞こえてくる。

まるで金属を叩き付けるような……。

「コマンダー車両…のはずだが…」

「…この反応はどういうことなんだ?」

困惑するエックスとゼロ。

コマンダー車両から感じる反応に困惑しているのだ。

何故ならエックスの隣にゼロ本人がいると言うのに扉の向こうからもゼロの反応がするのだ。

困惑しているうちにコマンダー車両が爆発した。

「!?」

「何だ!?何が起きている!?」

煙を腕で払いながら崩壊したコマンダー車両の奥に進むエックスとゼロ。

そこには血のような紅のアーマーを纏った…。

「ルイン!?」

「…?あ、エックス?それにゼロもいるの?どうしてここに?」

「どうしてここに?…じゃないだろう!?君がいなくなってみんなどれだけ君を心配したと思っているんだ!!エイリアもライト博士も君を心配していたんだぞ!!」

「いなくなった?」

「あ、ああ…ごめんごめん」

苦笑しながら謝罪するルインに事情を知らないゼロは疑問符を浮かべるしかない。

エックスは普段と変わらないルインを見て、心配して損したと肩を落とす。

「事情は後で説明するよ。まずはビストレオからワクチンを手に入れなければ」

「ビストレオ?ビストレオってこれ?」

「「!?」」

ルインが見せた物にエックスとゼロは目を見開いた。

「あ…がが…」

ルインが持ち上げたのは顔面が見る影もないくらいに変形し、まだ僅かだが生きているビストレオであった。

四肢は切断され、斬り落とされた掌にはワクチンデータのチップがある。

「ねえ、エックス、ゼロ。聞いてよ…こいつ少し痛め付けただけで命乞いまでしたんだよ」

クスクスと笑いながらビストレオの頭部を鷲掴んだ手に力を込め、少しずつビストレオの頭部がへこんでいく。

それを見たエックスとゼロは計り知れない恐怖を感じて無意識に一歩引いた。

「あ…ぎぎ…!!」

「自分の部下を平気で殺した癖に自分の命は惜しいんだよ?…こいつは本当に」

グシャアっと、ルインが一気に力を込めるとビストレオの頭部が容易く握り潰され、周囲に疑似血液が舞う。

「 み っ と も な い よ ね 」

狂気の笑みを浮かべながら言い捨てるルイン。

その姿を見たゼロは脳裏に嫌なものが過ぎって嫌な汗が流れる。

止まらない、体の震えが止まらない。

「ふふふ…」

「ル、ルイン!?どこに行くんだ!?」

満面の笑みを浮かべながら手に付いた疑似血液を払うとエックス達に背を向けるルイン。

止めようとするが、振り向いたルインの狂気に足が止まる。

「私の邪魔をするならエックス達でも殺すよ?」

「っ…!!」

その言葉にショックを受けたエックスは身動き出来なくなった。

そしてルインはHXアーマーに換装すると輸送列車から飛び立った。

「何があったんだ…あいつは…?」

「ライト博士の言っていたことはこの事だったのか…ルインを…止めなくては…」

このままではルインの未来は良いものではない。

最悪の事態は回避しなければならないと、エックスは決意した。 
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