南の島の吸血鬼
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第一章
南の島の吸血鬼
クニオ=モレイとウティット=コープチッティは今はモレイの神託でパラオにペリリュ―島に来ていた、この島は島自体も海も非常に美しい島だ。
だが島のあちこちに吊るされている大蒜、誰もが胸に下げている銀のロザリオを見てモレイは首を傾げさせて言った。
「あれっ、ここはパラオなんですが」
「そやな」
コープチッティも首を傾げさせてモレイに続いた。
「それが何でや」
「皆十字架を下げていて」
「大蒜もやな」
「それに聖水も皆水筒に持ってて」
「鏡もやな」
「この組み合わせは」
まさにとだ、モレイは言った。
「ルーマニア辺りのモンスターの」
「吸血鬼やな」
「はい、まさに」
「わしも吸血鬼は知ってるけどな」
種族としての吸血鬼ではなくモンスターとしてのだ、コープチッティもこちらの知識を備えているのだ。
「色々おってな」
「はい、大蒜や十字架、聖水を嫌って」
「しかも鏡に映らん」
「所謂ドラキュラ伯爵タイプは」
そうしたモンスターの吸血鬼はとだ、モレイはまた言った。
「実はこの世界では東欧限定で」
「この地域にはおらんな」
「太平洋には、といいますか」
「太平洋の吸血鬼はな」
それはというのだ。
「それこそな」
「物凄い種類がおって」
「一概には言えんわ」
「そうでありますな」
「マレーシアのペナンガランとか」
コープチッティは祖国タイの隣国の吸血鬼の話からはじめた。
「あとフィリピンにもおってな」
「空飛ぶ悪魔みたいな」
「それもおって」
「あと中国のキョンシーとか」
「アメリカのマニトーもやな」
「中南米にもいますなあ」
「日本にもな」
太平洋とアフリカ、北極及び地下世界の統一政権通称十神連合の首都があるその地域にもというのだ。
「おるしな」
「首が飛ぶろくろ首ですな」
「そやからな」
それでというのだった。
「こんな大蒜とか十字架は」
「意味がないであります、ですが」
「ですが?」
「そういえば我が国は」
パラオのことをだ、モレイは話した。
「南洋の吸血鬼はおっても」
「それでもやな」
「はい、そして」
それでというのだった。
「他の吸血鬼の知識は」
「ないな」
「何かです」
ここでさらに言うモレイだった。
「一番有名な吸血鬼の話が一方的に出て」
「それでやな」
「他の吸血鬼、ここに本来出る筈の南洋の吸血鬼のことすら忘れられて」
「それでやな」
「他の種類の吸血鬼がここで出たら」
「今この島冒険者おるか?軍隊や警察は」
モンスターと戦える者達はというのだ。
「大勢」
「いや、そう言われますと」
「おらんか」
「ここは小さな島なので」
それでというのだ。
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