戦国異伝供書
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第三十四話 内外を治めその十一
「しかしじゃ」
「はい、これ以上はないまでの絆があります」
「主従、友、義兄弟」
「その全てです」
「だから我等の絆は何よりも強い」
「そうしたものです」
「だからじゃ」
それ故にというのだ。
「我等は死ぬ時と場所は同じじゃ」
「生まれた時と場所はそれぞれですか」
「身分もまた」
「しかし今は違います」
「そうした間柄になりました」
「それ故にそうなるぞ」
死ぬ時と場所は同じにというのだ。
「よいな」
「はい、その様に」
「我等も願っておりまする」
「そして必ずそうなる様にです」
「身を慎んでおりまする」
「その様にな」
幸村は十勇士達に強い声で言った、そして干し飯を食い水を飲んでそうしてだった。彼等はまた甲斐に向かった。
山本はその夜星の動きを見てから晴信のところに参上して述べた。
「この国に逸材が来ます」
「どういった者だ」
「天下一の武士です」
山本はこう答えた。
「文武と忠義を備えた」
「ほう、その三つをか」
「それも極めて強い」
「三つ共じゃな」
「そしてその下に十人の猛者がおります」
「その者だけでなくか」
「はい、さらにです」
その者に加えてというのだ。
「十人です」
「凄い者達が加わる様じゃな」
「今武田家は多くの優れた家臣の方々がいると言われていますが」
「お主も含めてな」
「勿体なきお言葉」
それはとだ、山本は恐縮して述べた。
「それがしも入れて下さるとは」
「ははは、あわしは事実を言ったまでじゃ」
晴信はその山本に笑って返した。
「気にすることはない」
「そう言って頂けますか」
「それでじゃが」
晴信はあらためて話した。
「十一人か」
「主従合わせてです」
「その者達が甲斐に来てか」
「お館様の御前に参上します」
「そうなればじゃな」
「それがしが思うにです」
「家臣にすべきじゃな」
晴信は自ら言った。
「そうじゃな」
「はい、何としてもです」
「天下一の武士と十人の猛者か」
「その十一人です」
「ふむ。天下一の武士とは面白い」
晴信はその目の光を強くさせて笑って述べた。
「どの様な者か興味があるしじゃ」
「それにその様な者が加われば」
「大きいわ」
武田家にとってというのだ。
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