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戦国異伝供書

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第三十四話 内外を治めその七

「しかしな」
「これからもですな」
「あの方がことを進まれるならじゃ」
「血は避けられぬ」
「お主がいなければな」
「ではそれがしは」
「そうじゃ、その心でじゃ」
 戦国の世に相応しくないまでに毅然とした武士の心、それが幸村にあるこそだというのだ。
「あの方をお守りせよ」
「血から」
「そして戦の場ではな」
「存分に戦えばよいですな」
「お主、そして十勇士達程の猛者はじゃ」 
 それこそというのだ。
「天下にそうはおらぬからな」
「だからですな」
「そうじゃ、存分に戦うのじゃ」
 戦の場ではというのだ。
「そして武名を挙げよ」
「それがしのそれを」
「そうせよ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「さすれば」
「ただ、お主禄や宝は」
「これといってです」
「興味がないな」
「それがしの家臣達もです」
 即ち十勇士達もというのだ。
「そうしたことにはです」
「興味がないのう」
「我等は鍛錬と学問で自分達を高め」
「強くなることがじゃな」
「望みでありますが」
 それでもというのだ。
「禄や宝、そして銭は」
「どうでもよいな」
「そう考えています」
「そうじゃな」
「暮らしていければです」 
 それだけでというのだ。
「充分であり」
「馳走も美酒もじゃな」
「飢えなければそれでよく」
「酒も美酒はじゃな」
「いりませぬ、普通の酒で」
 いいというのだ。
「そして衣も家も」
「粗末なものでよいな」
「全て」
「それがお主じゃな、当家は質素であるが」
「それがしは、ですか」
「その辺りの坊主達よりもじゃ」 
 遥かにというのだ。
「質素であるのう」
「そうしたことはまことにです」
「興味がないからか」
「はい」
 こう昌幸に答えた。
「いりませぬ」
「左様か」
「そしてです」
 幸村はさらに話した。
「これからもひたすら己を高めていきたいです」
「家臣達と共にじゃな」
「そう考えております」
「お主の家臣は十人」
 それ故に十勇士と呼ばれている。
「あの者達と共に鍛錬と学問に励んでいくか」
「このまま」
「そしてじゃな」
「天下一の武士を目指します」
「あの者達と共にか」
「そしてあの者達とはです」
 その十勇士についてだ、幸村は父に述べた。 
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