ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第86話:Power Up
ルインが消息不明になり、スノーベース跡を探し終えてハンターベースに帰還したエックスは武器のチェックをしながらも焦っていた。
「ルイン…どこにいるんだ…!」
「エックス、気持ちは分かるけど…今はレプリフォースのことに集中して」
「っ…君にとってもルインは大切な友人のはずなのにどうしてそんなに冷静なんだ!?君は彼女が心配じゃないのか!?」
エイリアの冷静な声にカッとなるエックス。
一度ルインが機能停止した場面を目撃しているエックスはルインが今どんな状態でいるのか分からず、武器以外見つからず、彼女のパーツすら見当たらない状況に完全に冷静さを失っていた。
「っ……」
しかしエックスに負けず劣らずルインとの付き合いが長いエイリアに対してそれを言ったのは間違いなく失敗だった。
エイリアは唇を噛み締め、キッとエックスを睨むとエックスに全力の平手打ちを浴びせた。
「え…?」
叩かれた頬を押さえながらエイリアを見つめるエックス。
「平気なんかじゃないわ!!私だってエックスと同じ気持ちだわ!こんな時でなければ今すぐにでもルインの捜索に戻りたいくらいよ!!」
親友をまた失ったかもしれないと言う悲しみを必死に隠していたエイリアだが、とうとう堪えきれず、涙が零れ落ちる。
「エイリア……」
「でも、ゼロが単独行動でルインは行方不明でいない今…私はともかくエックスまでハンターベースから離れたらハンターのみんなはどうなるの…?お願いエックス…今は…耐えて…お願い…よ…!!」
嗚咽が混じった声にエックスは深い罪悪感を覚える。
「ごめんエイリア。君の気持ちに気付かないで酷いことを…」
「いいえ、私の方こそ叩いてごめんなさい」
互いに謝罪し、これからについて話し合う。
「ルインが消息不明になってゼロは単独行動…ディザイアも行方不明…ディザイアもこんな時にいなくなるなんて…」
「エックス…私は嫌な予感がするの…あのディザイアの顔…とても正気とは思えなかったし…」
映像で見たディザイアの負の感情が全面に出た狂気の表情が未だにエイリアの電子頭脳に残っている。
「ああ…そうだな…ディザイアのことは俺もそう思うよエイリア…しかし、“力”…か…」
「エックス?」
思案顔になるエックスにエイリアは疑問符を浮かべる。
「ライト博士が用意してくれたパワーアップパーツの完成を優先させるべきかもしれない」
「え?」
予想外のエックスの言葉にエイリアは目を見開く。
「今回の件でレプリフォースは今までの相手とは違うことを再認識出来た。あのルインがバッファリオと組んで挑んだにも関わらずキバトドスに惨敗してしまった。」
バッファリオの戦闘能力は決して低くない。
直接戦ったエックスはバッファリオの寒冷地での実力を良く知っている。
それが、同じ氷属性とは言え全く相手にならずにやられてしまった。
「復元したサードアーマーだけでレプリフォースに対抗するのも限界かもしれない」
「……そう、ね…私が完璧な復元が出来ないばかりに…ごめんなさい」
悔しさや悲しみが混じった複雑な表情で謝罪するエイリアにエックスは思わず慌てる。
「違うんだエイリア!!君には何時も助けられている。今回の戦いも君のオペレートや君のアーマーには何度も救われたんだ。そんな風に言わないでくれ」
「エックス…」
「不安を感じるんだ。バイオラボラトリーで見た黄色いレプリロイドや行方不明になったディザイアのこととかね…ケイン博士やドップラー博士に頼んだ物も完成間近のようだし、今はパワーアップパーツの回収に専念しよう。残りはヘッドパーツとボディパーツだ」
「分かったわ、カプセルの位置を割り出すから少し待っていて」
「頼むよエイリア」
ライト博士のカプセルの反応を割り出すためにエイリアは部屋を後にし、エックスは険しい表情で空を見上げる。
一方、カギキラジャングルではライト博士のカプセルのあった場所に彼女が訪れていた。
カプセルはルインの反応を感知したのか、作動してライト博士のホログラムを出現させた。
『ルイン、どうかしたのかね?』
「……………」
ライト博士の問いに無言のルイン。
傷だらけの状態の彼女にライト博士は困惑するしかない。
『ルイン、何があったんだね?酷い怪我ではないか。話す前にカプセルに入りなさい、修理をしてあげよう』
「………修理なんかよりも、私をパワーアップさせて下さい!!!」
『!?』
膝をついて悲痛な叫びを上げるルインにライト博士は目を見開く。
「今のままじゃ駄目なんです!!私にはもっともっと…力が必要なんです!!お願いします!!」
目から大粒の涙を流しながら叫ぶルインに事情を知らないライト博士は困惑するしかなかった。
まともに話せる精神状態ではないルインを見て、ライト博士は女神から言われていた最後のアーマーを解放する時が来たのかと何となくそう思った。
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