恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十三話 張遼、董卓を探すのことその四
「華雄にもそれがあるとは思えないのです」
「いや、私もそれを知りたいのだ」
彼女自身もそうだというのだ。
「あるのか?それは」
「自分で言っても困るのです」
「そうだな。私にもあると思いたいのだが」
「自分でもわからないのです」
「残念だがそうだ」
わからないというのだ。餅を食べながら陳宮に話す。
「自分の真名がわからないというのもおかしな話だが」
「確かにそうなのです」
「それに私の声だが」
今度は声の話になった。それにだ。
「あれだな。徐州の張飛と似ていると言われるが」
「そっくり」
呂布はぽつりと言った。
「同じにしか聞こえない」
「そこまで似ているか」
「ねねも」
そしてだ。陳宮についても言う呂布だった。
「揚州のあの姉妹と声が同じ」
「自分でも驚いたのです」
彼女は呂布と共に揚州に赴いた時に二人に合っているのだ。
「何でねねと同じ声なのかびっくりしたのです」
「私は似ていないと思ったが」
華雄は自分と張飛を比較して話す。
「しかしそれがだな」
「そう。よく聞くとそっくり」
「声は不思議なものだな」
「中身が大事」
呂布が指摘するのはその部分だった。
「中身と大きな関係がある」
「どうやらその様だな」
華雄も呂布の今の言葉に真剣に頷く。そのうえでの言葉だった。
「世の中というものはそうした意味でも不思議なものだ」
「そう。不思議なもの」
呂布も焼き魚を食べながら頷く。
「何があるかわからない」
「全くだな。それでだが」
「それで?」
「どうしたのです?」
「声が似ている相手についてだが」
その話を続ける華雄だった。さらにであった。
「私は張飛について妙に親近感を覚える」
「ねねもなのです」
陳宮もそうなのだった。
「不思議に話も何もかもが合います」
「あれは不思議だな」
「全くなのです」
「恋にはわからない」
呂布はそれを聞いてぽつりと言った。
「どうしても」
「そうか。相手がいないとか」
「わからない話なのですか」
「そう。どうしてもわからない」
少し寂しそうに言う呂布だった。
「それが寂しい」
「ううん、それはそうだな」
「その通りなのです」
二人はその呂布の同情するものがあった。そんな話をしてだった。
彼女達は食べていく。今は腹ごしらえであった。
宮中ではだ。張遼が董白に尋ねていた。
「何や、あんたも知らんのかいな」
「残念だけれどそうなのよ」
董白は顔を顰めさせてその張遼に返していた。
「姉様のおられる場所よね」
「そや。それわからんのやな」
「わかってたら言うわよ」
こう返すのが董白だった。
「そうでしょ?言わない筈がないじゃない」
「確かに。そやな」
「宮中におられるとは聞いてるけれど」
それは確かだというのだ。
「けれど。実際に何処にいるのかはよ」
「わからへんねんな」
「こんなことってあるの?」
董白は顔を顰めさせて言った。
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