恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十三話 張遼、董卓を探すのことその三
「名前だけで。命令出しているのは別の人間」
「別の人間なのですか」
「そう。宮廷の奥深くにいる」
奇しくもだ。山崎と同じ指摘をするのであった。
「いるのは。張譲」
「張譲は処刑されたのであります」
「死体がない」
呂布はこのことを指摘した。
「そもそもそれがない」
「では。やはり」
「そう。宮廷に残っている」
張譲がだ。そうなっているというのだ。
「そして月の名を騙って動いている」
「だとすると許せないのです!」
陳宮は呂布の話を聞いて両手をあげてだ。怒った顔で話した。
「張譲を引きずり出して成敗するのです!」
「宮廷に入って?」
だが、だ。呂布はぽつりとした口調でその陳宮に返した。
「そうして?」
「うっ、それは」
「宮廷には中々入られない」
言うのはこのことだった。
「だから無理」
「うう、困ったのです」
「だから宦官は問題」
「宮廷の奥深くから策を巡らすからなのですね」
「そう。それに月も最近出て来ない」
「そういえば都に入ってから」
陳宮はその眉を曇らせて話した。呂布に言われて気付いたのである。
「月様のお姿を見ません」
「それもおかしい。月はあれで動く娘」
行動派というのだ。それはその通りだ。
「それなのに出て来ないのは」
「確かに面妖なのです」
「詠や董白はいるけれど」
この二人はだというのだ。
「けれど肝心の月は出て来ない」
「考えれば考える程おかしなことなのです」
「おかしなことだらけ」
呂布は今のこの状況をこう言った。
「何とかしないといけないけれど」
「何もできないのです」
「今できるのはこの建築で怪我人を出さないこと」
現場の話であった。それについて話すのだった。
「それをしよう」
「わかったのです。それならなのです」
「おお、二人共そこにいたか」
二人のところにだ。華雄が来た。そうして声をかけてきたのだ。
「食事の時間だ。一緒にどうだ」
「食べる」
こう答えた呂布だった。
「皆で食べると美味しい」
「そうなのです。では三人で食べるのです」
陳宮も応える。こうしてだった。
三人でだ。その場で食べはじめた。食べるのは華雄が持って来た焼き魚と餅であった。小麦を練って焼いた方の餅である。三人はその場に腰を下ろして車座になってだ。そのうえで食べはじめた。
その焼き魚と餅を食べながらだ。陳宮が華雄に話した。
「ところでなのです」
「何だ?」
「董白殿の真名は何なのです」
魚を頬張りながら華雄に尋ねる。
「ねねは教えてもらったけれど忘れたのです」
「陽というのだ」
こう答える華雄だった。
「そうか。忘れたのか」
「恥ずかしながらそうだったのです」
「だが今ので覚えたな」
「はい、それは間違いないのです」
確かにだ。覚えたというのである。
「はっきりと覚えたのです」
「いいことだ。しかしだ」
「しかしなのです?」
「私の真名は何というのだ?」
華雄は右手に持った餅を口に運びながら言った。
「それが問題だが」
「真名あるのです?」
陳宮は怪訝な顔でその華雄に問い返した。
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