恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十三話 張遼、董卓を探すのことその一
第七十三話 張遼、董卓を探すのこと
洛陽でもだ。相変わらずのキムだった。
囚人達に対してだ。容赦なく蹴りを浴びせていた。
「そこ、さぼるな!」
「は、はい!」
「わかりました!」
蹴り飛ばされた囚人達が応える。見ればまたあの三人だ。
「しっかり働きやすので」
「ご勘弁を」
「この宮殿を造り終えたらだ」
次は何か。キムは話すのだった。
「それからだが」
「それからっていいやすと」
「まだあるのですか」
「そうだ。陵墓だ」
次はそれだというのだ。
「先帝のだ。これ以上はない見事な陵墓を築くのだ」
「何か建築ばかりですね」
ジョンが来てだ。キムのその話を聞いてこう述べた。
「あまりよくありませんね」
「ジョンさん、そのことを言うのは」
「いえ、これは少し妙です」
キムが止めてもだ。まだ言うジョンだった。
「建築が国を傾けさせるのはよく言われていますが」
「それはその通りです」
キムもそれは知っていた。歴史における常識である。
「しかしです。これはです」
「董卓殿が決められたことだからですね」
「我々としては働くだけしかないです」
こうジョンに言うのである。
「そう考えていますが」
「それはその通りです」
ジョンもそれはその通りだと返す。しかしであった。
ここでだ。彼はまた言うのであった。
「ですが。あまりにもです」
「董卓殿のされることではないというのですね」
「董卓殿は民を苦しめることを嫌われます」
それが董卓の考えの根幹にあるものの一つであるのだ。
「擁州でも建築なぞは殆んどありませんでしたね」
「はい、それは確かに」
「ですが都に入られてから急に建築ばかりされています」
「しかも贅沢な暮らしまで」
「董卓殿は質素でしたが」
それもだ。ジョンにとっては不可思議なことであった。
二人の顔は次第にいぶかしんでいく。そうしてだ。
今度はだ。二人のところにチャンとチョイが来て話すのであった。
「旦那達、こっちは済んだぜ」
「無事に終わったでやんす」
そうだとだ。話す二人だった。
「宮殿の建築は順調にいってるけれどな」
「後陵墓でやんすが」
「うむ、そこだな」
「そこもありますね」
キムとジョンは二人の話からそちらにも考えを及ばせた。
「あちらの監督にも行かねば」
「では後で」
「ああ、そっちは呂布ちゃんが行ってるぜ」
「陳宮ちゃんもいるでやんすよ」
「ううむ、呂布殿か」
その名前を聞いてであった。キムの顔が曇った。
「監督には向かないと思うが」
「少なくとも旦那よりはいいよな」
「そう思うでやんすよ」
二人はキムに背を向けてだ。身体をそれぞれ屈めさせてひそひそと囁く。
「旦那と一緒にいたらそれこそな」
「強制収容所でやんすよ」
「俺達前の世界から強制収容所にいるけれどな」
「絶対に出られないでやんすから」
「一体何を話しているのだ?」
その収容所の所長からの言葉だ。
「私のことを言っているのか?」
「いや、特に何も」
「言ってないでやんすよ」
二人は慌ててキムに顔を向けて全力で否定した。
「ただ。あっちはもう監督がいるからな」
「旦那達はここで専念できるでやんすよ」
「そうか。それならだ」
「ここで監督を続けましょう」
「できれば寝て欲しいだけれどな」
「休まない旦那達でやんすから」
それは当人以外の誰もが思うことだった。
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