ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第69話:Golden
ゼロのZセイバーの光刃をまともに喰らって胴体を両断されたシグマは悔しげに歯噛みした。
ドップラーのデータを過信し過ぎた結果、充分勝てるはずの相手に敗北したことに。
「くっ…まさかゼロのセイバーを隠し持っていたとは…しかし……まだだ……」
シグマの笑いに悪寒を感じたエックスが、シグマから離れた直後にシグマのボディは爆散し、城を大きく揺らした。
「わっ!わっ!!何!?」
動力炉を停止させたルインはエックスと合流しようとしたが、途中の爆発による振動に足を止めた。
「何だろう…」
凄まじい振動に不安を覚えたルインは一瞬戸惑ったが、急いでエックスの元に向かうのであった。
そして一方では何とか爆発から逃れたエックスはシグマの爆発によって空いた穴を見つめる。
「奴1人でこの爆発……。俺を道連れにするつもりだったのか……あそこまで“生”に執着していた奴が……」
しかし今までの戦いを振り返ると、あのシグマがそんな簡単に死ぬとはエックスにはどうしても思えなかった。
「となると、奴はまだ…」
静かにエックスが呟いた瞬間、下から幾つかの光が見えた……。
「来た!!」
穴から大型ミサイルが飛び出し、エックスは何とか直撃を受けずに済んだが、爆風で吹き飛ばされてしまう。
「くっ…やはり生きていたか」
「その通りだ!私は“死”など望まん!!生きて覇者となる道以外無用!!ドップラーに開発させた究極の戦闘用ボディ、“カイザーシグマ”の力を今この場で味わわせてくれるわ!!」
見た目はかなりの巨体だが、大きさ自体は最初の反乱で戦ったウルフシグマと比べれば大したことはない。
しかし今のシグマから放たれる威圧感はそれを遥かに凌駕されていた。
「どんなに強力なボディだろうと関係ない。お前はここで倒す!!クロスチャージショット!!」
エックスは両腕のバスターのチャージを終えると、シグマの頭部に向けてクロスチャージショットを放った。
それをシグマは即座にバリアを展開してそれを防ぐ。
「見事と言う他はないなエックス。ウルフシグマとの戦闘の経験を活かし、わしの頭部が弱点であることを見抜くとはな。だが、今のわしの性能はウルフシグマとは次元が違うのだ」
「それくらい分かっている!だがやるしかないんだ!クロスチャージショットで貫けないならゼロのセイバーならどうだ!!」
セイバーを構えてシグマに直撃攻撃を仕掛ける。
「力の差を理解していても戦うか、哀れな男だ…どれだけ足掻こうが貴様にどうにか出来る実力差ではないわーーーー!!!」
シグマのバスターのチャージは既に終わっており、斬り掛かるエックスに向けて放つ。
エックスに直撃するかと思われた瞬間。
「エックスーーー!!!」
HXアーマーに換装したルインが、エアダッシュでエックスとの距離を詰め、エックスを抱えるとシグマの砲撃から離脱した。
「ルイン!?」
「何!?ルインだと!?」
ルインの乱入に驚愕するシグマ。
ドップラーはルインのデータは一切採取していなかったために、ルインの復活を知らなかったのだ。
「大丈夫?エックス?」
「ああ、ありがとうルイン。助かったよ」
ルインはエックスを下ろすとシグマを見上げた。
「ルイン、貴様…再稼働したのか…かつてVAVAと戦い、敗れた貴様が現れたのには驚いたが…VAVAにさえ勝てなかった貴様が加勢に来たところで何が出来る?」
「シグマ…随分変わり果てた姿になったね。もう殆どメカニロイドと変わらないんじゃない?何時までも同じことの繰り返しじゃね」
「言いおったな、小娘が。人間でもレプリロイドのない狭間の存在の分際で」
「………」
「シグマ…!!」
その言葉にルインは少しの沈黙の後、ZXアーマーに換装するとZXセイバーを抜いた。
「狭間でも中途半端でも良いよ。そのお陰でエックス達に会えたんだから。私は今でも充分幸せなの…エックス、立てるよね?」
「あ、ああ…大丈夫だ」
ふらつきながらも何とか立ち上がるエックス。
「それにしてもさっきの攻撃…凄い威力だったよね…」
「ああ、パワーは今まで戦ってきたシグマの中でも間違いなく最強だ…」
先程の一撃も、もしルインが助けてくれなければ間違いなく消し飛ばされていただろう。
「でもパワーと防御力が高いということは反動と攻撃に耐えるために装甲が厚いはず…だから…」
エックスと目配せすると2人は同時に駆け出し、シグマの周囲を高速で動き回る。
「ぬう!?」
「当然スピードはガタ下がり!!いっけー!!」
「クロスチャージショット!!」
2人は縦横無尽に動き回りながら、チャージショットとクロスチャージショットを叩き込む。
「ぬう!!小癪な!!」
「ルイン!!合わせてくれ!!」
「OK!やろうエックス!!」
Xアーマーに換装するとバスターのチャージを開始するルイン。
そしてエックスは両腕のバスターをチャージしながら隙を窺う。
「(奴は攻撃の直後に隙がある。そこを突けば…)」
シグマからエックスとルイン目掛けてミサイルが放たれたが、2人はそれをかわすと同時にバスターを構えた。
「クロスチャージショット!!」
「ダブルチャージショット!!」
2人の放ったクロスチャージとダブルチャージのショットは1つとなり、巨大な光弾となってシグマに迫る。
「チッ!!そんな小細工で!!」
シグマもバスターから砲撃を放って相殺しようとするが、クロスチャージショットとダブルチャージショットの合体攻撃に掻き消される。
「な、何…!?ぬあああああ!!!」
光弾をまともに喰らったシグマが悲鳴を上げた。
「やった!!」
「ああ、流石のシグマもこれなら…」
クロスチャージショットとダブルチャージショットの合体攻撃をまともに浴びたのだ。
如何にシグマの今のボディが頑強でも一溜まりもないはずだ。
エックスとルインがバスターを下ろした時であった。
「ぬううう…!!今の一撃は危なかったが……耐えきったぞ!!」
瓦礫を吹き飛ばして現れたのは多少のダメージは受けたようだが、まだ健在のシグマである。
「なっ!?」
「嘘、あの攻撃に耐えきったの!?」
「消し飛べ!エックス!!ルイン!!」
再びシグマはバスターを構えると再び2人に向けて砲撃を放つ。
しかも今度は2つのバスター同時に放っており、シグマ版のダブルチャージと言ったところか。
エックス「くっ!!」
あまりの規模に避けられないと感じたエックスはディフェンスシールドを展開し、ルインとPXアーマーに換装するとバリアを展開した。
しかし、あまりの出力に二重のバリアも簡単に破られてしまい、エックスはルインを突き飛ばして離脱させるとそれをまともに喰らってしまう。
「エックス!?」
ルインの声が遠く聞こえ、エックスは自分の体がバラバラになっていくのを感じた。
「(体が崩れる…俺はここまでなのか…ルインが目覚めて…ようやくあの時のように笑いあえると思っていたのに…ドップラー博士やケイン博士もこれからなのに…嫌だ…!!まだ、終わりたくない…!!)」
『エックス、そうだ。諦めるでない』
「(ライト博士…?)」
『ここでお前が負ければシグマによって永遠に平和が失われてしまう。だから諦めないで欲しい』
「(しかし、俺はもう…)」
体を失いかけている自分にはどうしようもないとエックスは諦めかけていた。
『エックス、あれを見よ』
「(え…?)」
ライトが指差した方向には産声を上げる人間の赤ん坊の姿とそれをあやす母親の姿があった。
他にも元気に大地を駆け回る動物達の姿や今までの事件で関わった人々やレプリロイド達の祈る姿が映っていた。
そしてゼロ達の姿も。
「(こ、これは…?)」
『お主と出会い、そして救われてきた者達じゃよ。争いが起こり、死んでいった者達の数は確かに少なくはないのかもしれない。じゃが、お主の力で救われた者も数多く存在するのじゃ…エックスよ諦めずに立ち上がるのじゃ…シグマを打ち倒し、今を生きる人々とレプリロイドに明るい未来を…!!』
「(ライト博士……はい、俺は…)みんなの未来と笑顔のために戦う!!」
エックスのボディが急速で再構成され、サードアーマーは全ての潜在能力が解放されたことで純白から金色に変わる。
「な、何!?」
「シグマ、世界をお前の思い通りにはさせない。お前がどれだけ強くなろうとだ!!」
黄金の輝きを纏いながら、エックスは鋭い眼光でシグマを見据える。
「馬鹿な…確かに貴様は直撃を受け、バラバラになったはず…だが、貴様が如何なる“力”を手に入れてもわしは勝つ!!わしの野望は誰にも邪魔はさせん!!誰にも砕かせん!!」
シグマはエックスに向けてミサイルを乱射するが、エックスは全く動じない。
「クロスチャージショット!!」
アームパーツの潜在能力の解放により、チャージ無しによるフルチャージショットの連射が可能になったエックスはクロスチャージショットを連続で繰り出してミサイルを全て迎撃する。
「す、凄い!!」
「なっ…何だその力はーーーっ!!認めんぞーーーっ!!」
驚愕するルインとシグマ。
シグマはバスターによる砲撃をエックスに放つが、これもボディパーツの潜在能力の解放で強化されたディフェンスシールドで無効化された。
「ルイン!!」
「うん!!」
エックスがセイバーを構えてルインに叫ぶとエックスの考えを察したルインもZXアーマーに換装し、オーバードライブを発動させるとセイバーを構えた。
「俺はみんなの未来のために戦う。ルインやゼロ達との明日を築くために、俺は…俺達は…勝つ!!!」
潜在能力を解放したサードアーマーのエネルギーを全てセイバーに収束させたエックスはルインと共に斬り掛かると一撃で両断し、エックス達はすぐにこの場を離脱した。
両断されたシグマは爆発を起こし、城とその周囲を吹き飛ばす。
そしてシグマの城から脱出したエックス達は互いに無事であることを確認して安堵の息を吐いた。
「はあ、何とか勝てたね」
「今回のシグマも強敵だった。ライト博士が力を貸してくれなければ負けていたかもしれない。」
潜在能力を全て解放したサードアーマーも役目を終えたことで元の純白に戻っている。
「これでようやく平和が戻るんだね。さーて、戻ったら面倒な手続きをしないとね」
「あ、そうか…すっかり忘れてたけどルインは今まで機能停止していたんだよな…」
再びハンターとして活動するには様々な手続きをしなければならないため、ルインは溜め息を吐いていた。
「さて、帰ろうエックス…みんなが待っているよ」
「…ああ」
ルインの差し出した手を握るエックス。
こうしてまたゼロを含めた3人での活動が出来るのだと胸を弾ませた。
「ククク、残念だったな。お前達はゼロ達の元には戻れん…何故なら貴様らはわしのボディとなるのだからな」
「「っ!!」」
振り返ると突如空間が歪んでウィルスの状態となったシグマが現れた。
「シグマ…」
「まだ生きているか」
「当然だ愚か者共!!流石にあのボディが敗れるなど想定外ではあったが、そもそもこのわしにとってボディなど仮宿のようなもの。シグマウィルスこそが我が本体だ!!故にいくらボディを破壊しようとわしを倒すことなど不可能なのだ!!」
「本当に化け物に成り下がったね。あのシグマ隊長ともあろう人が」
吐き捨てるように言うルイン。
今のシグマを見ているとかつて最強のイレギュラーハンターとして人々から称賛されていたとは到底思えない。
「黙れルイン!!まずは貴様のボディを頂く。その上でエックスのボディを奪い、世界を手に入れてやる!!」
シグマはまず手始めにルインのボディを奪おうと迫る。
「ルイン!!」
「大丈夫だよエックス、ちゃんと研究室であれを手に入れたからさ」
焦ることなくルインは迫り来るシグマをZXセイバーで斬り裂いた。
「ぐあああああ!!?ル、ルイン…貴様、何をした…!?ぶ…物理的な手段で、ウィルスである…い…今のわしにダメージを与えられるはずが…」
シグマのウィルスの体が徐々に薄れ、空間の中に消えていく。
「これはドップラー博士が完全にシグマウィルスに侵される前に作成した対シグマウィルス用の抗体ウィルスだ。これを使えばウィルスの状態のお前にもダメージを与えることが出来る」
毒を以て毒を制すと言う言葉通り、ワクチンに対してはそれなりの対抗力を持っていてもウィルスに対する対抗力は皆無のためにシグマはかなりの早さで消滅していく。
「こ…抗体ウィルスだと!?…我が…ウィルスに侵されていながら…そ…そんな物を…か…完成させていたとは…おのれドップラーめ…!!」
「ドップラー博士はね、最後まであなたに抗ったんだよ。自分を失うギリギリまでね。あなたが抗体ウィルスの存在を知らないのがその証拠」
「き、消える…わしの…プ…ログ…ラム…」
「消えろシグマ、もう二度と蘇るんじゃないぞ」
消滅していくシグマに対して冷淡に言うエックス。
その後、シグマは空間に溶けるように消滅した。
「………ふう、これでようやく終わったね。」
「そうだな、流石のシグマも本体のシグマウィルスを消去されては蘇ることなど出来ないはずだ。」
「うん、さあ!帰ろう!!」
「ああ、みんなの所に」
2人は手を繋いで仲間の元へと向かうのであった。
これからの未来が希望に満ちていることを信じて。
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