| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

徒然草

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

89部分:八十九.猫又 


八十九.猫又 

八十九.猫又
 山奥には猫又という妖怪がいて人を襲って食べるらしいと誰かが言いますと別の人がここでこの辺りでも猫が猫又になってそのうえで人を襲ったらしいと言いました。それを油小路にある行願寺の近くに住む何とか陀仏という連歌を趣味としている僧侶が聞いてしまって一人で道を歩く時は用心しなければと恐れていた矢先のことです。一人で夜道を溝の川に沿って歩いていますと目の前にその噂に聞いた猫又がいました。猫または狙いを定めて僧侶の足下に向かい素早く飛びつきそのうえで首を引き裂こうとしてきました。僧侶は驚いて逃げようとしますが腰が抜けてしまっていて溝の川に落ちてしまいました。それから助けてくれ、猫又が出たと叫びますと近所の人達が灯りを手にして駆けつけてきました。そのうえで灯りを照らしてみますとこの辺りでよく知られた僧侶です。何でそんなみっともない有様になっているのかと助け出してみますと連歌の懸賞で貰った小箱や扇が懐から出てしまっていて川に浮いています。何と課生き延びることができた僧侶はほうほうのていで家に帰ったのでした。
 これは実は僧侶の愛犬が暗がりの中で主の帰りが嬉しくてそれで飛びついただけでした。無闇に恐れていると普段可愛がっている犬でも妖怪に見えてしまうものなのです。


猫又   完


                 2009・8・11
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧