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ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D

作者:ユキアン
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ハイスクールD×D 斉天大聖



とりあえず今一番言いたいことはこの言葉だな。

泣けてくるぜ。

何が悲しくてサイヤ人に産まれなければ、それもよりにもよってカカロットとして産まれなければならないんだよ。ドラゴンボールで速攻で不死になって仙豆も大量に確保して蘇りパワーアップをしないとやってられない。普通の武術も大事だけど、ドラゴンボールの世界で一番重要なのは戦闘力だ。

たまに勘違いしているやつが居るが戦闘力に極端な差があるとダメージが入らない。よく気円斬が反論例としてあげられるが、あれはナッパが油断していることと物理法則で説明ができる。気弾なんかに比べて接触面が小さい分、力が加わりやすい。接触面が増えれば増えるだけ力が拡散するっていうやつだ。紙で指を切ることがあるのに近いな。

それはさておき、本題として、ブロリーのミルクは全部奪って少しでも栄養を確保しておく。どうせ1回でも奪った時点でねちっこく覚えているだろうから、それならば全部奪っても怒りは変わらん。むしろ、これで餓死してくれ。

ブロリーとの奪い合いで戦闘力が若干上がったがそれでも地球送りは免れなかった。まあ戦闘力4じゃなあ。

そして、とうとうポッドに乗せられて惑星ベジータから地球に向かって飛ばされた……はずだったんだけどな。何が起こったのかポッドで休眠している間に平行世界に流されたっぽい。

まず、オレを拾ったのは堕天使のアザゼルだった。何を言ってるのかわからないが、オレを抱き上げているこのちょい悪オヤジがあの堕天使のアザゼルらしい。黒い翼とかたまに出してるからな。一応、堕天使が集まった組織グリゴリのトップでもあるみたいだけど、本質は研究者みたいで神器とかいう人間にだけ宿る特殊能力を持った物を研究している。おかげで基本的にはミッテルトお姉ちゃんとカラワーナお姉ちゃんに面倒を見て貰っている。

見た目ロリっ子とキャリアウーマンみたいな見た目だけど、実年齢はちょっと控えさせてもらう。オレが老衰で死ぬ頃になっても若々しい姿を保ってるとだけ明言しておく。

悲しいことに上の目は下の者にまでは届かないことが多く、赤ん坊の面倒なんて普通の組織ならありえないような仕事でもトップからの直々の指令なんてまずないから結構喜んでいるみたいだ。だけど、カラワーナお姉ちゃんからは愚痴も溢れる。ミッテルトお姉ちゃんは後方勤務で給料も良いし、逆光源氏計画でオレを自分の好みに合うようにしようとか欲望がよく零れている。だからちょっと引いてカラワーナお姉ちゃんの方になついておく。

とりあえず赤ん坊でも頑丈なサイヤ人の特性を利用して舞空術を身につける訓練を行う。舞空術はドラゴンボールでは威力の高い気弾を撃つことよりも簡単な技術だ。でないとフリーザー軍の兵士があんなサイコガンを態々装備することなんてないはずだからな。

まあ、戦闘力=気の大きさだから、ある程度成長するまではお預けかと思っていたんだが、立って歩くよりも先に舞空術を身につけれた。正確に言うと立ち上がるために勢いをつけたらそのまま飛び上がって天井に頭を打ち付けて、痛みで集中が切れて舞空術も解けて床に頭から落ちてたんこぶが出来た。1歳にもなってないのにそれだけで済むってさすが戦闘民族サイヤ人。

あっ、ちなみに名前だけどアザゼルがポッドを弄って翻訳したおかげでカカロットと名付けられた。悟飯じいちゃんに拾われてないし中華圏でもないから悟空にはならなかった。というか、アザゼルすげえな。サイヤ人の言語を翻訳できたのかよ。うん?サイヤ人の言語だったっけ?宇宙共用語とかそっちだったような?まあ、大した違いはないな。ちなみに睡眠教育でオレは普通に読める。まだまともに喋れないから無意味だけどな。

とりあえず、早く立って歩いて走れるようになりたい。サイヤ人としての本能が戦いを求めてるんだよ。ハイハイと舞空術を併用した立ち上がりは出来るようになったんだ。歩くぐらい直ぐにできるようになってやる。だから部屋から抜け出そうとするオレを止めるために尻尾を引っ張らないで。まだ鍛えてないから力が抜けちゃう。

















さすが戦闘民族サイヤ人ボディだ!!

3歳にして普通の人間の大人よりも強いし、ミッテルトお姉ちゃん達が使う光の槍を使うように舞空術で消費している力を操作すれば気弾も使えるようになった。一日5発ぐらいが限界だけど、それも成長と共に増えるはずだ。

そして何より重要なのがこれだろう。気を高めてオーラの様に発する。飛びかかる前とかに力を込めている時に出てるアレ。ゲームとかだと技を使うための気力を貯める時にやるアレ。やってみて分かる。日常時と戦闘時の切り替えはこれでやるんだなってのが。日常シーンでチチやブルマがサイヤ人とハーフサイヤ人にたんこぶを作れるはずだよ。

数値がないと分かりにくいだろうから簡単に説明しよう。今のオレの日常時の戦闘力は15だ。銃を持ったおっさんの3倍。そして模擬戦でそのまま戦ってヒートアップしても20ぐらいが限界だ。しかもじわじわと上がりつつ、良いのをもらうと下がる。そんな戦闘力が10秒程の溜めで一気に50位まで上がる。3倍以上強くなるんだ。

50まで上げればミッテルトお姉ちゃん達と1体1なら負けない。いや、まあ、手加減してもらってるのだとは思うけどな。重症を負わないように。むしろ負わせて治療してくれたほうがサイヤ人としては嬉しいことになるんだけどな。

それはともかく、一応の父親であるアザゼルと会うことが基本的にない。この3年で30回程度しか会っていない。月に1回見かけるかどうかだ。研究職みたいな物だから仕方ないだろうよ。今もポッド型宇宙船を調べてるみたいだからな。

逆によく顔を見るのがバラキエルという堕天使でオレと同い年の娘さんがいるそうだ。まあ、お相手が人間のためにハーフで友達を作ってやれないと愚痴を3歳児に言われても。ミッテルトお姉ちゃん達も対応に困ってるぞ。幹部と下っ端じゃどう対応していいか分からないだろうな。

「バラキエルのおっちゃん、オレなんかよりもその朱乃ちゃんの所に行ってやれよ」

「私もそうしたいところなのだが忙しくてな」

「だからってこまめに会っとかないと忘れられて叔父さん呼ばわりだぞ。アザゼルはそれで結構落ち込んでた」

「それは困る、いや、だが、やはり困る」

「仕事は暇してるコカビエルのおっさんに押し付ければ大丈夫だって。と言うか、仕事をしないおっさんが多い気がするんだけど」

自分勝手な奴らが緩い感じでつながっているのがグリゴリという組織だ。幹部陣はほとんど自分の好き勝手に動いている。むしろ真面目に働いているのは3割程度だったはず。アリかよ。

「ほら、今ある分を終わらせちまえよ。中級あたりで遊んでいる奴らにおっちゃんの確認だけで済む所までやらせろよ。下級で仕事がないやつとかでもいいからさ。ちゃんと部下を育てないと。事務仕事専門の奴が居たほうが良いって」

「だが、納得するか?」

もうこのおバカは。書類の束から特定の2種類のものを引き抜いていく。束の中の3割が下級がやらかした後始末に関する物だ。そして束の中の2割が幹部陣にまで届く必要のないくだらない書類だ。

「仕事が半分近くなくなれば簡単に帰れる。それすらも理解できないなら愚痴は聞かない。こっちもヒマじゃないんだよ」

「まだ3歳なのにか?」

「尻尾を鍛えてるんだ。強く握られると全身の力が抜けて立つことすら出来なくなるから。ミッテルト姉ちゃんによく引っ張られて連れ回されるから逃げるためにも鍛える必要があるんだ」

正直言って尻尾は切り落としたほうが良いかもしれない。出来る限り夜は早めに寝て一度も大猿化していないが、危険だからな。鍛えるふりをしてなんとか引きちぎるか切り落とすかをしないと。
















「早く行け、おっちゃん!!こいつらはオレが相手する!!」

「しかし」

「グズグズするな!!手遅れになるぞ!!」

「っ!?すぐに援軍を送らせる!!それまで死ぬな!!」

バラキエルのおっちゃんが朱乃ちゃんと重傷を負っている朱璃さんを連れて空を飛ぶ。転移妨害の結界を越えて、二人を預けて戻ってくるまで3分と言ったところだろう。それだけなら

「ふん、けがれ」

何か喋ろうとした一番の年寄りの顔面に気弾を放って粉々に吹き飛ばす。空気が凍る中、一番最初に動こうとした男に素早く近づき、首を思い切り蹴る。首がもげてサッカーボールのように飛び、木にぶつかって潰れる。そこでようやく理解したのか、一斉に逃げ出そうとし、連続で放った気弾で爆散していく。それでもオレの気分は晴れない。何もかもを破壊したくなる衝動を抑えられない。ここが朱乃ちゃん達との思い出の場所でなければ気爆破で吹き飛ばしていた。

何より一番問題なのは、オレを覆っているオーラに多少ではあるが緑がかった金色のオーラが混ざっていることだ。この衝動に身を任せたらブロリーのような伝説の超サイヤ人として暴れ続けることになる。普通の超サイヤ人で戦闘力が50倍程度上がると仮定して、今のオレの戦闘力は体感で300ちょい位。それが50倍で1万5000。初期のベジータに近い戦闘力だ。誰も止められないぞ。

くそっ、亀仙流の教えに従って鍛えてるのにサイヤ人には成れても悟空には成れないということか。まあいい、オレはカカロットだ。地球で堕天使に育てられたサイヤ人の下級戦士。それがオレだ。まあ、しっぽだけは引きちぎろう。今すぐに。こいつがサイヤ人の本能に直結してやがるからな。結構痛そうにしてたけど、一体どれぐらいの痛みなのやら。せえのっ!?











「それで、言い訳はあるっスか?」

「何もかもぶっ壊したくなった。しっぽが原因だと思ったから引きちぎった。めちゃくちゃ痛かった」

「めちゃくちゃ痛かったで済む話じゃないッスよ!!出血多量で死ぬ一歩手前だったんスよ!!」

「やったね、パワーアップできた」

実際目が覚めた時点で力が2割ぐらいアップしてる。高効率で回せば

「世界を滅ぼせる、か」

嫌になるぜ。だから、これが正しいかどうかは分からない。それは結果でしか分からないことだ。オレはグリゴリから家出することにした。




















家出してから早十数年、1年前の身長と今の身長を比べると80cmぐらいの差がある。サイヤ人の体って不思議だなぁ。そして、この十数年の間に肩書が酷いことになった。悟空は地球育ちのサイヤ人。オレは地球で堕天使に育てられた斉天大聖にして悪魔の婚約者持ちのサイヤ人だ。

簡単に説明すると家出して旅に出たオレは闘戦勝仏のじっちゃんに拾われ、オレの持っていた悩みを真摯に受けとめ、道を示してくれた。どこかの研究馬鹿なのに組織のトップを張っている書類上は父親になるバカよりも立派な人物だった。だから素直にこの人の全てを引き継ぎたいと思った。

この世界での気の扱い方である仙術、考え方としては元気玉の先の技術と言えるものだったそれらや、簡単な術式、棒術、調薬や心構えなどを兄弟子である美猴と共に学んでいたのだが、あいつは斉天大聖を継ぐつもりはないと戦闘関連以外は適当にやっていた上に、早々とどこかへと旅立っていった。あんな中途半端な強さで何がしたいのか分からない。闘戦勝仏のじっちゃんに拾われた頃のオレよりも弱いのに。

闘戦勝仏のじっちゃんの教えと亀仙流の教えを忠実に守り、ドラゴンボールで悟空の師匠として教えを授けた各師匠たちの言葉を思い出しながら体のキレを鋭くしていく。飽きっぽい上に忘れっぽい悟空とは異なり、元は勤勉で変態な日本人の精神を持つオレにとって一度染み付かせた教えは簡単には離れない。

だからこそだろう。超サイヤ人よりも先に身勝手の極意の方に覚醒した。武天老師様、カリン様、ピッコロ神様、界王様、じっちゃんの、武闘家の教えは最終的に身勝手の極意へと辿り着く物だったのだ。正確に言えば武闘家の目指す先は身勝手の極意へと繋がっているのだ。

暴走の危険がある超サイヤ人よりは身勝手の極意の方が個人的には合っていたし、何より身勝手の極意に覚醒して分かったことは、身勝手の極意自体に戦闘力を向上させるような能力はない。無駄を完全に省くことで戦闘力が上がっているように見えるだけなのだ。それと同時に無駄というのは人生にとって重要なことなのだとも理解させられた。

無駄がないというのはつまらないのだ。正の感情も負の感情も全く生まれない。感情が一番の無駄として省かれているのだ。つまり、悟空の目覚めた身勝手の極意は道半ば、それより先にたどり着いてしまったのだろう。だから戦闘中にしか発動させないことを決めた。あと、解除後に荒れた。荒れる前にじっちゃんに謝ってから1週間ほど荒れに荒れた。

暴飲暴食に分身の術を使った自分との全力スパーリング、意味もなく寝続けたり、認識阻害の結界を張っての全力での舞空術などなど。無駄な行為ばっかり行い、精神をなんとか戻す。驚くことに性欲だけは全く沸かなかった。沸いたら沸いたで問題だったけどな。たぶん、まだ少年期だったからだろう。

落ち着いて帰る途中に女の子が変態にアレな感じに襲われそうになっていたので助けた。そのまま放置しようとしたら帰り方がわからないと言われてしまった。話を聞くと悪魔で、今まで冥界で暮らしていて人間界に来たことがない。人間界にも領地というか、縄張りがあるけど、それがどこかも知らない。仕方なく連れて帰ったらじっちゃんにからかわれた。

まあ、すぐに真面目な顔に戻って彼女、レイヴェルの家、フェニックス家に渡りを付けてくれたので次の日には家族の元に返しに行った。そこでフェニックス家の三男に絡まれたけど、本当に一瞬だけだが身勝手の極意を使い、軽い一撃で沈めておいた。再生できるそうだが、再生が始まらずに苦しそうにしていた。頭は拳で撃ち抜かれたと幻痛を生み出し、身体は無事という状態による結果だ。何より幻痛というのがポイントだ。自傷行為で再生しても、脳はダメージを負ったままだと判断して痛みが消えないのだ。

さすがにまずかったかと思ったが、フェニックス家のご当主様達からは最近天狗になっていたから丁度いいとむしろ喜ばれてしまい、そのままじっちゃんと共に歓待まで受けてしまった。じっちゃんはマナーなんて知らないとばかりに酒をカパカパ空けていく。だけど、貫禄からそれが様になっている。オレは見様見真似でフェニックス家の人たちを真似てみるが、やはり日常的に行っているものとは練度の差が出てくる。

それから、何故か毎週のように冥界の屋敷に招待されて悪魔の上流階級としても恥ずかしくない教育を施されることになった。うん、まあ、別にそれは良い。ただ、年々ダンスの練習で相手を務めてくれるレイヴェルとの身長差が年々開いていくのが結構心に来ていたりする。それは昨年解決したけどな。

あとは、よくライザーに絡まれる。そのたびに返り討ちにしてるけど、少しずつ強くなっていった。亀仙流の5つの教え、よく食べ、よく休み、よく遊び、よく学び、よく動く。それがライザーに合ってたんだろう。今では少年期のピッコロ大魔王ぐらいの強さがあるんじゃないかな?(お遊び状態で簡単に地球全土を更地に出来るような方。ドラゴンボールは初期から結構インフレがひどかったのがよく分かる)

そして昨年、身長が一気に伸びてある程度様になるようになってから正式に斉天大聖の称号を受け継ぎ、レイヴェルとの婚約が決まった。いや、レイヴェルが相手というのに不満があるわけじゃないけど、オレは闘戦勝仏のじっちゃんの全てを受け継ぎたいんだ。斉天大聖が悪魔陣営と繋がっちゃっていいの?上には話をつけてあるとライザーがツンデレ気味に答えてくれた。どうも、結構骨を折ってくれたらしい。

まあ、レイヴェルとは付き合いも長いし、身長が伸びてからは性欲なんかも出てきて、意識してたし、嬉しいといえば嬉しい。うん、だから亀仙流の代名詞とも言えるあの技を教えた。コツは両手を後ろに引いた時に莫大な気を圧縮することにある。これによって気の密度が上がり威力が上がるのだ。

今までもグリゴリにいるミッテとカラワーナお姉ちゃん、バラキエルのおっちゃんには手紙を書いていたが詳細を記してはいなかった。精々、元気にしてるだとか、季節の挨拶とかを一方的に送りつけるだけだったのだが、さすがに斉天大聖を受け継いだことと婚約者が出来たことはちゃんと報告しておかないといけないし、色々と言いたいこともあるだろうからコツコツと賞金首を狩って稼いだ金で購入した一軒家の住所も認めておく。ちなみにレイヴェルと同棲中。















はぁ~、嫌になるっすね。カカロットが家出してから手紙を寄こすまであっちこっち捜索に出て以来、バラキエル様のご息女の模擬戦の相手だったり書類仕事をやってた頃が懐かしいッス。

「ミッテルト、アーシアから神器を取り出すのは明日になるそうだ」

「そうッスか。はぁ~、アーシアをそのまま連れて帰るだけで十分評価されるってのに、わざわざ取り出すなんて面倒をやるなんて。何を考えてるんッスかね?」

「我々はカカロットのおかげで上と繋がりがあるからな。だから、上が望むものが分かっている。その差だろう」

「そんなものッスか。どうするッスかね?拉致って上に報告でも?」

「そうなるとレイナーレ様に目を付けられて捨て駒にされるな」

「はぁ~、アーシア、良い子ちゃんだから殺したくないんッスけどね」

「そうだな。昔ならともかく、カカロットの世話をしてからはな」

「手紙だけを一方的に送ってくるだけッスから、今はどれだけ成長したんだか」

カラワーナとカカロットのことの愚痴を言い合っているとバラキエル様から通信が入る。

「へい、来々軒ッス」

バラキエル様相手だからこんな適当な返事を返せる。カラワーナは未だに硬いままだけど、ウチは楽にやらせてもらってる。

『緊急事態だ!!朱乃が飛び出した!!』

「また喧嘩ッスか?」

カカロットが家出してから情緒不安定な朱乃様はよくプチ家出をする。そのままストリートファイター的なことをやって鍛えたりもしている。たまに負けて犯されそうになるのを必死に助けたりしてるのでウチラも下級の枠に囚われない程度に強くなっている。今回は何が原因なんすかねぇ?

『違う!!カカロットからの手紙に住所が書かれていた』

「ほほぅ、初恋の人の元に飛び出したと。馬に蹴られるのは嫌ッスけど」

『それだけなら良かったんだがな。カカロットのやつ、斉天大聖を受け継いだ上に悪魔の婚約者が出来たそうだ』

「「はい?」」

一瞬では理解が難しい。何度か反芻してようやく飲み込めたが混乱したままバラキエル様に聞き返した。

「斉天大聖って、あの斉天大聖?」

『うむ、闘戦勝仏殿の元で世話になっていたようだ。それから偶然にフェニックス家の令嬢と出会って、そこからの付き合いらしい。それと写真が同封されていてな』

通信の向こうには腕を組んで嬉しそうにしている金髪の女の子と成長したカカロットが映っている写真が見える。う~む、時の流れは早いッスね。いつの間にか重鎮に出世して婚約者までいるなんて。

「私を放って浮気なんかして、嫌よ、捨てないでって所ッスか。刃傷沙汰になっていないことを祈っててくださいよ」

『そうなる前に止めろと言っているのだ』

「無理でしょう?一応、頑張るッスけど、ウチラもちょっと出てるもので」

『何?』

「中級のレイナーレ様の命令で神器所有者を騙して抜き取ろうとしてるのを手伝わされてます」

バラキエル様が苦虫を噛んだような顔をしている。小言でアザゼル様をボコるとか聞こえたけどスルーしておく。

『こちらで連絡を入れておく。神器所有者の保護もな。とにかく朱乃を追ってくれ』

「アラホラサッサー」

というわけでアーシアに迎えが来るからそれまでレイナーレ様に近づかないように指示を出しておく。ドーナシークにもアーシアを守るように伝えておく。最悪、後ろからバッサリ殺れと。責任はバラキエル様がとってくれるからと伝えておいた。

「というわけで急ぐッスよ!!場合によっては撤退するッスけど」

「撤退?なぜだ」

「カカロットが寝技に持ち込んでいたら時間を置いたほうが良いっしょ?」

「寝技?ああ、なるほど。だが、そんなことになるか?」

「なんだかんだでフェニックス家の令嬢を落としてるんすよ?そっち方面も鍛えてたらどうするんッスか」

「ほぅ、そっち方面を仕込もうとしていた本人が言うと説得力があるな」

「逃した魚はデカかったッスね」

本当に惜しいことをした。結構好みな見た目に成長してたのは本当に惜しい。母親ポジションでおちょくるしかないッスね。

送られてきた住所を訪れてみれば、都会とまでは行かずともそこそこ発展している地方のちょっと片田舎で、豪邸とまでは行かないけどそこそこ金持ちと思われる家だった。周りは畑が広がり、裏には山がある。ちょっと調べればそれら全てが私有地っぽい。意外でもないが手堅いチョイスだ。

「くっ、本当に逃した魚はデカかったッス」

「後回しにしろ。それよりも朱乃様はまだ到着してないのか?」

「どう見ても既に到着してるじゃないッスか。外からでも見えるぐらいに不死鳥と八咫烏のオーラが見えるじゃないッスか」

争い合う気配はまだないけど、睨み合いにはなっている。ここは待ちの姿勢ッスね。犠牲は一人で良いッスよ。

「と言うわけで撤退ッスよ。街に戻ってケーキバイキングに立て籠もるッス!!」

「おい、仕事を放棄して良いのか」

「修羅場に突撃したいと?さすがにカカロットに会いに行く道中で襲われてたりしたら戦うッスけど、女同士の修羅場なんて絶対に嫌ッス!!あと、別に命の危機は無いッスからセーフセーフ」

「確かにそうだが」

「ほら、あとは若いのに任せて年寄りは年寄り同士仲良くしましょ」




















睨み合いになること10分、そろそろ介入したほうが良いだろう。

「レイヴェル、すまないがしばらく席を外してもらえるか?」

「カカロット様、ですが」

「後で色々と話すよ。すまない」

「……わかりました。少しだけ出てきます」

「ごめんね。それから近くに知り合いの堕天使の気配が合ったから、金髪と青髪の二人に出会っても争わないでほしい」

「はい。信じてますから」

そう言ってレイヴェルがリビングから出ていく。信じてるって浮気するなでいいのか?まあ、スタイルでは完全に負けてるからな。まあ、朱乃ちゃんは昔のイメージのほうが強いからそういう気持ちにはならない。

「さて、改めてだけど久しぶり、朱乃ちゃん」

「……本当にお久しぶりですね」

朱乃ちゃんが平静を装えたのはそこまでだった。ボロボロと涙をこぼし、オレに抱きついてきた。

「ずっと、ずっと、お礼を言いたかった、謝りたかった!!」

「うん」

「お母様を助けてくれてありがとうって!!」

「うん」

「私の所為で迷惑をかけてごめんなさいって!!」

「うん」

「どうして、どうして何も言わずにどこかに行っちゃったの!!」

う~む、朱乃ちゃんになら話しても良いか。殆ど知っているのはじっちゃんだけである程度知っているのがアザゼルとその周りだけのはずだ。

「……朱乃ちゃんはオレのことをどれだけ知っている?そうだな、例えばオレの実の父、生まれ故郷、そして種族。どこまで知っている?」

「それは」

「オレの実の父はバーダック、生まれは惑星ベジータ、そして種族はサイヤ人。簡単に言えば、オレは宇宙人というわけだ。それもとてつもなく科学の発達している宇宙人だ。成長に伴い刷り込まれていた知識が蘇ってきた。その中に、目覚めさせちゃいけない力についての知識もあった。それが覚醒しそうになったから皆の元から離れた」

あの頃は本気で道に悩んでいた。力を持て余す未来に怯えていた。それを闘戦勝仏のじっちゃんが救ってくれた。だから、今のオレに自分に対する迷いは無い。

「それからはあてもなく彷徨って、闘戦勝仏様に拾っていただいて、心を救っていただいた。オレに出来るお礼は斉天大聖を継ぐのを嫌がる兄弟子に代わり、斉天大聖を継ぐことだと思った。それまでは、他のことに関わるつもりはなかった」

「じゃあ、あの子は何なのよ!!」

「レイヴェル・フェニックス。斉天大聖への修行の途中で出会った。拉致監禁されていて強姦未遂なところを助けた。そこからの付き合いだ。それから兄のライザーは悪友みたいなものだな」

「そんなことを聞いてるんじゃない!!婚約者ってどういうことなのよ!!」

「フェニックス卿に気に入られたのもあるし、闘戦勝仏様が乗り気であったのもある。だが最終的にはお互いに惹かれたから、違うな、受け入れて貰えたからだな」

惹かれてはいた。だが、一緒になることに抵抗があった。オレがサイヤ人の血を引く以上、ここで絶やすべきでは無いのかと。悩んでばかりの人生だなと思い返しながらそれでもはっきりと言葉にする。

「レイヴェルもまた、闘戦勝仏様とは別の意味でオレを救って、抱きしめてくれた。受け入れてくれた。それがとても嬉しかったんだ」

たぶん、かなり良い笑顔で朱乃ちゃんに語ったのだろう。朱乃ちゃんはそれを見て、瞳に憎しみと殺意を宿らせて飛び出していった。やはりこうなったかとため息を付いてから保護者代わりに近くまで来ている二人の元に向かう。最近できたケーキバイキングの列に並んでいる見上げるばかりだった母のような姉のような存在を親猫が子猫にやるように首元を掴んで持ち上げる。

「仕事を放り出してケーキバイキングとは、立派になったものですね、ミッテルトお姉ちゃん、カラワーナお姉ちゃん」

「やっほ~、修羅場は終わったッスか?」

「久しぶりだな。見違えるほどだな」

十数年経っても変わらない二人の姿に種族差を感じる。

「それを止めて朱乃ちゃんを回収するのが仕事でしょうが。朱乃ちゃんにあそこまで思われてるなんて想定外だよ」

「えっ、普通に考えれば分かるっしょ?」

「普通に考えれば分かるだろう?自分も母親も死にかけた。それを救ってくれた幼馴染の男の子。女なら一度は憧れるシチュエーションだな」

「そういうものなのか?普通ならトラウマものだと思うんだが」

そう答えれば二人揃ってため息を付かれた。

「言っとくッスけど、朱乃様は下手な上級堕天使よりは強いッスからね。ウチラじゃ止められないッスから。ほら、婚約者のピンチっすよ」

「あ~、まずいな。レイヴェル、下手な上級悪魔より強いライザーより強いぞ」


















「雷光とでも呼ぶべきでしょうか。まあまあ痛いですが、それだけですね」

帯電もせずにただ流れただけ。雷が疎かになっている証拠です。

「そんな!?」

「そんなに驚くことでしょうか?私はフェニックス、炎と再生を司る悪魔なのですよ。それに守られるだけの存在でもない。カカロット様を一人になど絶対にさせない!!」

今までの手加減していた一撃とは違い、意識を刈り取るだけの威力にまで高めて、一気に踏み込んで叩き込む。

「遠距離ばかりでは懐に潜られた時に対応できませんわよ」

倒れ込む彼女を抱きとめ、再び雷光をその身に受ける。意識を失う直前に出せるだけ出したようですね。

「その根性だけは認めてあげましょう。ですが、独りよがりな貴方をカカロット様の側に置くわけには参りませんわ」

結界をすり抜けるように気配が3つ増える。1つはカカロット様で残りの2つは家の側にまで来ていた気配。

「うわちゃぁ~、朱乃様大丈夫ッスか?」

「ふむ、軽傷とは言えんが致命傷でもないな」

金髪ゴスロリでちょっと変わった喋り方、青髪でキャリアウーマンのような堕天使。カカロット様が語ってくださった親代わりの方たちですね。

「すまないな、レイヴェル。迷惑をかけた」

「構いませんわ。ちょっとしたお遊びみたいなものです。それよりもそちらの方々を紹介していただいても?」

「昔話したと思うが、金髪のほうがミッテルト、青髪の方がカラワーナ。オレの母で姉のような存在だ」

「どうも~、逆光源氏計画を立ててたけど家出されてポシャった方のミッテルトで~す。カカロットのちっちゃい頃のアルバムあるけど幾らで買う?」

「何を言っているんだ、ミッテルト。私はカラワーナだ。カカロットは母で姉のような存在と言ってくれたが、どちらかといえば教師だな。ああ、後は料理は私がやっていたからな。一応、母親の味は私になるのか?」

「どちらのお話も興味深いのですが、まずは、はじめましてレイヴェル・フェニックスと申します。カカロット様の婚約者をさせていただいております」

「これからも朱乃様がちょっかいを掛けるかもしれないッスので先に謝罪しときます」

「この程度なら問題ありませんわ。完全に心が折れるまで、何度でもお付き合いしますわ」

 
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