徒然草
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69部分:六十九.書写の上人
六十九.書写の上人
六十九.書写の上人
播磨の円教寺を開かれた性空上人は毎日法華経を熱心に読まれていました。そのかいあってか目と耳と鼻と舌、それに加えて身体も心も冴えてきました。その上人は旅をしている最中に仮寝の宿に入った時に豆のかすを燃やして豆を煮ている音がぐつぐつと立っていることに関して昔は一心同体の心の友と言ってよかった豆のかすがどうしたことか恨めしく豆であり自分を煮ている。豆のかすは自分達を辛い目に遭わせる奴だという声に聞こえたそうです。一方豆のかすがばちばちと鳴る音は自ら進んでこんなことをする筈がない。焼かれて熱くてどうしようもないのにどうにもできない。それ程までに怒らないでもらいたいといったふうに聞こえたそうです。
こういうようなものが聞こえたというのもやはり毎日法華経を熱心に読んでいて全てが冴えたからでしょうか。その辺りは今一つよくわかりませんがそれでも面白い話ではあります。ただそこにあるだけのものが聞こえるのではなくこうしたものが聞こえるとなるとやはり色々なものもわかってくるかも知れません。豆は豆でしかないとよく考えられますけれどその実は違うとなるとこれまた興味をそそられるものであります。やはりそうそう容易にはわからないことですがわかってみると違うものが見えてくるものなのでしょう。
書写の上人 完
2009・6・24
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