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戦国異伝供書

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第三十二話 青から赤と黒へその十三

「これからもです」
「武芸にですな」
「励み槍一筋で」
 それでというのだ。
「生きていきまする、ただ」
「彦左衛門殿は傾奇者ではありませぬな」
「どうも傾くことは」
 それはとだ、大久保は可児にこのことも話した。
「それはです」
「馴染みがですか」
「ありませぬ」
 そうだというのだ。
「どうにも」
「左様でありませぬな」
「当家は」
 徳川家はというと。
「どうも傾くことには」
「馴染みがありませぬか」
「どうにも」
「ううむ、わしの下らぬ性分が悪いのか」
 家康は大久保の言葉に自責の念を感じて述べた。
「そのせいか」
「いえ、そうではありませぬ」
「当家は殿の下一つになる」
「そうした家ですぞ」
 その徳川家の者達が家康に口々に言った。
「ならばです」
「傾くこともいいやも知れませぬが」
「それでもです」
「殿と共にあります」
「殿が今の様にあられるなら」
「我等もです」
 今の様に質実剛健であるというのだ。
「それが当家なのですから」
「その様なことを言われますな」
「そう言ってくれるか、いやわしはどうも」
 家康は家臣達の言葉を聞いて今度は照れ臭そうに述べた。
「家臣に非常に恵まれておるな」
「いや、その恵まれ様は」
 まさにとだ、平手が笑って述べた。
「徳川殿の人徳です」
「それ故にですか」
「得られたものであり」
 それでというのだ。
「その様に言われることはないですぞ」
「そうなのですか」
「はい」
 まさにと言う返事だった。
「全く」
「徳川殿はです」 
 直江も家康に話した。
「まさに大身であるべき方で」
「そして家臣達も」
「徳川殿に相応しい方々が」
「集ったと言われるか」
「そう思いまする」
「ううむ、それがしの家臣達は三河から代々の者が多く」
 家康は自分と同じ黄色の衣を着ている彼等を観つつ述べた。
「ひたすら忠義を尽くしてくれまするが」
「お歴々がそうされることもです」
「それがしにそれだけのものがある」
「だからですぞ」
「まさにその通り」
 謙信もこう述べた。
「徳川殿なればこそ」
「これだけの者達がついてきてくれている」
「そうなのです」 
 四天王を軸とした十六神将をはじめとしてというのだ。
「まさに。それでなのですが」
「はい、今度は」
「次のお話ですが」 
 織田家の話が終わった、それならばというのだ。
「どの家がしましょうか、やはりここは」
「上杉家がか」
「そうなるでしょうか」
「いや、それはじゃ」
 まさにとだ、信玄が謙信に笑って述べた。 
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