徒然草

五十四．御室に

五十四．御室に
　またしても仁和寺のお話です。この寺の法親王の御所に素晴らしく顔立ちのいい稚児がいました。この稚児と何かして誘って共に遊びたいと思っている僧侶達がいましてまずは芸人かぶれの僧侶を抱き込んで仲間にしました。可愛い弁当箱を頼み汚れないようにして箱にしまい仁和寺の南一キロのところにある三つ並んだ丘の適当な場所に埋めて紅葉を被せてさりげなくしておきました。それから寺に戻り稚児をそそのかして連れ出しました。
　共に遊べてあまりに嬉しかったので心ゆくまで遊びました。先程の苔むしたところに皆で並んで座ってかなり疲れたとか誰か紅葉を燃やして般若湯の熱いのを付けてくれないかとか修行して妙な術が使える僧侶達、試しに祈ってみてくれなどと冗談を言いながらその弁当箱を埋めた木の根に向かってそれから数珠をすりながら物々しく両手で変な形を作ったりしました。幾つか芸を披露して木の葉をどけてみるともぬけの殻でした。場所が違ったのかとそれから山の中を探し回ったのですが結局見つかりませんでした。埋めているところを誰かに見つかって寺に戻った時に咎められたのでしょう。その後僧侶達はその場を取り繕う言葉も失いみっともない口喧嘩等をして挙句の果てに逆上して帰ってしまいました。
　必要以上の小細工の結果はこうなるという教訓のお話です。


御室に　　　完


　　　　　　　　　　　　　　 　　　２００９・６・９