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戦国異伝供書

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第三十二話 青から赤と黒へその三

「それ以上にです、ですから」
「最早ですか」
「これ以上はです」
「望みませんか」
「全く以て」
「羽柴殿は果報者ですな」
 直江も微笑んで述べた。
「やはり」
「そう言って頂けますか」
「はい、栄耀栄華にです」
 そしてそれ以上にというのだ。
「お子。それも二人もですから」
「果報者ですな、それがしは」
「それがしもそう思いまする」
「確かに。母上がいてねねがいて小竹もいて」
 秀長も見てだ、羽柴は笑って話した。
「周りによき方々もおられて」
「そして国持ち大名のうえに官位を得られ」
「子も二人もとなると」
「まさにですな」
「果報者ですな、もう望むものは」
 それはというと。
「ありませぬ」
「満足ですか」
「最早。もう後は子達が育ち」 
 そうなってというのだ。
「よい姫を室に迎えるのを見たいですな」
「そういえば殿からじゃ」
 村井が羽柴に言ってきた。
「お主のご子息の縁談の話が出ておるのう」
「はい、それもです」
「徳川殿とのな」
 村井はここで家康を見て話した、黄色の衣の者達の先頭にいる。
「孫娘殿にあたられるな」
「その方とですな」
「そなたのご子息の話をな」
「殿はお考えですな」
「そうじゃ」
「ははは、羽柴殿と縁戚になるとは嬉しきこと」
 家康も笑って述べてきた。
「そしてこれからも」
「それがしとですか」
「宜しくお願いします」
「それでは」
 羽柴は家康とも話した、そしてだった。
 ここでだ、羽柴はこんなことを言った。
「それがし実は挽き米が好きで」
「兄上は昔からですな」
 秀長がその話に応じた。
「その米がお好きですな」
「うむ、独特の味があってな」
 それでというのだ。
「好きじゃ」
「左様ですな」
「うむ、そして麦飯もな」
 こちらもというのだ。
「好きでのう」
「美食を楽しまれても」
「どういったものが好きかというとな」
「その挽き米と麦飯ですな」
「この二つがな」
「お好きですな」
「そう答えるのう」
 いつもそうしているというのだ。
「あと母上かねねの漬けた漬けものがな」
「よいですな」
「こうしたものがあればな」
 それでというのだ。
「わしは満足じゃ」
「それが兄上の好みですな」
「やはりな、南蛮の料理や酒も口にしてみたが」
 それでもというのだ。
「明のものもな」
「そして本朝の馳走も」
「しかしやはり最もよいのは」
「その二つと漬けものですな」
「そうじゃ、やはり一番口に合う」
 そうだとだ、羽柴は述べた。 
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