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徒然草

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212部分:二百十二.秋の月は


二百十二.秋の月は

二百十二.秋の月は
 秋の月というものはまことに信じられないまでに美しいものであります。月は何時でも同じものが浮かんでいると思って区別をしない人は何を考えているのでしょうか。まことに理解に苦しむ次第であります。
 秋の月の美しさ、それは昔から歌にもあります。見上げているとそれだけで心が澄み切ってくるように感じられるまことにいいものであります。
 そうした月を見て恍惚となれるということはまさに幸せであります。これを幸せと言わずして何と言うのでしょうか。それがわからないことこそ不幸であります。そうした区別をしない人は正直に申し上げまして不幸としか思えません。美しさをわかるということはそれだけで幸福の中にいるのであります。逆に言えばそれがわからないということはそれだけで不幸なことであります。悲しいと言えることであります。
 美を理解する、その嬉しさをわかりたいものですしわかって欲しいことであります。それを秋の月は教えてくれます。秋にあるのはそうした美であるということをです。そうしたことがわからないならばわかって欲しい、切実に思う次第であります。それをこうして書いておきたいとも思います。


秋の月は   完


                2009・12・12
 
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