獣篇Ⅲ
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51 パイレーツ・オブ??
結局土壇場まで晋助が離れてくれず、大広間の座敷の近くまでしがみついている晋助を尻目にさっき作った双子のための晩御飯を持って、広間の襖を開けた。すると晩 御飯が始まる一歩手前の状況が広がっており、全隊士たちがおしゃべりタイムを満喫している、カオスな雰囲気に包まれていた。すると万斉が近くに寄ってくる。
_「晋助、零杏、皆主らをお待ちかねでござるよ。沙羅殿双樹殿を筆頭に。…あとは、約一名、厄介なお客殿が紛れ込んでいるでごさる。」
_「…神威ですか?」
_「そうでござる。さすがは零杏。…どこからか噂を聞き付け、半刻前に鬼兵隊の船にドッキングしてきたでござる。お供も引き連れておって、正直追い返せなかったでござる。…大変申し訳ないでござる。」
_「…ええ。大丈夫ですわ。万が一のことがあれば、追い返しますし、宇宙に放り出すつもりなので、ご心配なく。…で、彼はどこにおられるのですか?」
悪い予感しかしねェ。www
_「沙羅殿と双樹殿のところでござる。まるで自分の息子娘のように可愛がっているでござるよ。」
横目で晋助を確認すると、般若が笑ったような顔をしており、なんだか嫌な予感を隠せない。www
_「…で、オレたちが席につくのを待っている状況だな?」
_「そうでござる。早く来てほしいてござる。」
_「分かりました。…さ、参りましょう。」
そして私たちは、幹部の席に案内された。そこには確かに、神威殿が座っておられる。まるで親戚のおっさんのような可愛がりようなので、また子さんとか武市さんとか、正直引いてるのがありありと見える。だが、神威には手が出せないだろう。なにしろ、あの戦闘能力である。まともにやりあえば、間違いなくこの船が壊れる。なんとかして追い返す方法はないものか。
そんなことを考えていると、ばっちり神威と目があってしまった。
_「あ、シンスケと零杏だ!遅かったネ。待ちくたびれたヨ。」
_「そうか、悪かったな。」
_「いやいや、いいんだヨ。ところでこの双子、シンスケと零杏の子ども?」
_「そうだけど、どうかしたの?」
_「いやぁ、二人ともスッゴク可愛いし、まだこんなに小さいのに眼から敵意を感じるヨ。さすがは二人の子どもダネ。」
ナイス、子どもたち。wwww
_「…そう。それはありがとう。…で、あなたはなぜここに来たの?」
_「なんで?って、風の噂で聞いたんだヨ。鬼兵隊にかわいい双子がいるって。」
_「だれから聞いたの?」
_「え?…風の噂?」
射殺さんばかりの視線を投げ掛ける。
_「そう…誰かから聞いたのね。語尾に?が付いてるもの。騙そうなんて百年早いわ。」
_「わかった、わかったヨ。降参だ。…鬼兵隊の隊士たちが小声で話してるのを聞いたんダヨ。俺、地獄耳だからサ。聞こえちゃったんだよネ?」
_「…そう。聞こえちゃったんなら仕方ないわね?…で?今日の晩御飯のことも聞いたのかしら?」
_「そう。こりゃァいい機会だって、同伴に(あぶと)も連れてきたヨ。」
_「お断りいただこうにも無理だったそうね?…来たいならアポをお取りなさいな。ないなら不法侵入で撃たれても文句は言えないわよ?…まぁ、撃たれたいっていうならいつでも撃ってあげるから言ってくれれば。なんなら今日だっていいわ。」
いやぁ、遠慮しとく。と言ってかわされた。たいした度胸だ。海賊にふさわしい。パイレーツ・オブ・ザ・ハルサメンだわ。wwwパクリがすごい。www
ついでにテーマソングも流しとくか。wwwおまけで。
_「…で、結局…神威は参加するのか?」
と堪りかねて晋助が口を開く。
_「そうダネ、…許可してくれるんなら?」
どうする?と皆に目配せする。…仕方なくOKしてくれたようだ。じゃあ仕方ない。宴が終わり次第宇宙に放り出すことにしよう。
_「…仕方ないわね。ただし、宴が終わり次第帰ってもらうわよ?…なんなら宇宙に放り出すから安心して。」
_「えー、ひどいナ。そりゃあないよ零杏。」
そんなくだらねェ会話をしていると、状況を察知したのか、手の空いていた武市が宴の開幕を宣言する。今回の宴の大義名分は、双子の御披露目である。だがしかし、江戸での大規模なテロの成功を祝うという名目でもある。なんならここに警察がいるので逮捕状さえ書けば捕まえてもよいが、後々色々面倒なことに巻き込まれたくないので、今回は見逃してあげることにしよう。
**************
パーティーが終わり、双子がぐずりだしたので、酔っぱらってる神威を抱えた阿伏兎に免じて、船に送り届けてあげた。あの神威が酔っぱらってるので、相当なものである。いや、先日の仕返しとして総悟の部屋からパクってきた『鬼嫁』を本来の酒と入れ替えて散々飲ましてやったら、思いのほかコロッと逝ってくれたくれたので、少しだけ総悟を見直したのである。
さて、それから1ヶ月後くらいであろうか、そろそろ動き出す、との連絡を受け、真選組の動向を探ることにした。
着替えを済ませて稽古姿になり、持った竹刀を構えて、隊士たちに稽古をつける。姐さん強ェよ、オレ今日で死ぬんじゃね?とか言う声も聞こえてきたが、そこは敢えて無視を決め込むことにした。
_「ハイハイ、そこ。余所見しない。そんなんで私に勝とうだなんて千年早い。ホラ、頑張って。…いいわ、私は見ていてあげるから、お互いで戦ってみなさいな。」
そんな感じで稽古をつけていた時である。道場の縁側で幹部が何やらゴニョゴニョ話しているのを片耳突っ込んで聞いていた。
_「佐々木鉄之助ェ…?」
あー、あの彼ね。
_「あァ。幕臣の内でもエリートばかり輩出している名門、佐々木家のご子息だ。だがどうしたことか、彼だけは職に就かず、悪さばかりしている穀潰らしくてなァ。…手が付けられない、と真選組で預かることになった。」
竹刀を打ち付けあう音。
まともな実戦ではまるで歯が立たなそうなへなちょこ。こりゃダメだ。斬りつけるタイミングや気の紛らわし方、普通なら教えないところまでを教えてあげる特別サービスをありがたく受けとれや。
_「まともな戦いじゃ、こんなんじゃダメね。確実に殺られるわ。…大事なのは、いかに合法的に相手の注意をそらすか、よ?例えばあなたが彼に斬りつけたいとする。仮に敵だとして。彼も同じく刀を持っているとする。相手が斬りかかってきた時、」
斬りかかってきて来てみて?と指示する。
_「相手の切っ先をある程度読んで、流せる場合は流す、間に合わなさそうだったら大人しく受け止める。」
一回やってみなさい、と指示する。
_「一瞬怖じ気づくこともあるでしょう…例えば相手の殺気が強すぎる…とか。でも、それに負けちゃダメ。あと、目に見えて分かりやすい殺気はダメ。怒りを目に見えて悟らせちゃダメよ。殺気を出すなら…地を這うような禍々しい雰囲気とか…オーラを出さなきゃダメ。じゃないと、一発で殺られる。気づきにくい殺気には、相手の行動を怯ませる作用がある。どんなに仏頂面でも、よほどの悪党じゃない限り、これでなんとかなる。」
その間に私は、幹部の話を聞かねばならない。
_「要するに、世間体を気にした親に見捨てられた、落ちこぼれのボンボンでさァ。」
_「近藤さん、真選組は更正施設じゃねェんだぜェ?預けンなら同じ警察でも、見廻組に預けンのが筋だろう?…家柄も才能も揃ったエリート警察って聞いたぜェ?確かあそこの頭も佐々木某とか言わなかったかァ?」
_「そーゆーところ盥回しになって、最終的にここに落ち着いたんでしょう?…いいですよ、オレの一番隊で預りやす。前線に立たせて速攻殉職させてやりまさァ。」
_「いやいやァ、何かあったら長官に何を言われるか…」
_「じゃあ雑用係でもやらせるかァ?」
あんたにはもうすでにいるだろーがっ!ww
斬りかかる真似をしているところに、こんな風に、と言って指南する。ホラホラ、少しでも吸収なさいな。
_「大体は斜めに応じるのが効率がいいわね。…で、実戦はここからが本番よ。防いだ相手の攻撃をここからどう持っていくか。今からそれを教えるわ。見てて。」
斜めに応じたところから、相手の首の後ろに回って気配を隠し、完全に油断したところで竹刀を引っ込めてパッと背中から斬りつける真似をする。
_「相手の隙をつくことも大事なテクニックよ。頭にいれておいてね。…この闘い方のコツは、自分の気配をどこまで隠せるか、だわ。」
_「いやァ、それも角が立つし…お、そういえばトシ、お前雑務が増えたから小姓が欲しいとか言ってなかったっけェ?」
_「えェ…!?」
厄介事フラグが立ったようだ。
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