麗人の戦い
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第二章
しかしだ、それでもというのだ。
「それでもいい、兵を向けてだ」
「マンギート族を破ってですか」
「部族も娘も手に入れよう」
こうすることを決めてだった、彼は属国達にも召集をかけたうえでマンギート族を攻めにかかった。だが。
その大軍を見てもだ、トゥラベカは全く臆してはいなかった。彼女はその大軍が迫ってくる中で族長である父に極めて落ち着いた声で話した。
「父上、私は自ら兵を率いてです」
「そのうえでか」
「はい、サルタンの軍勢を破り」
そのうえでというのだ。
「彼等を退けましょう」
「戦うか」
「はい、ここは」
「よいのか、相手は強いぞ」
セルジューク朝はというのだ。
「しかも属国達からもな」
「兵を出させてですね」
「攻めてきておるが」
「憶することはありません」
「必ず勝つからか」
「すぐに私が強者を選びます」
トゥラベカは強い声で答えた。
「そしてです」
「そのうえでか」
「はい、彼等と共に戦い」
そうしてというのだ。
「見事セルジューク朝を破ってみせましょう」
「そうするか」
「一騎打ちで勝てぬと見ての戦でしょうが」
軍勢と軍勢のだ。
「しかしです」
「それをか」
「戦でも勝てば」
「サルタンも諦めるか」
「それはどうかはわかりませんが」
それでもというのだ。
「ここは戦で、です」
「勝ってか」
「私の、そしてマンギート族の気概と強さを見せましょう」
こう言ってだった、トゥラベカは戦の用意に入った。すぐに四十人の強者が集められて彼等を率いてだった。
大軍を率いてマンギート族の領地に入ったサルタンの本陣を確認した、しかし彼女は今は攻めなかった。
「あの場所でこの時間は攻めない」
「では場所と時をあらためて」
「そうしてですか」
「そうだ、より領地に引き入れて」
マンギート族のそこにというのだ。
「真夜中になれば」
「その時にですね」
「攻めるのですか」
「そうしますか」
「敵はまだ油断していない」
見れば見張りも多い、敵の領地に入ったばかりで警戒しているのだ。
「しかし順調に我等の領内に入ればどうか」
「自然と油断してきますね」
「我等は戦もせずに逃げるだけかと」
「そうなりますね」
「そこで周りに何もなく空気が乾いた日の夜に」
まさにその時にというのだ。
「いいな、攻めるぞ」
「わかりました」
「それではです」
「ここは攻めずにですね」
「下がるのですね」
「我等は勝てる、私の言う通りにすればな」
トゥラベカは整った強い表情で述べた。
「だから安心するのだ」
「わかりました」
「それではです」
「ここは姫様の言われるままです」
「従います」
四十人の強者達が応え他の兵達もだった、彼女の言葉に頷いた。
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