FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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共食い?
ここは青い天馬の保有しているクリスティーナの中。ここには数人の魔導士たちが集まっていた。
「で・・・その時の狭間とやらはどこにあるんだ」
アンナに対して問いかけるジェラール。彼の言葉にはみんな同じ考えらしく、静かに彼女の方を見つめている。
「焦らないで。時の狭間は普段は視認できないようにしているの。穴だって小さなミカンくらいの大きさしかない・・・
だけど、間違って触れたら最後、二度と出ることはできない」
誰からも気付かれずに時の狭間が存在し続けていたのはアンナが隠してきたから・・・そして、それでしかアクノロギアを倒すことはできないと判断した。
「作戦はいたってシンプル!!我々はこれからアクノロギアを誘き出しに行く!
奴が追いかけてきている際に時の狭間を迂回しアクノロギアを待ち構える。
そして追尾してきたアクノロギアは時の狭間に触れ・・・消滅!!メェーン!!」
一夜から作戦の詳細を伝えられた一同は納得している。だが、わずかながらな不安もその表情から伺える。
「そんなにうまく行くのか?」
「やるしかないのよ」
冷静なエルザの問いにアンナも静かに答える。
「で?問題のアクノロギアはどうやって誘き寄せるんだ?」
クリスティーナに乗っているのはあの場にいた全員と言うわけではない。乗れる人数に限りがあるため、何人か選ばれたメンバーが乗船している。そのうちの一人、カミューニが疑問を投げ掛けた。
「アクノロギアには一つの目的意識があるの」
「目的意識?」
「えぇ・・・この世界のすべてのドラゴンを消滅させるというね」
その言葉にウェンディやラクサスといった滅竜魔導士たちの表情が凍りついた。
「それはつまり・・・ラクサスたちを囮にするってことか?」
クリスティーナがアクノロギアを誘き寄せる手っ取り早い手段・・・それは、アクノロギアが敵意を見せている滅竜魔導士たちを引き連れることにより、彼がそれを殲滅するために突進してくることを利用したのだ。
「悪く捉えないで。何もウェンディたちをアクノロギアの目の前で危険を犯させるわけじゃないの。ただ、アクノロギアはみんなの魔力を感知して追ってくるだけ」
彼女の言いたいこともわかる。だが、それ以上に大切な仲間を利用させていいものか、全員が険しい顔をしていた。
「心配すんな、カミュ」
「はい!!私たちは大丈夫ですから!!」
彼らの重苦しい雰囲気に対し、ラクサス、ウェンディがそう答える。その目を見て、全員渋々ながら納得したようで、アンナの方へ視線を向ける。
「話しはここまでよ。まずはアクノロギアを見つけないと・・・!!」
クリスティーナの窓から目的の存在を探していたアンナ。彼女は突然、目を見開き、固まっていた。
「どうしました?アンナさん」
「何かあったのかぁ?」
彼女の異変に気が付いた一夜とカミューニが彼女の視線の先に目を移す。すると、彼らも同様に窓の外を見つめたまま固まった。
「おい、どうした?」
「一体何が・・・」
ジェラールとウェンディが同じ窓から外を見ると、その信じられない光景に、目を疑った。
「バカな・・・」
「こんなことが起こるなんて・・・」
彼らが目にした光景・・・それは誰も予想だにしていないものだった。
辺り一面に飛び散っている赤色の液体・・・その中心にいるのは真っ黒の両翼を粉々に砕かれ、見るも無惨な姿で横たわる最後のドラゴン。その横にいるのは黒髪の青年と水色の髪をした青年。
「アクノロギアを・・・倒したって言うの?」
綿密な計画を練り、それでも確実な策が見えないほどの強敵だったはず・・・だが、目の前にいる青年たちはそれをあっさりと打ち破ったのだった。
「こんな奴等を倒さなければならないのか・・・」
「次元が違いすぎる・・・」
一難去ってまた一難・・・絶望を乗り越えてもまた迫ってくるそれは・・・言葉を失わせるには十分だった。
「傷が消えた?」
トドメを刺したはずのナツの生存に目を見開くゼレフ。中でも一番彼が気になったのは、青年の体に空いたはずの穴が綺麗に塞がっているのだ。
(そういえばENDの書はどこだ!?まさか・・・誰かが書き換えたのか!?)
ゼレフのこの予想は的中していた。ナツの命を握るENDの書を持ち出したルーシィは、彼の体が傷ついた際に消えた文字を復元し、蘇らせたのだ。
(しかし、悪魔の文字を人間が扱えるとは思えない・・・扱えたところでやがてその者は侵食され、闇に落ちる)
この考えもズバリ的中。ルーシィの体は少しずつ悪魔に飲み込まれようとしていた。
「まさに奇蹟の復活といったところだけど、次はないよ。改変者の命が持たない」
「ありがとう、ルーシィ。ハッピー、グレイ」
ゼレフのささやかな忠告に気が付いていないのか、傷だらけのナツはゆっくりと顔を上げた。
「この命は・・・俺だけのものじゃなかった・・・みんなから託されたものなんだ・・・」
何度も落としかけた・・・いや、実際には落としていた命を救われてきた。仲間から助けられたそれは、彼にとっては非常に大きいものだ。
「俺たちは・・・全ては妖精の尻尾の為に!!その想いこそが俺たちの最後の力!!そして最強の力だ!!」
その頃ルーシィたちは・・・
「ルーシィ?」
「体に・・・何かが・・・」
ENDの書に書き足したルーシィ・・・そんな彼女の体から、血管が浮き出してきた。
「あぅ!!」
「しっかりしろ!!」
うずくまったルーシィの体に触れたグレイ。だが、すぐに彼はその手を離した。
「熱ッ!!」
彼女の体はあまりにも熱が籠りすぎていた。突然の異常状態にルーシィからは汗が流れ落ちている。
「熱い・・・何かが体の中に・・・」
「ナツの炎・・・」
「悪魔としての炎・・・か・・・」
悪魔の書に触れたルーシィ・・・彼女の体にはナツの・・・ENDとしての魔力が流れ込んできていた。それゆえに彼女の体は異常をきたしているのだ。
「だけどこれ・・・手掛かりになる・・・この魔力をたどっていけばナツを・・・」
「ナツの中の悪魔を書き換えられるかも・・・けど・・・ルーシィが・・・」
「あたしは大丈夫」
口ではそういうものの、次がどうなるかはとてもわかったものではない。
ヒョオオオオオ
「冷たい」
「一緒にナツを助けるんだ」
「・・・うん」
それでも後には引けないことがわかっていたグレイは、ルーシィの体温を少しでも下げるために冷風を吹かせ始めた。
遡ること数分前・・・
ドゴォン
戦場に響き渡る爆発音。そこに見えるのは一人の男と一頭のドラゴン。
「まだだ!!もっと本気でかかってこい!!」
「言われるまでもない!!」
大きな口から放たれる咆哮。それは瞬く間に天海を飲み込んだが、彼はそれに怯むことなく特効し、強烈な蹴りを額にぶち当てる。
「ぐっ!!」
本来ならばドラゴン同士・・・または彼らを滅する力を持っている者たちしか傷つけることができないはずのその鱗を打ち砕いていく。
「グオオオオ!!」
強烈な一撃を受けたもののさすがの防御力といったところか、天海を振り払うアクノロギア。体格差がありすぎるために容易く払われるが、すぐに体勢を立て直す。
「そうだ・・・それでこそ強者・・・私を楽しませてくれる存在!!」
額から溢れ出る血を気にすることもなく攻撃してくるアクノロギアにさらに胸を高鳴らせる天海。一方のアクノロギアも小さく笑みを浮かべていた。
「すべてのドラゴンを滅するのが我の目的・・・だが、今はうぬを滅するためにこの力を使おう!!」
全身から魔力を溢れ出させていくアクノロギア。彼は全身全霊を込めてブレスを放とうする。
「ハァァァ!!」
全開で放たれたブレス。しかしそれは一瞬のうちに凍らされた。
「なんの真似だ?ティオス」
その原因は現れた水色の髪をした青年。彼は二人の間に立つと小さく笑みを浮かべる。
「もうシリルは目覚めない。もう俺がやるべきことはこの世界から生命を消し去ることだけになった」
その言葉の真意を察した天海とアクノロギアは彼から距離を取ろうとする。だが、大柄なドラゴンはその判断がわずかに遅れた。
スパンッ
一瞬のうちに粉々に切り裂かれたドラゴンの体。天海はわずかな傷で回避することができていたが、アクノロギアはズタズタに落とされた。
「バカな・・・ゴホッ」
血反吐を吐いて地に落ちる暗黒の翼。ピクリとも動かなくなった。
「さすがだよ、天海。やはり俺の最大関門はお前のようだ」
静かな目で敵を見据えるティオス。それを見た天海は、血が流れる腕を軽く払う。
「そうだな・・・やはり俺の心を満たせるのはお前しかいないようだ」
絶対的な力を持つティオス。それに対しさらに心を高揚される天海。仲間同士であるはずの二人がしのぎを削ろうとしていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
ラスボスだったはずのアクノロギア死亡です。
次はティオスvs天海がメインかな?
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