お菓子の家

「それでね」
「許してくれるんやな」
「何かって思ったけれどね」
　人食いと言われてだ。
「わかってくれたらいいよ」
「ほなな」
「それにしても自分等幸せやね」
　亜紀も子供達に声をかけた。
「優しいお祖母さんとお菓子の家があって」
「ああ、お菓子の家だね」
「このお家ね」
「家具もお菓子で」
　見れば全部だ、クッキーやビスケットである。ケーキやチョコレートもある。キャラメルまでその中にある。
「いい感じね」
「ここのお菓子食べないよ」
「私達はね」
　あっさりとだ、二人は亜紀に答えた。
「だって美味しくないから」
「そんなことしないよ」
「美味しくない？」
「だってお祖母ちゃんお料理下手だもん」
「お祖父ちゃんもそう言ってるよ」
　二人は亜紀にあっさりとした調子のまま述べた。
「とにかくお祖母ちゃんのお料理はまずいんだ」
「こればかりは駄目なんだ」
「そう言うけれどね」
　老婆は孫達の指摘にバツの悪い顔になって述べた。
「お祖母ちゃんも真面目に作ってるんだよ」
「けれど本当にまずいから」
「どうしようもないよ」
「レシピもいつも見て作ってるけれどね」
「どんな味やねん」
　麻里佳は三人のやり取りを聞いて興味を持って言った。
「それで」
「あんた達も食べてみるかい？」
「美味しいまずいって実際に食べんとわからんやろ」
　麻里佳はこう老婆に返した。
「そやからな」
「まずはだね」
「食べさせてもらって」
　そうしてというのだ。
「確かめたいけど」
「だったらね」
　老婆も二人の言葉に応えた。
「食べてみてくれるかい」
「お菓子かお婆さんのお料理か」
「どっちかを」
「何ならどっちもね」
　言いつつだ、老婆は早速だった。
　台所に入って何かを作りはじめた、そうしてすぐにシチューを出してくれた。そして二人はお菓子の家からだ。
　チョコレートやクッキーを取った、そのうえでシチューと共に食べてみた。すると二人共顔を顰めさせてだ。
　そのうえでだ、老婆に言った。
「何なん、これ」
「とんでもない味やで」
「めっちゃまずいで」
「これどうにもならんで」
「ほら、言った通りだよね」
　ヘンゼルが二人に言ってきた。
「お祖母ちゃんお料理が下手なんだよ」
「それもかなりなのよ」
　グレーテルも言ってきた。
「お料理の才能だけは壊滅的にないのよ」
「そう言うけれどね」
　老婆は孫達に困った顔で話した。
「私はちゃんとイギリスでお料理のことも学んでね」
「それでだよね」
「作ってるのよね」
「そうだよ、イギリスやカナダのお料理の本も読んで」
「ちょっと待ってや」　
　ここまで聞いてだ、麻里佳は老婆に言った。
「お婆さんのお料理はイギリス仕込みなん」
「そうだよ」
　その通りだとだ、老婆も答えた。